まず弁明すると、私はゲームが好きではありません。
ソーシャルゲームなんて金と時間の無駄だと思ってますし、ゲームセンターなんてお金を浪費するだけの場所とすら思っています。
そんな私でも、本作には引き込まれました。
こんなゲームショップを開きたい!
元ゲームショップ店長でもある作者の熱い思いが、冒頭からヒシヒシと伝わって来るのです。
それを代弁するのがヒロインである『美織』の存在です。
狡猾で、信長なみに破天荒な彼女の行動の裏には、祖父から譲り受けた『ぱらいそ』を楽園にしたいという切実な願いがあります。そして朴訥ながらもゲームを愛する主人公『司』の存在が、一種の緩衝材となって美織の強烈さを和らげてくれるのです。
この2人のタッグがこれからどんな楽園を作っていくのが、楽しみでなりません。
巻き込まれ型男の娘主人公、魅力的な店員の女の子達、ライバル店の存在等、読み手を飽きさせないキャラクター。
キャラの特長、表情の変化、ゲームの展開。非常に分かりやすく場の空気や対戦内容が伝わる。単純に文章力が高い。
そして何より、自分が特に評価したいのは『経営戦術』で間違いないだろう。
店長代理を勤める美織の突拍子の無い、ただ自分が楽しみたいだけではないかと思われてしまう、無茶苦茶な指示や言動、行動が全て計算された戦術となる。
その瞬間の驚きは、感動というよりも圧倒。
可愛らしい女の子の経営力にライバル店も頭を抱えるのは痛快。
頭の切れるライバル店のマネージャー、黛との対決が楽しみでならない。
元ゲームショップの店長という肩書きを生かす小話や発想等、ゲーム好きにはたまらない話が盛りだくさん。
飽きる事無く、サクサク読めた。
見ないと損をする作品。
最後に個人的な話で申し訳ないが、作者とは良い酒が飲めそうだ。
物語の主人公はゲームが大好きです。そんな彼はひょんな事から知人のゲームショップで働くことになるわけですが、しょっぱなから山あり谷あり、好きな事を仕事にするのは大変な事だと彼は身をもって知ります。あるいは主人公が働くゲームショップの店員の仲間たちにも災いの火の粉は降りかかります。
それでも彼らは決してあきらめません。
なぜなら、ゲームが好きだからです。とてもシンプルで子供じみた理由です。
でも子供の頃、親に怒られながら、ベッドの中でひっそりと隠れながら、深夜に眠い眼をこすりながらゲームにかじりついていた記憶を持つ人は少なからずいるのではないでしょうか。今にして思えば、どうしてあそこまで熱中していたのだろうと首を傾げる方もいるはずです。
この作品を読んでいると、不思議とそんな懐かしさを覚えます。
それはこの物語の彼らが、あの頃ゲームに熱を上げていた自分たちでもあるからかもしれません。
個人経営のゲームショップ「ぱらいそ」。
経営危機に面していたぱらいそに、創業者の孫娘が店長代理として就任した。
ぱらいその復活のために繰り出す彼女の戦略が面白い。
他店への殴り込み、人を引き寄せる仕掛け、そして魅力ある店員のスカウト。
それもそのはず、作者はゲームショップの店長経験者という。
個人経営ならではの戦略には、どれもこれも作者の経験が活かされている(に違いない)。
一つ心配な点を挙げるとすれば、中古販売も手掛けるオーソドックスなゲームショップということ。
そんなゲームショップに未来はあるのか?(個人的にはダウンロード販売との闘いも読んでみたい!)
今後の展開に期待!
(追記3/29)
おお、こんな真相だったとは!?
美織JK編も楽しみにしています!
