千百二十一話 エトア独自の<罠鍵解除・極>
ミューラー隊長は、
「時遅粉も必要ないなら楽な部類。そして、ラムーも<大罠解除・即>を持ちますが、頭賢魔族レデ・ポリ・アヌランの背後に隠れた女子は最高級の<罠鍵解除・極>を持つようですから、彼女に罠の解除と鍵開けを頼むのが一番かと思います」
「あぁ、そのようだ」
と、のっぽな長葱っぽい頭部の魔族と、その背後に隠れた黒髪の長い女子魔族を見る。
「……」
長葱っぽい頭部を持つ方の種族名は、頭賢魔族レデ・ポリ・アヌランというのか。
見た目と合う。納得感のある名前だ。
そして、ボクっ娘の魔族の種族名はミューラー隊長も知らないようだ。イスラさんにも視線を向けるが、
「私は鍵開けや罠解除などはできないです。ジアトニクスとエトアとも少し会話をしたことがある程度」
「つうか、鋼魔族はあまり他の連中と話をしなかったぜ」
ロズコがそう指摘。
「そうなのか」
「はい」
イスラさんは頷いた。
元囚人の魔族たちも頷く。
そして、頭賢魔族レデ・ポリ・アヌランの方の名はジアトニクスさんか。これまたしっくりくる名前で、賢そう。
ボクっ娘魔族はエトアさんって名前か。
エトアさんは、この辺りの魔族では珍しいタイプかな。黒髪の長さからして、仙妖魔のような雰囲気がある。
<光魔ノ秘剣・マルア>を出したらびっくりするかな。
今はいいか。
そして、先ほどのフーに似た美人さんの魔族も気になる。
「エトア、珍しく自らの能力をアピールしたんだ。出なさい」
ジアトニクスさんの長細い片腕に押し出されたエトアさん。
「は、はいでしゅ! ジアトニクスも見ててください。あの時の約束を果たします!!」
「あぁ、見ている」
ジアトニクスさんは微笑む。
そのジアトニクスさんの頭部はやはり気になる。
浮いている頭部は天使の輪的だが、実際の頭部だ。
上下の頭部の隙間を行き交う魔線の群れは稲妻的。
雷属性なんだろうか。
キサラと俺の肩にいる相棒もジアトニクスさんの頭部を見ていた。
他の方々はあまり気にしていないが、やはり気になるよな。
常闇の水精霊ヘルメも気にしていない。
水を周囲に撒いて『然もありなん』という感じだ。
そして、エトアさんはビビり体質か。
体が硬直しているような印象を受けた。
アイムフレンドリーを意識して、
「……エトアさん、よろしく頼む」
「はいでしゅ! シュウヤ様! 皆の救出には感謝しています!」
「どう致しまして。ではエトアさん、宝箱の罠解除と鍵開けを頼みます」
「――はいでしゅ! お任せを!」
エトアさんは片手を上げた。
背筋と両手を伸ばしたまま、その両手と両足を揃えて前進し、宝箱に近付いた。
緊張していると分かる。
「エトアさん、無理なら……」
と言った刹那、エトアさんは右手の甲からドラゴンの鱗のような物を幾つか宝箱に飛ばしていた。
そのドラゴンの鱗のような物は魔線を四方に展開させる。
魔線は丸い立体的な魔法陣となって宝箱を包む。
と、丸い立体的な魔法陣は子鬼のような存在を生み出す。
その子鬼のような存在は一瞬で溶けて白濁した水になった。水は、立体的な魔法陣を瞬く魔に白濁色に染める。
と、魔法陣の中に詰まった白濁した液体は白銀色に変化。
宝箱も白銀色の閃光を発してから、白銀色の液体は魔法陣ごと消える。
と、宝箱からカチャッと音が響いた。
「にゃお?」
エトアさんは頷いた。
もう罠を解除して鍵を開けたのか、宝箱の上蓋を開けた。
「「「「「おぉ~」」」」」
俺もだが、元囚人の魔族たちも驚いていた。
肩にいた
リダヒの魔輪を切断した時には、ただの少女的な魔族にしか見えなかったが、意外だ。
そして、子鬼のような存在と魔法陣が<罠鍵解除・極>だと思うが……謎だ。
