第15話 リラックスした白熊
マネージャー、
双眼鏡を覗き込み、遠くから観察するショクシュ子と詡王ではあったが、ショクシュ子の顔色は思わしくない。
裴多との対戦から三日が経ち、驚異的な回復力により傷も癒えたのだが、今回の対戦相手の姿形がショクシュ子のヤル気を著しく削いでいた。
「あれ、どう見ても着ぐるみよね?」
「はい!かなり黄ばんではいますが、元々は白熊の着ぐるみだった様です。熊掌拳では師範クラスになると素手で熊を倒し、その皮を剥いで着飾るのが道場の習わしだそうです!」
確かに詡王の説明通り、道場内には佇まいからかなりの使い手と分かる門下生達が、誇らしげに熊の毛皮を被って道場内にて闊歩していた。
「まあ、熊の毛皮を着てるのは納得出来るけどさ、何であの子は着ぐるみなのよ?」
ショクシュ子の言う通り、一人だけ白熊の着ぐるみを着て、寝っ転がりなら昼寝をしている姿は、道場内ではかなり浮いている。
白鶴道場での裴多と比べても、同じ三大天才格闘少女でありながら、えらい違いであった。
「熊 李羅さんが白熊の着ぐるみを着てるのは、実際に白熊を倒した事で許された事なんですよ」
「はあ?白熊を倒したの⁉︎」
「そうです、それも素手で!その実績を買われて三大天才格闘少女の座に居座ってるわけですから、見た目に騙されてはなりませんよ!破壊力のみなら象形拳最強と謳われてますからね!」
着ぐるみを着ているだけでは無く、マトモに訓練をしている様子も無く、ただ寝っ転がりリラックスしている姿を見ては、俄かには信じられなかった。
そんなショクシュ子に、マネージャーとしての詡王がその博識を披露。
「…ショクシュ子ちゃん、何で彼女は白熊の着ぐるみを着てるか分かりますか?」
「え?そりゃ…可愛いから?」
「それもあるかも知れませんが、一番の理由はあの黄ばみが関係してるんです!」
確かに熊 李羅の着ぐるみは白熊よりも、黄色い熊と言った方が正しいと思われる程に黄ばみが凄い。
そんな黄ばんだ熊との対戦に必要なのがコレだと、詡王は荷物から一着の服と小瓶を取り出した。
「これってもしかして…」
「これがあれば熊 李羅さんと、邪魔が入らずに対戦出来る筈です!」
そして自信満々に言うマネージャー詡王の作戦が、ショクシュ子に語られるのであった。
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