ゲームファンの少年による、大好きなゲームと個性豊かな美少女達に囲まれての、ゲームショップバイト戦記。
作者の経営者経験と得意分野をふんだんに詰め込んだと思われる、テレビゲームのように楽しいラブコメディです。
お仕事小説としての一面を期待して読み始め、実際その未知のエリアを味わう面白さもあったのですが、むしろ驚かされたのはラブコメディとしての完成度の高さでした。ハーレムラブコメで最も基本にして一番大事な『ヒロイン達の魅力』の描写が、賑やかで実に心地良いのです(美織は些かアクが強い感もありますが……)
ぱんつに一家言ある描写も素晴らしい。
実際のゲームショップ経営は中々に厳しいものと伺っておりますが、この作品ではどのように描かれるのか。
期待せずにはいられませんね。
経営危機に陥ったゲームショップ復活のために戦う少年ーーというか男の娘と少女達の物語。斬新な経営戦略だけでなく、息もつかせぬアクションゲームの攻防や素人によるライブの奮闘など、ゲームショップを舞台にしたバリエーションに富んだ展開が繰り広げられます。作中時折挟まれる小ネタにはくすりときました。この梅鉄の難易度は理不尽なんだろうな……。
作中のマスターの言葉に、ふと昔通っていたゲームショップを思い出しました。ネットが発達し、わざわざ外に出ずとも、ゲームを購入できる時代。この物語は消えゆくゲームショップの悲哀だけではなく、時代を乗り越え進化していこうとするゲームショップの姿、そしてゲームを愛し続けるゲームファンの情熱が描き出されています。
この小説にはいくつもの魅力的な要素が散りばめられています。
ギャグ、お色気、手に汗握る攻防、一発逆転のカタルシスなどなど。
ただ、自分がこの小説の最も魅力的な部分を一言で表すなら、それは「ノスタルジー」です。
といっても、過去には多く見られたゲームショップのことを指すのではありません。
誰にでもあった、居心地が良く、いつまでもいたかった場所。大人になるにつれ、行かなくなり、気づいた時には失われていた場所。それを、この小説は思いださせてくれます。
社会人の皆さんならば、読み終わった後、きっと「また明日から頑張ろう」と思うはず。
……全く関係ないんですが、妹要素は無いのですか?
ゲームを心から愛する少年が高校入学を機にかねてからの夢だったゲームショップ店員のバイトを始めるものの、それは出だしから困難の連続で……
あくまで現実を舞台にしながらも、それぞれが強烈で魅力的な個性を持ち合わせたデフォルメキャラと、息もつかせぬ予想外の事件の数々が、異世界ファンタジーをも凌駕する華々しさを生み出している本作品。
日常モノのほのぼの感、コメディの爆笑ユーモア、バトル物の熱さ、経営モノの知的戦略、ゲーオタ物の隠しパロ、人情ドラマ物の感動が圧倒的な高次元で融合したこの小説は、どの瞬間を切り取っても読者を満足させる娯楽性に満ち溢れた、「天国(ぱらいそ)」を体現したような極上のエンターテイメントです!
エンターテイメントとは快楽を与えるもの。作者様は読者に快楽を与える術を熟知なさっているように感じられます。
必ずしも上手くいってばかりでなく、時には到底克服困難に思える壁にぶち当たり、打ちのめされ、もがき、最後に辿り着いた思いもよらない奇策は、サブカルチャーを取り巻く時流を捉えた目から鱗のものばかり。逆境の展開においては閉塞感を紛らす別角度の多様な快楽が物語を彩り、マンネリを感じることなく高揚感に包まれたまま全編を読み切ることができました。
一体どれだけ丹念に構想を練り込めばここまで見事な作品が出来上がるのか見当もつきません。
本作に写実主義的なリアリティがあるというわけではありません。現実離れした展開であっても、そこに向けてしっかりと仕込みが施されているからこそ、ご都合主義に感じることなく底抜けに痛快な逆襲サクセスストーリーとして心の底から楽しめるのだと思います。
もちろん、元ゲームショップ店長ならではのディテールや裏話、業界の動向分析も非常に示唆に富んでおり、抗い難い時代の流れに向けられた眼差しは寂寥感をもって作品に深みを与えています。
非情な現実に対する、作品世界からのせめてもの反撃。そこに込められたものは作者様の夢想する、まさに天国なのかもしれまん。
世の厳しさを知る作者様により、それを打ち破るための膨大な熱量が注入されたこの小説は、読む者にとびきりの快楽を与えてくれる素晴らしい娯楽作品です!
どんな逆境も切り返してしまう逆転劇の連続がクセになる痛快さ!
読んでる方は痛快だけど、それに巻き込まれる主人公たちが気の毒で、それもあいまってついつい応援しながら読み進めてしまいます。つかさちゃん…(*´Д`*)
そして、要所要所で挟まれるゲーム対決のアツさ。
元ネタがありながらも基本的にはオリジナルのゲームのルールを、無理なく説明しながらそこに逆転の伏線を仕込んでいく構成には舌を巻きます。
理不尽だけど悪魔的に頭の切れる店長が本当に魅力的。周りを固めるスタッフたちも活き活きとしていて、気持ちよく楽しめる痛快な物語です。
どことなく「ミスター味っ子」あたりを思い出しながら読みました。
続きも読ませていただきます。