黒い魔法少女 03
「…………ここは……秘密基地……?」
クウがそう呟いて、薄っすらと目を開く。
「――隊長っ! クウちゃんが起きましたよ!」
ヒナタがそう叫ぶと、俺が返事をするより先にツキコがクウへ飛びついた。
「クウちゃあーんっ!」
上半身を起こして周囲を見渡すクウに抱きつきながら、ツキコは申し訳無さそうにクウの胸元に額を押し付けている。
「クウちゃんごめんね、私が先にやられちゃったから! ごめんねっ、ごめんねっ!」
「ちょっと、ツキコ……」
ヒナタも心配そうにクウの表情を覗き込んだ。
「ねぇ、クウちゃん。痛い所ない?」
「うん、ありがとうヒナタ。少し体は痛むけど平気よ。私ってば隊長の背中で寝ちゃってたんだね……」
俺はしゃがみこみ、毛布の上に座っているクウの顔色を窺った。
「クウ、本当に大丈夫か? 鳩野郎は魔法少女が医者に掛かる必要は無いって言ってたけど、体が痛いなら病院まで連れて行くぜ?」
「ううん、本当に大丈夫。半漁人にやられた傷だって、もう無くなってるみたいだし……」
クウは自分の体をチェックしながらそう答えた。
「ねぇねぇ、クウちゃん。隊長がクウちゃん庇ったのって本当ー?」
「……え? ええ、本当よ」
ツキコの質問に、クウは先程の記憶を思い出すようにして口元を緩め、少しだけ優しげに目を細めた。
「それじゃあ、クウちゃんは隊長のバリアに追い出されちゃうまでの間、ずっと隊長とくっ付いてたの?」
「え? ……あの……それはっ……」
クウは言葉に詰まる。
「隊長ってばその事聞いたらね、顔を真っ赤にして何も教えてくれないんだよー。ひょっとしてクウちゃん、隊長から何かされたのー?」
「隊長! セクハラは良くないと思います!」
「ちょっと待てお前等! 俺は何もしてないからな! 俺はっ!」
俺がそう言うと、クウは顔を伏せてしまった。
「あれれー? クウちゃん熱でもあるのー?」
クウの顔を覗き込むツキコを引き剥がして、俺はなんとか話をすり替えた。
「その話はもういいからっ。それよりだな、俺達を助けてくれた黒い魔法少女が、去り際に変な事を言っていたぞ」
「変なことー? どういうの?」
「もしお前達が魔法少女を続ける気なら、明日また松林の所まで来いってさ」
俺がそう伝えると、三人は不思議そうに顔を見合わせている。
「鳩野郎はもうあの子に関わるなって言っていた。だが俺はもう一度、あの子にきちんとお礼を言いたいと思う」
「それは……私もよ」
クウが悔しさを滲ませるように、口を結んでそう言った。
「私もー。みんなを助けてくれてありがとうって言いたいー」
「はいっ。私もその子見てみたいです」
どうやらツキコとヒナタも賛成のようだ。
「ふむ、全員賛成みたいだな。鳩野郎がどうして共通の敵と戦うあの子の事を警戒するのかは分からないが、同じ言葉の通じる人間だ。きっと仲良く出来ると思う」
三人は俺の言葉に頷く。
「それじゃ、今日はもう帰ろう。明日また、昼過ぎに集合だ」
「「「はーい」」」
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