非常に面白かったです。
未読の方に紹介するなら、屈強な兵士達が見知らぬ惑星に連れ込まれる映画「プレデターズ」の様な舞台設定。盗作と言うつもりは皆無です。あくまで類似例の紹介。
アクションは無いです。軽いタッチで書かれているけど、テーマは重厚。
"島"と言う密室で過ごす3人。そこで繰り広げられる人間ドラマは温かく、哲学的で示唆に富み、読者の背中を押す勇気と励ましを与えてくれます。
作者はファンタジーに分類してますが、童話に分類しても構わないと思う内容。実際には10万字の長編だから童話に成り得ないのだけれど、小学生高学年の児童文庫として推薦したくなる作品です。勿論、大人の鑑賞にも耐えられます。私自身、初老ですから。
やや変わった設定のファンタジー小説である。
外界から閉ざされた謎の空間に閉じ込められてしまう人物たち。
その島にある、唯一のルール。
はじかれたコインの指し示す運命。
ヒロインを筆頭に、この場所に流れ着いた人物たちは、重い過去から心を休める場所を探していた。
そして、待ち受けていたのは、優しくも厳しい自然との闘い。
孤島の中で生きていくためには、動物を殺すことも、植物の性質を見極めることも必要となる。
何から何まで、金さえあれば手に入ってしまう現代の生活とは、まるで違う世界で、主人公たちは戸惑いながらも、ひたすら前に進んでいく。
生きる意味。食べることの意味。生活することの意味。
そして、人との繋がりの意味。
それらを、あらためて突き付けられ、真正面から向き合っていく登場人物たち。
やがて、彼らは最後の選択をみずから選び取っていく。
彼らの休息期間は、そして終わりを告げる。
瑞々しい自然の描写に、まずは感嘆する。
そして、意表を突く驚きのラストシーン。
一気読みして下さい。
生きている意味。生かされている意味。
安らぎ。つながり。生きる意思。様々なことを、考えさせられる優れた小説です。