第7話たかやの行動
「事件が一番最後にあったのはここか。」
そう言いながらたかやは、手で複雑な操作を繰り返す。
「駄目だ。もう所有権を放棄している。犯人はもう逃げてたんだろうな。」
そう言って、たかやは困った顔をする。
「入口が二つ以上あって、誰にも見られないで入れるような場所を選んでるっぽいな。」
することもなく付き合っているえんたー☆ていなーがそう言って、共通点を上げる。
「入って物を持ったらすぐに帰還魔法でアキバの入口へでそのまま物を売って知らん顔ってわけか。」
とんすとん店主がそう言って、ため息をつく。
「……衛兵が行動を変えない限り、このまま事件は続くんだろうな。」
「衛兵の行動パターンはお父さん達が長年組み上げてきたものなんです。そう簡単に変えてほしくないというのが本音です。」
たかやがそう言って弱めを吐く。
「じゃあなんだ? お前はこれだけ事件が起きて、対抗できる奴が何もしなくてもいいって……そう思っているのかよ!!」
ウェルカムがそう言って、たかやに詰め寄る。
「20年。この世界が生まれてから色々と事件がありました。プレイヤータウンの中にモンスターがあらわれても衛兵は動くことはありません。それはトレインを利用した稼ぎを防ぐためですし、例えば残されたこの鏡。」
そう言ってたかやは無造作に置かれていた鏡を手に取る。
「僕がこれを盗んだのかそれとも拾っただけなのかプログラムでの判断は難しい面があります。」
「……普通の鏡1枚じゃあ、判断は難しよね。といっても秘宝級の装備でも判断難しいけど。」
ドラゴンナックルもたかやの意見を指示する。
「でもさ、大災害が起こって何もかもが変わってしまったんだよ。このまま設定通りにしか動けないんだったら大変な事になると思うの。」
「じゃあ、変えろっていうのか? 親父が……いや親父達が一生懸命作ってきたこの世界を!!」
「………たかやっ! もう変わってしまったんだよ! この世界はもう<大災害>で変わってしまったんだよ!」
「それでも、親父は、俺を育てるために作ったんだよ!! それを俺のわがままで変えていいのかよ!」
たかやはそう言って、心情を吐き続ける。
「俺は、この世界に生かされ続けたんだよ。 下らないっていう人もいるけど、俺はこの世界があったからこそ大学まで行けて……就職も決まっていたんだ!」
「………そうなのかよ。ところでさ。その鏡いったい何だ?」
話をそらすためにウェルカムが話題をふる。
「普通の鏡だろ。」
たかやは毒気を抜かれたように答える。
「真実の姿を映し出すイベントアイテム『真実の鏡』とかの可能性は……ないわね。」
「でもあれって、『幻影の迷宮』の入り口の罠を解くのにしか使えなかっただろう? 他に変身している奴の前に出しても変身解けないし 装備としては使えないしな。使い道ねえだろ。」
「解けたら物語が進まないからな……あとづけで変身していたという設定にできなくなるし。」
たかやがぼそっとそう言う。
「でもいちばんきれいにうつるのあの鏡よ。」
ドラゴンナックルがそう言って抗議を上げる。
「……使ったのか。」
「悪い?」
「…………………。」
貴重なアイテムを生活に使うのはどうなんだと思いつつ一同が黙る。
「……そう言えば何で調べてるんだ? 依頼は終わったんだろ?」
「……次クエストが来たらすぐにでも動けるようにしておかないといけない。時間制限クエストだったらどうするんだ。」
ウェルカムの問いにたかやは答える。
「……でもこの鏡……なんで部屋の隅にあったんだろう?」
ドラゴンナックルがそう言って、たかやに声をかける。
「ん?」
「誰かが適当に置いたんじゃねえか?」
「誰が? 何で? 盗まれた商品とは何で別に置いてあったの?」
「……確かに変だな。これだけ盗まれないように別の部屋の隅っこに置いてあったからな……。」
とんすとん店主が疑問に思ってたかやの持っている鏡を受け取る。
よくよく見れば青銅の鏡ながらそこそこきれいな模様がついている。
「……一応鑑定してみよう。盗んだやつが罠として置いている可能性もあるからな。」
