師匠 02

 ここは秘密基地の中。

 手洗いを終えてそれぞれの椅子に座った幼馴染達に向けて、俺は先ほどあった出来事について説明する。包み隠さず、ありのままを話したのだが、幼馴染達は誰一人として俺のミスを責めることは無かった。


 話を聞き終わった幼馴染達の表情は様々だ。ツキコは嬉しそうに笑顔を浮かべているし、ヒナタは俺の表情をじっと窺っている。クウに関しては何やら考え事をしているようだった。


「なるほどね、そんなことがあったの……。それで隊長、これから私達はどうすればいいの?」


 クウの質問に俺は答える。


「木漏れ日一家が明日またここへ来る事になっている。だからユニットメンバー同士、互いに顔合わせをしておきたい」


「明日? 何時くらいに?」


「時間はまだ決めていない。お前達がよければこれから調整するつもりだ」


「ふぅん。それで、相手の人達は本当に信用できそうなの?」


「……ああ。信頼に足る根拠は極めて特殊な事情があって説明できないが、少なくともサスライとの深い交流があることは間違い無いようだ」


「へぇ。隊長がそこまで言うなら、私はいいけど……」


 そう言ってクウが他の二人に視線を向けると。


「「うんうん」」


 ツキコとヒナタも賛同するように、首を縦に振っていた。


「よし、それじゃあ決まりだな。今から連絡を入れてみるぜ」


 俺は変身端末を操作し、木漏れ日一家宛にメッセージを送信する。

 それから待つこと一分弱、早くも返信が届いた。



件名 顔合わせについて


内容 早々の連絡ありがとう。

   君達が今夏休みの最中なら、午前10時頃に伺ってもいいかな?



 カザクラの返信を読んで、俺は幼馴染3人に確認する。


「お前ら、明日の午前10時で大丈夫か?」


「いいよー」


 ツキコが机に両手で頬杖をつきながら返事をして、ヒナタは両手で大きく○をつくり、クウは人差し指と親指で○をつくってOKサインを出した。


 俺は了承の旨をカザクラに伝達する。

 メッセージの送信から間もなく、カザクラから返信が届いた。



件名 顔合わせについて


内容 了解。明日の10時に伺うよ。

   出来れば全員とユニット同士全員と顔合わせしておきたい。

   他のメンバーを連れてきても大丈夫かい?



 俺は一瞬相手の人数が増える事に躊躇したが、いまさらビビっていては話が進まない。誰の庇護も受けないままだと、それこそ悪い魔法少女に狙われるリスクが増すばかりなのだ。


 俺が再び了承の旨を送信すると、また直ぐに返信が届いた。



件名 顔合わせについて


内容 ありがとう。それではまた明日。よろしく頼むよ。



「ふぅ」


 どうやらスケジュール調整は終わったらしい。

 しかしまぁ、顔合わせとか本当にアイドルをプロデュースしているみたいだな。


「ねぇねぇ、どうなったー?」


「明日午前10時、相手の人数は……四人だな」


「四人? 私達とおんなじだねー。隊長隊長、私さ、明日ティーセット持ってきていい? 初めてのお客さんだから歓迎したいのー」


「紅茶か。ツキコの家にある奴だと豪華そうだな」


「えへへー。お菓子も沢山あるよー。外国のビスケットみたいなのー」


「ふむ、お菓子か……そうだな。よし、今からツキコの家に行って客を迎えるための準備でもするか。客用に椅子も用意しないといけないからな」


「えっ、お家くるの? やったー! 連絡しとくねー」


 ツキコは嬉しそうに携帯で自宅に連絡を入れている。

 こうして俺達は秘密基地を片付けたり、必要な道具を運び入れたりして一日を過ごしたのだった。

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