第41話
アモルを部屋に送り届けた後は、特に何事もなくその日が終わった。翌日、ソラノの護衛につくため、ソラノの部屋に行く。今日はヤマトも回復しているだろうしミズキたちがアモルにつくはずだ。
ソラノの部屋の扉をノックする。少し遅いと感じさせる間を置いて、ソラノがドアを少し開けた。
「おはよう。ソラノ」
「……おはよう」
いつも朝でも凛としているソラノとしてはもっさりとした挨拶だ。隙間から頭だけを出している。少し奥を覗いてみると、少し大きめのシャツからいきなり足が伸びていた。もしや
「い、今まで寝てたの?珍しいな」
「あぁ、最近いろいろとやっていて夜更かしをしてしまっていてな」
「大丈夫かよ……体に良くないぞ?クマできてるし」
「……。誰のためだと思っている」
ソラノは小さくぼそりと呟いた。
「え?なに?」
「なんでもない!ちょっと待っていてくれ」
そう言い残して、ソラノは勢いよく扉を閉めた。
「待たせたな」
数分後、ソラノはブラウスと淡い色のジーンズを穿いて部屋から出てきた。顔を洗ったり髪を整えたりしてきたのだろう。いつものソラノになっていた。
「で?今日はどうするの?」
「ラボについて来てくれ」
そう言われ、二人はラボへと向かった。
ラボの中はいろいろな端末が部屋のそこかしこに配置されていて、部屋の真ん中には作業台があり、そこには鉄の塊のようなものが置かれていた。
「座ってくれ」
ソラノは椅子を指さし、そのまま部屋の奥に行ってしまった。
座って待っている間、少し遠くにある端末の画面を見てみるとそこには自分が戦っている時の姿が映し出されていた。おそらくこの前のマシンフレーム戦の時のだろう。その隣の画面には翔子と一緒に戦ったアイギスの時のものだ。なんだか自分のことが研究されているのが色濃く見えてしまってむず痒い。そういえばアイギスはここでしばらく尋問なんかをされていたらしいが、思いのほか口が堅かったので警察へ引き渡したらしい。
しばらくすると、ソラノが小さな機械を持ってこちらに戻ってきた。
「これを電源に繋いでくれ」
自分が電源に繋がったまま触るとエネルギーを吸収するからであろう、機械をリョウに渡してきた。言われるままそれを電源に繋げる。
「そこのボタンを押すんだ」
指示されたとおりにボタンを押すと、機械から青白い光が発せられた。
「その光を靴下を脱いで、足の先から太もも辺りまで当ててくれ」
「お、おう」
ソラノの言いなりに慎重に光を当てていく。
「こう?」
様子をじっと見ているソラノは難しい顔をしている。あれ?だめ?
「もっと全体的に当ててくれ」
「全体的に……。うおっ」
ぐるぐると足に光を当てていると電源のコードが足に絡みついてしまった。
「きみは……はぁ」
絡まったコードを解こうと悪戦苦闘していると、ソラノはそう言ってしゃがみ込み、リョウの腕を掴んだ。
「最初からこうすればよかったな…」
ソラノはそう言いながらリョウの腕を使い、うまく全体的に光を当てていく。
「……」
やはり疲れているのか、ソラノは何も言わず腕を動かしている。ふと目を
「動かないでくれ」
また元の位置にぐいっと引っ張られて胸元がこんにちわ。言わずもがなスタイル抜群なソラノさん、谷間が視界にあると絶対見てしまいます!