たかやはそう言うとバッグから、『知識神のメガネ』を取り出す。鑑定能力を持たせる秘宝級マジックアイテムであり、防御力補正がないので常備している人間は少ない。
「……なんだ……と。」
たかやが鑑定結果に絶句する。
「どうしたんだ?」
「……これは『遠見の鏡』だ。」
たかやの言葉にドラゴンナックル以外のメンバーが首をかしげる。
「とおみのかがみ? 聞いたことないな……。」
「……ええとだな。最近使われたのは……『虹色の定期便』で使われてたっけ? あっ、『天空の塔』布告イベントで出てたやつの方がわかりやすいか?」
「……おちつけ。『遠見の鏡』の攻撃力・守備力補正はどれぐらいだ? どんな効果をもっている?」
「補正は無い。効果は………。」
「遠くの人間と話すことができる……だよね。」
口ごもったたかやにドラゴンナックルが補足を行う。
「……本来ならご禁制の薬とかと同じで手に入らないはずのアイテムなんだ……。」
「手に入らないはずって……」
「超レアアイテム?」
えんたー☆ていなーとウェルカムががぜん興味を持ったようにたかやに詰め寄る。
「……ご禁制の薬ってのはあれか。港町でよくある密輸品を妨害せよに出てくるあのアイテムか。」
とんすとん店主がそう言ってたかやに質問を行う。
「……そうですね。」
「…………まずいことにならんと良いが。」
「売ればどれぐらいになるんだ?」
とんすとん店主の呟きを無視して、ウェルカムがたかやにつめ寄る。
「………わかりません。攻撃力・守備力補正は無し。耐性もなし何ですね。」
「だけどさ、そんなアイテムがあったって話はwikiでも見た事が無いぞ。」
「当たり前です……イベントシーンでしか出てこないアイテムですから。」
たかやはあっさりと説明する。
「「だあああああああっ。」」
その言葉に2人はずしんと倒れこむ。
「イベントシーンだけ? そんなアイテムありかよ………。」
「……問題は何故ここにそんなアイテムがあるのかって事だけどね……。」
ドラゴンナックルがそう言って首をかしげる。
「イベントシーンでしか使えねんだからここで何かイベントがあったのか?」
たかやが『常識』的な答えを言うがドラゴンナックルが首を振る。
「……イベントとかは考えないで。もうゲームの世界じゃないんだから。」
「盗んだやつが置いていった……にしちゃあ回収しないのは変だよな。」
「…………冒険者が犯人ならこのアイテムをどうやって手に入れたのかってことだし。」
「大災害前は入手できないアイテムだしね……。」
「……監視していた?」
ウェルカムがそう言って意見を出す。
「……監視装置として使ってた……人を配置しても買った場所から排除されるならアイテムを使って監視すれば……。」
「つまり、この鏡の向こうの人間は、犯人を見ているかもしれないって事か!!」
えんたー☆ていなーがそう言ってウェルカムの意見を肯定する。
「……犯人を探している人間がいる……でもきっとその人は冒険者じゃない……。大災害以降、この手のアイテムを買えるって発想がないから……。
たかや、少しずつ変わって生きているんだよ。たかやのお父さん達が作ってきた世界が……。」
一同の間に沈黙が広がる。そんな空気を打破するためにウェルカムが疑問を言う。
「でもさ、何で置いてあった鏡を盗まなかったんだ?」
「気付かなかったんじゃねえか? 今の今までイベントだけでしか出てきてねえアイテムの知識を誰が知ってるんだ?」
「こいつ。」
「………………。」
再び、沈黙が訪れた。
「なあ、姉御……俺たちを探してるやつがいるってさ。」
「盗んでる間誰も私らの顔を見ていないのにどうやって探すんだい?」
「そりゃそうだ。」
その言葉に一同が笑う。
「『ハーメルン』の奴らも上手くいってるみたいだし、外郭団体の私達も頑張らないとね……『ウルフ・アンド・フォクス』の『フェンリル』がね!」
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