恐怖の五期生編⑪

A店に本部長がやってきた。


たくさんのお供を連れてやってきた。


A店の従業員一同、ずらりと横に並ぶ。

病院の院長の回診のように、本部長が歩いてくる。

さっそく僕は本部長の前に飛び出す。


「お久しぶりです!五期生の原田です。」


「・・・・・???」


なんだ?この反応?

「何で?お前みたいな奴が、俺に話しかけてくる?」

みたいなオーラ全開の顔をした。


一瞬だけ、足を止めたが、すぐ無視をして歩き出した。


なんだ?これは!!

忘れてる!忘れられてる!

僕たちをこんな戦場に送り込んで、生き残ろうが死のうが、そんなものに元から興味なかったのか!


トイレから、あの男が飛び出してくる。

五期生の生き残り、一般公募の男だ。


「本部長!お久しぶりです!」


「・・・・・?」


また、一瞬だけ止まり、すぐ無視をして歩き出す。

僕らを迎えに来たんじゃない!

A店に来たのは、ただの視察。

自分が送り込んだ五期生は、とっくの昔に本部長の中で、全員死んだ。

記憶の中で。


本部長はA店の店長と笑顔で会話すると、すぐもう車に乗り込もうとする。

酷い!あんまりだ!


僕ら二人は、決して評価されたかったわけじゃない。

店長候補になりたかったわけじゃない。

それでも生き残れば、何かあるんじゃないかと思っていた。

この半年、ドル箱にまみれながら、もう1人は便器にまみれながら、生きて来たんだ!


職を失いたくないから!

必死にやってきたんだ!


評価なんていらない!

興味をもて!!


そんな人間を、自分が戦場に送り込んだ兵隊を、


忘れるんじゃない!!!


そんな本部長の背中を見ながら、一般公募の男が、目に涙を一杯ためて、

精一杯の声を振り絞って叫んだ。


「・・・本部長!・・・サービスとは、なんですか!?」


その声に、本部長の足が、ピタリと止まる・・・・

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