第21話 迫る決戦の時
観光を終えた一日が帰還すると、他のメンバー共々土産話に花を咲かせる。
「で、こうなってさ~、あとこんな事も分かったよ」
命達が盛り上がっているとそこにヒリズが通りかかり
「おっ、皆揃ってるか、楽しんできたみたいだね」
と砕けた声で話しかける。
「はい!!一日ちゃんはどうだった?」
話を振られた一日は
「一寸残念なことがあったかな・・・」
と墓地の一件を語る。それを聞いたヒリズは
「それ、本当なのか!!」
と顔色を変える。
「ええ、本当です」
「そうか・・・まだ残っていたのか・・・」
その一日の返答に何か含みを持った発言をするヒリズ
「残っていたって・・・どういう事です?」
木の葉の問いかけに
「其をやった組織はこの世界を制圧したときに潰したんだけど、潰しきれていなかったって事だよ」
と、どこか悔しいとも苦いとも取れる顔で言うヒリズ、明らかに平時では無かった。
「潰した・・・」
「ああ、あの組織だけは僕には到底許せる存在じゃなかった。僕の両親を拐かし、そして・・・」
「・・・その先は・・・」
その心境を察した一日、無理を押して話を進めようとするヒリズを制止すると
「察してくれるのか?有り難う」
そう言ってヒリズは一日に感謝の表情を浮かべる。
一瞬の間の後
「ですが、その亡霊はまだ残っていると思います。そして、恐らく次のリベリオン・フォートレス戦でも出てくるでしょう」
と続ける一日。
「それは一体どういう事だ?」
思わず一日に迫るヒリズに
「その対象をスキャンしたときに分かったのですが、その技術は先程のレジスタンスが保有していた武器の技術と同様の物が確認できました。恐らく、次の戦いはレジスタンスにとって総力戦となる以上、それらも総動員してくると思います」
迫られた状態でも冷静に話す一日。
「つまり、あのゾンビも実践に投入されると?」
「いえ、ゾンビではないでしょう。武器か、或いは完成した兵士か・・・そのどちらかとの交戦は不可避と考えられます」
「上等だよ。だったら今度こそ終わらせてやる!!」
ヒリズの言葉には何時になく敵意が満ちていた。
「私もお力添えを惜しみませんよ」
と一日がその心境を察すると命や言葉、シオン、木の葉も続けてヒリズに協力を申し出る。
「ありがとう・・・何か、複雑な気持ちだな。今まで抱いたことがない訳じゃない・・・けどずっと昔に忘れてしまったような・・・そんな気持ちだ・・・」
一日達の言葉にヒリズは表情を緩め、どこか穏やかな雰囲気を出してその場を去っていく。
そしてヒリズが去った後
「一日ちゃん、今のって・・・」
と命が呟き、
「ええ、その可能性が高くなってきたわね、だとしたら・・・・」
一日もそれに続ける。内心の疑問に迫りつつあるのだろうか?
「リベリオン・フォートレス戦は何時決行するつもりなの?」
「後腐れが無いように全ての決着をつけるのであれば、明後日くらいになるわね」
待ちきれないという風のシオンに具体的な時期を告げる一日。
「明後日?それはまた随分と時間をかけるね」
「ええ、待たせて焦らせるのが得意な奴等が相手だからね」
更にそう続ける。そう言うシオンの発言はまるで遠足を待つ小学生の様であった。
その頃、リベリオン・フォートレスでは各地のレジスタンスが集結しつつある。だがその内部に仲間が集まってきたという結束感は無く、どこか余所余所しく、そして重い空気が漂っていた。
「あの敗戦以降、空気がやっぱり重いですね・・・」
「それだけじゃありません。空気が重い原因は・・・」
その空気の悪さの原因が敗戦だけでは無い事を知る希有とロザリーの言葉も又重い物であった。
「そうですよね・・・情報の漏洩箇所は未だ不明、レジスタンスを一か所に集めて防御を固めると同時に漏洩元を割り出さなければならないのですから」
「そうです。ですがレジスタンスの各員もこれまでにない奇襲で疲弊しています。何しろ数か所を同時に襲撃されたのですから。これで反抗戦力の大半が失われてしまいました」
厳しい現実を目の当たりにし、一層重さを増す空気、それに飲み込まれると沈んでしまいそうになる。
「突然の作戦変更、やはり彼女が関与しているのでしょうか?」
望が口にした疑問に
「それはほぼ間違いないと思います。襲撃を受けた基地のメンバーから聞いたのですが、子供が指揮を執っている部隊も居たとの事ですから。そしてその子供の外見の特徴は命君に酷似しているとの事です。
生花さんには申し訳ありませんが写真で確認してもらいました。これはもう・・・」
「命がこの世界に・・・」
チュアリは返答し、その写真を見せる。その写真を見た生花も又、悲しげな表情を浮かべるのであった。だがその時
「一寸待て、その子がこの世界に来てるって事はつまり・・・」
とテレサが焦った声を出す。
「あの時、交戦した子供達の内、少なくとも何人かはこの世界に来ている。そう考えるのが妥当な線だと思います」
その声に続く回答を繋げる聖。
「彼等は元いた世界を捨てたの!?」
「いえ、恐らく我々がこの世界に移動した事を確認し、元の世界は暫く放置しておいても問題無いと判断したのでしょう。
あの世界は今、只でさえ韓国による日本への宣戦布告の影響で混乱しています、そしてあの混乱を収めるには韓国を責める他ありませんから」と言う。
困惑する望に聖は考えうる最も可能性の高い回答をする。
「つまり、韓国が槍玉に挙げられている間に・・・と言う訳ですか・・・」
「ええ、そしてこちらの世界の制圧も完全な物にするつもりなのでしょう」
「故にここ、リベリオン・フォートレスは何としても死守する必要があります。ここを制圧されてしまったらもうこの世界に反抗するだけの戦力を生み出す事は出来ません。構成員もほぼここに集まっています。人員的にもここが最後の砦です」
現状の危険性とここの重要性を改めて認識する聖達。
「明後日には世界中のレジスタンスがここに集結します。そうなれば・・・」
「奴等も迂闊に手出しは出来ない・・・か」
言い聞かせる様に話すロザリーと聖、だがその内心には強い不安が渦巻いていた。
「ですが、あの少女が絡んでいるのであれば何らかの奇策を討ってくる可能性もあります。その際は・・・」
「正面から打ち破る・・・しかないでしょうね。こちらに奇策を用意する余裕はありませんから。ですが正面からの衝突であれば、質量で押せます!!」
希有の疑問にも尚言い聞かせる様な発言をするロザリー、それは背水の陣の裏返しでもあった。
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