恐怖の五期生編⑥

恐怖の五期生編⑥


本部長が語る五期生の真実。

「うちの社長が始めた研修。まずその一期生に、各店舗から腐るほどたくさんの人間が立候補した。

そりゃそうだ。1ヶ月間、ホール業務から離れられるうえに、給料まで出て、研修終了後には店長や幹部社員になれる可能性があるのだから。クソみたいな人材でも喜んで立候補してきた。」


本部長は首を横にふる。


「私は反対したんだ。こんな研修。

研修終了後に一期生から店長になった人間は、ある者は遅刻して退社。ある者は不正をして解雇。ある者は従業員の女子に手をつけた者までいる。所詮、苦労もせずに地位を手に入れた者は、過酷な業務に耐えきれず、自己都合で会社を破滅させる。」


僕らは黙って聞いていた。


「そして研修内容を厳しくした。するとどうだ。三期生に至っては耐えきれず全員退社。四期生からは怖がって立候補する者もいなくなった。現場も研修に人を出さなくなった。1ヶ月もの間現場から人が減り、そして研修で潰されて退社されてはかなわんからな。」


少しずつ真相が見えてきた。


「それでも社長はこの研修の存続を望んだ。だから各店舗に人を出すよう強要した。そこで集められたのが、君たちだ!つまり、君たちは次の条件を満たしているのだ!


①1ヶ月間店から抜けられても、支障のない人間。


②社長の前に出しても、挨拶や所作に問題のない人間。


③万が一研修で潰されて退社になってもかまわない人間。


それが君たちだ!」


僕らは絶句した。


「なんだ?その顔は?自分たちが未来の店長候補にでも、選ばれたと思っていたのか?」


すると、一般公募の2人が手を上げた。

「僕ら2人はなぜ一般から選ばれたのですか?」


本部長が答える。

「各店舗から5人しか集まらなかったからだ。社長が最低でも7人は欲しいと望んだ。だから、君ら2人を急遽募集して参加させた。

ただの人数合わせ、人員の水増しにすぎん。」


僕ら全員は奈落の底に叩き落とされた。


「つまり、君らは全員中途半端なのだよ!幹部社員としての期待もない。潰れてもかまわない。だけど、社長の前には出せる所作がある。


ただそれだけの7人の集まりだ!」


終わってる!

それがこの五期生の真実か?

本当に終わってる!


「君らに残された道は2つ!この地獄の研修で潰れて、潔く退社するか?


この地獄をくぐり抜け、誰も期待していなかった店長や幹部社員に、本当に登りつめるか!


そのどちらかだ!!」


僕ら五期生は、全員その場に崩れ落ちた。

とんでもない所に追いやられてしまったのだ・・・・

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