四角い悪魔編⑨

その日も朝から働き、閉店までイベントの作り物をしていた。

そこに仮眠室で散々休憩していた、店長とマネージャーがあくびをしながらやって来た。

「なにしとんねん?」

そう言われた。その言葉にもの凄く嫌悪感を抱いた。


部下が家にも帰らず必死で残って作業している内容くらい、把握してから休憩しろ!

過去に一度もねぎらいの言葉すら、かけてもらった事もなかった。


「・・・色々です。」


僕はぶっきら棒に答えた。その返答の仕方に気分を害した店長がキレた。

「その色々が何か聞いとんねや!何やその態度!」

続けてマネージャーも怒る。

「上司に対してなんや!」


僕の態度がそんなに気に入らなかったのか。もはや自分がどんな態度なのかもすらわからなかった。

だからもう、どうでもよかった。


「なぜ?僕だけ、こんな苦しまないといけないんですか?」


「しんどいんか!みんな、昔そうやって乗り越えてきたんじゃ!」


「乗り越えてきた?

なに、勝手に終わりにしてるんですか?

お店は営業し続けてるのに?

客も増えてないのに?

なに、自分たちはもう、悟りを開いたみたいになってるんですか?

それで、次は、お前の番やと?

お前の修業の場やと?

乗り越えてもない人達に、


なんの指導も、ご鞭撻も、してほしくないですわ!!」


思いのままに叫んだ。


マネージャーが何か言っていたが、聞きたくもなかった。


そのまま僕は店を飛び出した。

真冬の夜だった・・・


どれだけ走ったかわからない。

また上司にキレてしまった。

前の店の班長にキレたように。

その時、そのまま仕事を丸投げして辞めた。

あの時の事、俺はまた繰り返してしまうのか?


そのまま走って

走って。


走って。


気が付くと妻のもとにいた。


「どないしたん?」


妻が心配そうに聞いてきた。

その妻の両手には、産まれたばかりの赤ちゃん。


そう、息子が産まれていた。

産まれてすぐだった。


僕はそこに、たどり着くべきして、たどり着いた・・・

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