隣にいるキサラと目が合う。
「素晴らしいスキルですが、一瞬、悪夢の女神ヴァーミナの【白銀の魔湖ハイ・グラシャラス】の光景を思い出しました」
「あぁ、魔法陣を染めた白濁した液体と子鬼か」
「はい」
キサラと頷き合う。
「ハトメル狩りではジアトニクスに助けてもらっていたようだが……エトアにこんな能力が……」
「あぁ、驚きだ」
「にしても、先の白濁した液体と魔法陣は、<罠鍵解除・極>に関するものなのか?」
「俺の<大罠解除・即>でも、積層した魔法陣と鍵が出るだけで、子鬼や式神のような物は召喚されないぜ?」
「あぁ、エトア独自の<罠鍵解除・極>なのか、とにかく珍しいタイプなんだろう」
「式神のような子鬼も関係があるのかもな」
元囚人の魔族たちがエトアさんとジアトニクスさんの関係性や<罠鍵解除・極>について語り合う。
ヘルメは、エトアさんの斜め上に移動しながら、
「――罠と鍵を一度に解除できる魔法のようなスキルは初めて見ましたよ! <罠鍵解除・極>は優秀なのですね!」
「はいでしゅ! シュウヤ様たち、中身の確認をどうぞ!」
「了解、ありがとう。エトアさんも一緒に見よう。欲しいお宝があったら言ってくれ」
と誘う。エトアさんは頬を朱に染めて、
「……え、お、お宝……はい! 見ましゅ!」
「ンン、にゃ~」
そんなエトアさんと一緒に宝箱の中身を確認。
皆も宝箱の中身を見ていく。
タロットカード的な魔札。絵柄はぼやけている。
ヒキガエルと、そのヒキガエルに乗っている小さいおっさん。
多頭の蛇が絡んでいる宙に浮いている歯車。
柄が、男の一物を模したエロい長剣。
柄が、女の陰部を模したエロい短剣。
煙を噴出させている人差し指。
髑髏のツルハシ。
蜘蛛の巣を有した虫籠。
知恵の輪のようなアイテム。
魔コインの束。
黒曜石のミニチュアの金床で、黒炎と共に、どこかで見た覚えのあるマッチョな男神の幻影を発している物。
百足魔族デアンホザーに似た魔族たちと底の見えない渓谷に城のようなタペストリー。
アイテムボックスらしき袋が六つ。
ポーション類が詰まった箱が五つ。
十三の結構なアイテムとアイテムボックスが六つにポーション類か。
「……結構な量だ。禍々しい魔力を発しているのは長剣と短剣。これは呪いの品だろうから触りたくない品だな」
「はい、アイテムボックスの中身も気になります」
「あぁ、中に入ってる可能性か」
「はい」
「相棒たちが戦っていた広場には、百足魔族デアンホザーと魔歯魔族トラガンの他に、上で見た進化したゴブリンたちの死体が転がっていたから、そいつらの持っていたアイテムボックスって線もある」
「あ、血霊衛士の視界も共有できるのでしたね」
「おう」
キサラとそう話してから、宝箱の中身からミューラー隊長とラムーさんに視線を向けた。
「ラムーさんは、アイテムの鑑定もできるのかな」
と聞きながら霊魔宝箱鑑定杖にも視線を向ける。
ラムーさんは、銅色が多い鋼の兜が似合う魔鋼族ベルマラン。
頷いてから、
「はい、鑑定も可能です。失敗もありますが」
「ならば、一先ずのアイテムの鑑定を頼むとして、先にロズコたちとミューラー隊長たちに、ポーション類を各自取ってもらおうか。消耗していたら飲んでくれ」
見た目は元気すぎる皆だから必要ないかもだが……。
「はい、では、箱を取り出します」
「隊長、俺も」
「頼む」
ヴァイスンさんに、ミューラー隊長、【グラナダの道】たちが、慎重にポーションが数十と入った箱を持ち上げて床に下ろす。そのポーションを皆で分け合っていく。
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