第18話つきつけられた『真実』

盗賊達は走りながら、後ろの様子を“感じて”いた。

「……冒険者どもは歩いて追ってくるようだな。」

「どうします親分?」

「……あのレベルの冒険者に勝つには<ご禁制の薬>しかねえ。」

そう言って盗賊の親分はさらに走り出す。

「……しかし……。」

『ここは~~から離れた●●なんです。』

奴の言葉を思い出そうとすると頭痛が始まる。まるで認識を自分の魂が拒んでいる感覚だ。

「…………俺達は…ここで生きているんだ……。」

だが、ソウゾウの臼は何時から存在した? いつだれが作った?何故十種神宝が10個以上存在する?

相違して親分達は隠れ家にたどり着く。

臼に金貨を入れ素早くコマンドを入力する。

即座に瓶に入った<ご禁制の薬>が作り出され、その瓶を親分は手にする。

「俺が飲んで、奴らを迎撃する。お前達は援護を頼んだぞ。」

「わかりました。」

子分たちがそう言って親分のいう事に従う。

その言葉と共に親分は瓶に入った薬を飲む。その瞬間薬の効果が発揮され、ボスの姿が変化し始める。

肉体は一回り大きくなり、顔は狼のようになり体中が毛むくじゃらになる。

「ふう………これで冒険者が群れでやってきても大丈夫だな……いや。」

親分は少し考えて臼を抱える。

「奴らから金貨を奪い、その金貨でヒーリングポーションを作れば幾らでも戦えるな。」


歩きながら追いかけ続けているたかやが向こう側からやってくる姿を見て一同に警戒を呼びかける。

「……来るぞ!」

ズンという音と共に、衝撃波が6人に襲い掛かり、全員バラバラに吹き飛ばされる。

「ははっははははははは……よく来たな冒険者ども。金貨を全て渡してもらうぞ!」

その言葉と共に、その立ち上がった狼の姿をした存在が突進を開始する。

「ちっ!」

たかやが前に立ってその突進を受け止める。

「……なんだあれ?」

「<ご禁制の薬>で変化した人間だ!! モンスター名が<盗賊の頭>から<人狼>に変わっているぞ!!」

たかやがそう言って一同に警戒を促す。

「……ちっ。敵って訳か。と言うか背負っている臼は何だ?」

「……臼?」

たかやがそう言ってその狼男の背中を見る。

「配置アイテムか? いや?意味なくアイテムを配するはずがない? 調べてみるからその間のフォローを頼む。」

たかやはそう言って、眼鏡を一回バッグに入れて、バッグから『知識神のメガネ』を取り出す。

「……ソウゾウの臼?」

「ほう、このアイテムの事がわかるのか?」

「ああ、この眼鏡のおかげだがな。」

そう言いながらもたかやはその盗賊の頭から目を離さない。

「……オカシナあいてむダロ。ジュウノタカラナノニなんばーじゅうろくトハナ。」

「えっ?口調が変わった? ていうかナンバー16って何の事?」

「変な話じゃないさ。」

「違う……!!」

その言葉に対して、たかやは冷酷に答える。

「イースタル・ウェストランデ・ナインテイル・エッゾ・フォーランドの5か所で10個のアイテムを奪い合ったとしてそれがそろうまでにはどれだけの時間がかかる?

 それまでプレイヤーのモチベーションをどれだけ維持できる?

