第41話/縞とアルパカ
第41話
資材倉庫に移動した俺は、熾兎から得た激ヤバ情報を報告すると。
「分かりました。事実かどうか調べておきますね」
とだけトピアは言い、半ば一方的に「本日も特訓、よろしくお願いします」とお辞儀をしてきた。
「おう……。よ、よろしくお願いします」
俺もお辞儀をする。
ただしそれは感謝としての意でもあった。
なぜなら今の俺は『お前を殺す』と宣言していた大和先生とひと悶着あったせいで、心を乱してしまっている状態だったからだ。
(……あぁ、とても落ち着く。トピアが傍にいてくれると全然違う)
さすがは俺が惚れたトピアだった。怯えた相手の手を引くようなこの強引っぽさが、かえって俺を安心させられると考え、気遣ってくれたのだろう。
俺にはそのように思えてならなかった。
「では特訓の内容ですが―――」
「って、無視しないでよぅ!?」
「……え?」
まるで気づかなかった。いや気づきようもなかった。トピアの制服の胸ポケットからアリスが飛び出してきたのだ。しかも格好はフリフリなメイド服。トピアが何かのお人形から拝借して着せたのだろう。これがなかなか様になっていた。
「アリス? いつの間に入っていたのですか?」
「とぼけないでよ、トピア絶対気づいてたでしょ! さっきからモゾモゾ動いてたもん!」
「と言われましても……。なぜ勝手についてきたのですか?」
「だって暇なんだもん! ゲームも全ルート攻略しちゃったしさあ!」
オエー! 想像するだけで吐き気がしてきた!
というか他にもルートがあったのか! おぞましい!
「ちゃんとCG回収もしたんですか?」
「え? た、たぶん」
「たぶん? 一〇〇%になったのか確認してないんですか?」
「ひぅ!?」
そしてトピア先輩、まさかのまさかでガチBLゲーマーだった!?
目が怖い! アリスが怯えている!
「……いいでしょう。この話題は主人公である憑々谷君には少々酷でしょうし」
「待て待て!? お前もあのゲームの主人公が俺だって知ってたのか!?」
「はい。今更な質問ですね」
「だ、だったらヘンに思わなかったのかよ!?」
しかしトピアは至って平然と、
「それを言ったら君がこの世界の主人公であることの方がよっぽど変ですよ」
……などと、俺が嫌でも納得しなければならない回答をしてきた(泣)。
「く、くそう……。俺はBLゲーの主人公でもあったなんて……うぐッ!?」
ヤバい思考停止しろ俺!
このままじゃ毒されて死んでしまう!
「あははー♪ ツっきんおもしろーい!」
「わ、笑い事じゃないんだよ……」
本当にBLは大の苦手なのだ。
今後も著者に悪用されると思うと……がはッ!
「なぜ何もない所で倒れるのですか? 早く起きてください憑々谷君」
ぜ、前言撤回!
この美少女、肝心なところで全然気遣ってくれない!
「…………よ、よし。いい、ぞ……?」
俺は死にかけの精神状態で立ち上がる。BLショックの影響は甚大だった。
だがそんな俺を気にも留めず、トピアは頭上で滞空するアリスに指を差した。
「ではせっかくですし、アリスを使って異能力の発現に挑戦してみてください」
「え?」
「アリスで想像してください。今回は何をしても構いませんから」
「え!? どゆこと!?」
うん、アリスも嫌な予感がしたんだろうな。だが遅い!
出でよ、パンチラの風ェ!
「ちょっ、何!? この風!?」
奇襲成功だった。下から吹き付ける風にアリスがフリルのスカートを抑えている。
一瞬だけ縞パンが見えたが、それはそれとして―――。
「憑々谷君……。これはわざとですか……?」
俺は目を右往左往させずにはいられない。というのもスカートが捲れ上がったのはアリスだけでなく……彼女の下に立っているトピアもだったからだ。
彼女の履いていた下着がアルパカ柄だったのは補足するまでもない(眼福)。
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