どこにでも生まれてしまいそうな、どこにもないおなはし。この物語を、読んでなくなってしまうことを哀しいだけでは表現できない感情に駆られました
埼玉県三郷市。三郷駅と新三郷駅で世界観が異なる街。西洋化を目指した団地は、東南アジア化しつつある。常磐線の福島県浜通り。仙台に向かう電車に乗ると、右手側の車窓に美しい海が見えるのだが、それを見ることは二度とないだろう。知っている風景は、津波と放射能で崩壊してしまった。個人的にこれらの世界を知っているので、この作品を心穏やかに読むことができなかった。私のために書いた? まさかね。
街も、人も、記憶も。改めて考えてみれば当然のことなのだが、その当然を日常の中で多くの人は忘れている。いや、意識的に、意識しないようにして生活している。その事実を、どのように受け止めるべきなのか。この世に不変不滅のものはなにもなし。
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