**ティーブレイク**
序盤戦 ティーブレイク
長い話なので、序盤戦が終わったところで一度ティーブレイクを挟みます。
これまで、主人公であるようちゃんと、ようちゃんを取り巻く登場人物群を文中で紹介してまいりました。先に進む前に、整理しておきましょう。
主人公のようちゃんこと何野羊は、無名の理系大学を卒業して就職したばかりの二十二歳。二人姉妹の妹で、姉の
隙あらば縁談を押し付けようとする母を嫌って、実家を出て一人暮らし中。大学で指導教官のクソハゲこと
しかし暇過ぎることを訴えようとしたようちゃんに、社長が『これから猛烈に忙しくなる』と予告。予告と連動するようにテレルームに盗聴器が仕掛けられ、それを撤去した社長がクレーム用回線を独立させると同時に鍵をオートロックに替えて、テレルームを要塞化しました。クレーム用回線に飛び込む非正規の通話を記録、解析し、それを自力でこなしてくれという謎の指令を出した社長は、何も詳しい説明をしないまま立ち去ってしまいます。
あっけに取られていたようちゃんでしたが、『出て行け』という脅迫紛いの電話が立て続けに着弾したことで、事態がざわざわと動き始めます。さらに、事務の白田さんと御影真佐美というバイトの女の子が何やら企んでいる様子。それは、白田さんが仕掛けたエロ音声によるトラップに化けましたが、ようちゃんは辛うじて被弾を回避し、反撃に出るために関係者の解析を始めます。
自宅でネット検索をかけてみたところ、関係者の誰にも目立った前歴がなくて地味だということが分かり、頭を抱えてしまうようちゃん。でも検索中、ひょんなことから社員の白田美和、黒坂豊親が、かつて御影不動産という準大手不動産会社に勤めていたことが判明しました。バイトの御影真佐美も含め、『御影』というキーワードで関係者が繋がったのです。
そして御影不動産が満を持して建設した御影テラス鈴庫町というマンション群へのアプローチ道路が、社長の父である
◇ ◇ ◇
登場人物がものすごく多い話ではありません。社員五人とバイトの御影嬢が直の関係者で、あとはようちゃんの姉と友人二人がサポーターとして顔を出しただけです。
なんですが。社員が、社長を筆頭に謎ばかりですね。性格も魂胆も、ようちゃんにはまだよく分かりません。ようちゃん自身が、テレルームという
半ば監禁状態になっていること。通常は絶対に耐えられない拷問みたいなものですが、アカハラで受けた心の傷のリハビリ期間で、ぼけっとしていたかったようちゃんにとっては、せいぜい暇だーっていうくらいで済んでたわけですね。
そしてようちゃんには、昼休みやお茶休憩の時に白田さんと話をするくらいしか情報の出入りがなかったんです。さらに、自力でこなせという社長は何も情報をくれない。ようちゃんは、戦闘に必要な情報が全然足りないというどでかいハンデを背負ったまま、戦場に赴くことになります。
ええ、そうなんです。まだ本格的な戦闘はないんですよ。前哨戦だけ。そしてこのあと、いきなり激戦になります。シビアな攻防でようちゃんが得るもの、失うもの。それは何か。動きの激しい前半の戦闘を、じっくりお楽しみください。
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