第52話

 8:08 オーコックス・インダストリー正面玄関


 「いつでもぉ。来いって感じねぇ」

 ミズキはそう言って肩をぐるぐる回した。予測している敵機到着時間は5分後、今回は完全にマシンフレーム戦が想定されている為、全身黒の対ショック防弾アーマーを着ている。

 「ミズキ、新型のアーマーはどう?」

 「ん~いい感じよん。でも薄いしぃ全身タイツに見えるからぁ上から制服着ちゃった」

 そう言いながら誰も見てないのをいいことにスカートを思いっきり捲る。

 「はぁ……別にいいけども」

 「だって恥ずかしぃじゃぁん。しかもぉミョルニル用ブレザーは着るんだしぃ、全身タイツにブレザーだけってのはぁおかしいってぇ」

 「あなたいつもブレザーは光学迷彩で見えないようにしてるでしょ」

 「完全に戦闘中はさすがにぃそっちにエネルギー使いたくないというかぁ?」

 「まぁいいわ。やりやすいようにやって……。ん?」

 「どうかしたぁ?」

 しばしの間、なんとなく事を察したミズキは傍らに置いていたミョルニルに手をかける。

 「輸送機よりマシンフレーム降下っ!!」

 リンの声が響く。

 「早くなぁい!?真上から入ってくるんじゃなかったのぉ!?」

 「滑空しながらこっちに降りてくるようね、数は4機!3機はアルトロニクスのヅェイⅡね。もう1機は……あのイヴ製薬を襲った機体だわっ」

 「やっぱり来たかぁ……。ガルム!タカシ!準備して!あたしが合図したら撃ち落として!滑り込んでくるわよぉ」

 ミズキもそう言いながらミョルニルを構え走り出す。そして、その横の地面が2つに割れ、そこから2機のマシンフレームがり上がってくる。全身灰色、頭部は長いひさしがあって鋭利なトサカが付いており、起動と同時に大きな一つ目を光らせる。その体躯は依然戦ったマシンフレームよりも細身のように見えて、肩や脚部は不格好なほど大きい。

 「新作発表前の試作機グロスハートなるべく壊さないでね」

 リンが本当に心配そうな声で言う。

 「了解」

 「おっけーっすよ!」

 落ち着いたいつもの調子のガルム、やけにテンションの高いタカシの返事が返ってくる、ちなみにタカシはこのグロスハートのテストパイロットでもある。

 今日の空は晴天、はるか向こうに入道雲があり、それ以外は青一色、そんななか黒い星のように敵輸送機と4機のマシンフレーム。

 「計算したら位置おかしっ……くないぃ!?」

 ミズキはミョルニルを下段に構え、ジェットを噴射させる。一気に走る速度は加速し、ミズキも跳ねるように移動していく。すでに会社の敷地を離れ正面にある片側三車線の道路を2歩で横断してしまった。

 「ヤマトぉ!そこから移動して!こいつら、隔離棟に向かってるぅ!」

 「了解っ」

 ヤマトは構えを解きビルを降りはじめる。

 「カタギリ、マイルはミズキの応援に行って!人避けは完了してるから、グロスハートも道路に入って大丈夫、なるべく物は壊さないように。あと、今後敵の機種不明機をG-1、以下ヅェイⅡをG-2、G-3、G-4と呼称する!G-1はこちらの性能を上回っている可能性がある!十分気を付けて!」

 リンが早口で通達する。恐らくG-1のデータ解析をしながらの通信なのだろう。

 「なるべく物は壊さないようにってきついっすわ~」

 タカシが軽く笑いながらグロスハートを操縦し、会社の敷地から出て道路に立つ。持っていたマシンガンを構えて狙いを定める。

 敵機は滑り込むようにESS上空に侵入、ビルなどをスレスレで滑空しながらオーコックス・インダストリーから数㎞離れた隔離棟を目指している。計算だとあと数十秒。減速を開始したようで噴射光が見えた。

 「マシンフレームぅ!攻撃開始ぃ!」

 ミズキの声が響く。

 2機のグロスハートがマシンガンを連射。ドラム缶のような空薬莢が排出されて、地面に叩きつけられる。

 大量に吐き散らされた弾は、赤、青、白のトリコロールカラーのG-1に向かっていく。

 G-1は滑空していたにもかかわらず、ひらりと弾丸の雨を避けてそのまま隔離棟へ向かう。後ろをついて行っていたヅェイⅡの1機が脚部に被弾。バランスを崩し道路上に転げ落ちた。残り2機はそのままG-1について行く。

 「ひゅー……。アニメかよ……」

 「タカシ、早く追いかけろ」

 「おっけ~。よっと、そっとっ!」

 ガルムがたしなめるとタカシのグロスハートは上手い具合に建物を避けて隔離棟へ向かった。

 「さて……、じゃあこっちはこいつか……」

 ガルムのグロスハートの目の前にはヅェイⅡ……G-3が起き上がってライフルを構えようとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

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