勇者と魔王。善きものを求める物語

勇者と魔王。
昨今では澄乃ままれ氏の作品を始めによく用いられるモチーフだが、この作品ではどちらもヤクザな連中として登場する。
エーテル施術による超人と化した魔王のヤクザ稼業と、それを排除する勇者として。
そこに栄光はないーー少なくとも社会的にはどちらもクズであるからだ。

だが、だからと言ってただのクズでいいなんて、一体誰が思うだろう?
真摯に登場人物たちは、社会からドロップアウトしているような場所であっても、よくあろうと生きている。
こうした生きていく様相を、作者様の高い筆力と構成力、剣劇アクションを始めとしたドラマを散りばめて描き出した小説だと私は勝手ながら思っている。

そしてすでに物語は完結し、きっちりと完成している。
剣撃を始めとしたアクション、ヒロインたちの可憐さと素晴らしさは上げればキリがないが、やはりここは”勇者”という言葉に親しんだひとにこそ、読んでほしい。
傑作である。

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勇者のクズ