 それぐらいならどの地域でも先に10個集められるように9×5+1=46個のアイテムを隠しておいて探させておいた方が良いだろ?」

「たーかーやー。ゲーム脳もそれぐらいにしなさ………。」

「嘘だ。」

そう言って盗賊の頭は大きく言葉を紡ぐ。

「この世界が遊戯版の中だっていうのは間違いだ。」

「ならば、十種神宝が16個以上あるという矛盾を解決できる方法があるっていうのかい?」

そのたかやの言葉がとどめとなったのだろうか。

盗賊の親分の様子がおかしくなる。

「………ハハハハハハハハハハハハハハ。」

「なんだ? どうしたんだ??」

「様子が変だぞ??」

そう言った瞬間に再び衝撃波が飛んでくる。

「ちっ……<ご禁制の薬>ってここまでやばい奴だったのかよ!!」

「……いや。人間を魔獣化させる薬は人格はそのままだ。」

「……だが、目の前の奴は恐らく人格が破壊されているぞ!」

「この世界がゲームだと完全に突き付けられたのなら、おそらくかりそめの精神が耐えられないんだろうさ!」

たかやがそう言って、衝撃波を受け止める。

「……この世界がゲームだって何人もの冒険者が大地人に喋ったじゃない!」

「大地人側からの完全な証拠はなかった! コマンドで物を作ろうが、世界の大きさが変だろうが大地人にはそれが当然の事だった。」

たかやはそう言いつつも、攻撃を受け止め続ける。

「…だけどこのアイテムは完全に矛盾しているアイテムなんだ! ヤマトに伝わる十種神宝が16個以上あるっていう証拠は!」

「……そんなのありかよ!」

ウェルカムがそう言って、たかやにツッコミを入れる。

「ククククク、コノチカラデえ……。」

「<タイガー・エコー・フィスト>!!」

ドラゴンナックルがそう言って人狼に拳を突きつける。

「……上に盗賊達が集まっている! 時間が無いわ。一気にけりをつけるわよ!!」

その言葉と共に5人が上を見るそこには盗賊達が弓矢を構え一斉にそこを集中攻撃しようとしていた場面であった。

「なななななっ!!」

えんたー☆ていなーが慌てて立ち止まる。

「一気にけりをつけるぞ!」

たかやがそう言って、支援者召喚の指輪を突き上げると横にひーらーが現れる。

「……キサマハユガンデイル!! うぃハキサマヲ……。」

たかやを指さして、人狼が騒ぐ。

次の瞬間、とんすとん店主の魔法が叩き込まれ、動きが止まる。

「<クロス・スラッシュ>!!」たかやの剣が、

「<オーラセイバー>!!」ドラゴンナックルの拳が、

「<ハンマー・フォージ>!!」ひーらーの槌が人狼を攻撃する。

「…………。」

その様子をえんたー☆ていなーは冷静に見ていた。

「……何時かはこうしなきゃいけないんだろうな。」

その言葉と共に杖を強く握る。

「<オーブ・オブ……。」

灼熱の火球が、杖の先に宿る。

「……ラーヴァ>!!」

その言葉と共に放たれた灼熱の火球が盗賊の親分だったものを焼きつくした。


「臼を確保する!」

その言葉と共に、たかやは『ソウゾウの臼』に飛びつき、何かを確認を行う。

「一回、ここから離れるぞ!!」

「えっ?」

「この臼で<ご禁制の薬>を作れるらしいからな!」

「わかった!」

その言葉と共に全員が全力で後ろに走り出す。

「……しまった!!」

盗賊達は追いかけようとするが、たかや達の方が足が速くたちまちのうちに逃げられてしまう。

「…………これから俺達は何を食って生きればいいんだ?」


アキバの銀行入口

「ぶっはああああああああっ。」

たかやがそう言って、強く息を吐く。

「そういえば臼持ってきちゃったけど良かったの?」

「とりあえず、報告だけして、必要なかったら、後で返すさ。」

「……お前達。今までどこ行っていたんだ?」

近くの冒険者がそう言って倒れこんでいる、たかや達に声をかけてくる。

「……ちょっとクエストを受けてウエノまでね。」

「……そうか、ならとりあえずこれ読んどけや。」

そう言ってその冒険者はビラをたかや達に渡す。

「………『円卓会議設立のお知らせ?』。」

「とりあえず報告に行こうぜ。色々と待っているだろうしさ。」


そして銀行の中。

「………今回のクエストについてですが、報酬は全て払います。」

菫星がそう言って頭を抱える。

「………えっ? まだ何も報告していませんよ??」

「………<クレセントバーガー>と<ご禁制の薬>は何も関係ありませんでした。」

「「「「は???」」」」

一同がツッコミを入れる。

「…………何と恐ろしい方法で作っていたのでしょう……まさかそんな方法で……。」

ツッコミが追い付かない様子で、一同が顔を合わせる。

「そのビラの後ろを見てください。作り方が乗っていますから。」

「????」

その言葉とともにたかやがぴらりとビラをめくる。

「「「なっ、なんだってええええええええええ!!」」」

「たーかーやー。」

「…………………俺の考察って一体……。」

その方法に一同が打ちひしがれる。

「……それと、ちょっと相談なんですけど、このアイテムについてどうするかって問題なんですけど。」

どんとドラゴンナックルが『ソウゾウの臼』を菫星の前に置く。

「……………。」

バタンという音を立てて菫星が倒れた。

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