「ま、まだなの?」
「まだ片方も終わっていないだろう。我慢できないのか」
そう言うと穿いていたハーフパンツの裾をグイと捲って太ももまで光を当てる。
「いや、違うんだけど……」
「ん?」
ソラノは怪訝な目でリョウの目を見た。そしてその視線の先が自分の胸にあるのに気が付くと、さっと片手で開いた胸元を隠した。
「言ってくれたらいいだろう…」
ちょっと赤面している。かわいい。
「言えるかよ!」
「……続けるぞ」
片手でボタンを閉じて作業を再開。残念というかなんというか…。
「これ何してるの?ところで」
「正確な足の寸法を測っている」
「え、足に何するの?」
ソラノは片方の足の計測は済んだのか,、もう片方の計測に移るようで、リョウに機械を持ちなおさせた。妙に手が触れるので変な感じだ。
「きみは、足で行動をすることが多いからな、あと怪我も」
「……そうだね…」
あれ?怒ってるのかしら?とりあえずそのまま聞いてみる。
「だから、足を補強する装備を作っている。この前ギプスをしている時に思いついた。ちょうどミズキも面白いものを教えてくれたしな……」
「真国の面白いものだとちょっと怖いけど……」
いつも人が困るのを面白がっているところを見ると信用に欠けるが、仕事に関しては人一倍真面目だ。そのあたりは信用はしている。
「よし、もういいぞ、このボタンを押してコードを抜いてくれ」
ソラノはリョウの腕から手を放し、端末をツンツンとタッチペンで操作し始める。
とりあえず、言われたとおりにしていると、どこかの装置が起動したようで音がした。
「もしかしてさ」
「なんだ?」
リョウは電源を抜いた機械をソラノに渡しながら聞いてみた。
「これと、師匠の稽古がキツくなるのって関係してる?」
「もちろん、その為に話したくもないマメ頭と話したんだからな」
本当に嫌だったのだろう、ソラノの眉間がそう語っている…。
「そっか…」
「きみは生身で無茶をしすぎだ……。怪我をしてほしくない」
ソラノはそう言うと、また部屋の奥に行ってしまった。
ソラノに心配ばかりかけて少し悔しかった。護っていくから、戦っていけるから「此処にいろ」と言ったのに、こうやって身を案じていろいろと考えてくれている。
「ごめん…もっと頑張る」
リョウはそう呟いた。ソラノには聞こえているはずもないのに。
そうこうしていると、部屋の奥から何かのアラームが鳴り、がちゃがちゃと音がした後、ソラノが戻ってきた。手には何かゴム製の物を持って。
「何…それ」
「穿いてみてくれ」
それ穿くものだったのか…。穿いちゃうと絶対ぴっちりしちゃいそうな感じです。
「わかった…。ってズボンは脱ぐの?」
今日はハーフパンツを穿いていたので計測の時は捲るだけでよかった。でもこれは確実にズボンのようなものだ。どこまで脱ぐのかしら…。
「当たり前だ」
ソラノは「何を当たり前のことを聞いているんだ?」と言わんばかり。
「ぱ、パンツは?」
「そこまでは脱がなくていい…当たり前だろう?」
「ですよねー…。ってここで脱ぐの?いいの!?」
いくら意識がない時に全裸を見られているかもしれないとはいえ、ちょっと女の子の前でパンツを見せるのは少し恥ずかしい。
「別にパンツぐらい見られても恥ずかしくないだろう……」
「いや、恥ずかしいって!ソラノは恥ずかしくないのかよ!」
「わ、私は別だ!恥ずかしいに決まっているだろう!男性のそれと女性のそれを一緒にするな!」
ソラノはそう言いながらブラウスを下に引っ張って、隠れているのに何かを隠そうとする。逆に身体のラインとか胸とかが強調されてますよ!
「じゃあ他所を向いているから早く着替えろ…」
そういってくるりと後ろを向いてくれた。なんだかこういうのって逆な気がする……。
さっさと着替えることにする。ゴムのような触感のズボンは意外とゆったりとしていて、ぴっちりはしていなかった。
「穿いたよ」
リョウがそう言うとソラノは振り返った。
「そうか、じゃあそのベルトにあるパネルに触れてくれ」
そう言われ、よく見るとベルトのバックルに小さなパネルがついているのがわかった。それを言われるがままに触る。するとその瞬間にゆったりとしていたズボンが急に身体に吸い付くようにフィットした。結局ぴっちりしました。
「……すごいなこれ」
「そうか?ダイビングスーツなんかはずいぶん前からこんな風になるぞ?」
「へぇ……」
リョウが腑抜けた声を出していると、ソラノはまた端末をツンツンし始めた。
「ソラノ、結局これ何なの?」
「それはインナーだ」
インナーと言うことはこの上に何かを着させるつもりなのだろうか?
「何の?」
するとソラノは急にこちらを向いて微笑んだ。
「さぁ?何のだろうな?完成したら見せてやる」
ソラノが楽しそう微笑むのが意外だった。身を案じていろいろやっていると言っていたのでいつものように一人で抱え込んで考えているのかと思っていた。とりあえずその微笑はとても素敵だった。
でも、そろそろぴっちりしたまま恥ずかしいです。
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