千九十三話 クエマとソロボと鬼神キサラメ骨装具・雷古鬼

 クエマとソロボは驚く。

 クエマは涙目となっていた。


 その二人は、


「【天凛の月】が入手した烈戒の浮遊岩の話に通じることですな」

「……魔界セブドラの大陸の一部だった説がある烈戒の浮遊岩……」


 と発言。


「そうだ。独鈷魔槍でトースン師匠の魔人像の結界を破壊した。その魔人像の中にあった骨の塊が鬼神キサラメ骨装具・雷古鬼で、愛用している」

「聞いています!! 主は八怪卿と幻想修業をし、<悪愚槍・鬼神肺把衝>を獲得されたと!」

「おう」


 クエマは興奮したまま、


「では、やはり、冒険者たちが盗んだトトクヌ氏族の秘宝が、鬼神キサラメ骨装具・雷古鬼……」

「それが魔界セブドラに渡り、魔軍夜行ノ槍業の八槍卿のトースン様が、そのトトクヌ支族の秘宝を入手、愛用していたから、主が鬼神キサラメ骨装具・雷古鬼を得ることに……」

「うむ……なんという話か……私たちの主が、私が信奉する鬼神キサラメ様と……」


 クエマは泣きながらそう発言。

 

「そうなる。鬼神キサラメ様についてだが、続きがある。フクロラウドの魔塔から語ろうか」

「魔界セブドラに行く前の……戦いですよね」

「そうだ。フクロラウドは、大物の大商人フクロラウド・サセルエルでもあり、俺が所有する魔塔ゲルハットを造った一人の大魔術師ケンダーヴァルだった」

「それは聞いています……」


 瞳がうるうるしているクエマの言葉にムー以外の皆が頷いた。


「おう。魔界セブドラでビュシエを<筆頭従者長選ばれし眷属>に迎える際に、吸血神ルグナド様と宵闇の女王レブラ様と会話をしたんだが、その吸血神ルグナド様が警戒していた人物がフクロラウドこと大魔術師ケンダーヴァルだ。他の神々とも通じているかも知れない、かなりの強者で、俺より強いかも知れない存在だ。そのフクロラウド・サセルエルが主催するサセルエル夏終闘技祭に出場したんだが、レザライサと共闘したバトルロイヤルの戦い前に……その会場で【剣団ガルオム】を助けつつ【闇の八巨星】たちと戦った。その中の一つ、【闇剣の明星ホアル・キルアスヒ】のキルアスヒ側と戦ったとき……」

「あ、魔人武王ガンジスの弟子ハディマルスとの戦いですね」

「はい、厖婦闇眼ドミエルという魔界の諸侯クラスと戦っていた時に、魔軍夜行ノ槍業のトースン師匠の体と装備を入手し、主が進化したことも、エヴァさんやキサラさんから血文字で聞いています」


 クエマとソロボがそう発言。

 ヒナ&サナとハンカイと蛇人族ラミアのヴェハノも頷く。


 ムーは俺の話を聞かず、闇速ベルトボックスに色々なアイテムを入れては、薄らと闇炎の中に浮かび上がるアイテムの絵を見て楽しんでいた。

 新しい玩具を得た子供のようなムー。

 闇速ベルトボックスを弄りまくるムーを見ていると嬉しくなった。


 さて、皆に視線を戻し、

 

「その通りで、厖婦闇眼ドミエルはヤヴァいほど強かった。特に<ラシャガンバルの魔次元波動>は強烈だった。が、皆の協力もあって倒せたんだ。で、そのドミエルを倒す前に……倒した魔人武王ガンジスの弟子ハディマルスの肉塊がトースン師匠の上半身と骨装具・鬼神二式に変化したんだ。それを逸早く入手せよと、魔軍夜行ノ槍業の八人の師匠たちに促された。実際、ドミエルも回収しようとしていたが、そのトースン師匠の上半身と骨装具・鬼神二式は俺が逸早く入手したんだ。すると、視界が一変、ルグファントの戦旗が犇めく魔界セブドラの戦場を渡り歩いたり、魔界八槍卿たちの幻影と神々しい魔力を放つ鬼の頭部と家紋的な梵字も連続的に出現したりした。そして……」


 少し間を空けた。

 当時のことを思い出して、


『槍使い、良く耐えた、見事である。さぁ、次はあの生意気な悪神デサロビアの眷属を倒すのだ!』

『あ、はい! 貴女様は……』

『ふふ、妾はライヴァンの世の鬼神キサラメだ。過去、古い鬼神と八槍卿たちに呼ばれておった。光魔ルシヴァルの其方が〝鬼神キサラメ骨装具・雷古鬼〟を装備し、<悪愚槍・鬼神肺把衝>もよく用いてくれていることは理解している。そして、我を信奉していたトースンの体と骨装具・鬼神二式を取り戻したことは誠に嬉しく思う。更にオーク支族トトクヌの【鬼神の一党】の一族を善くぞ光魔ルシヴァルに受け入れてくれた。あとは、ララーブイン山の奥地にある我と関わりが深い場所を見つけてくれたら嬉しく思う……常に妾は見ておるぞ……』

「という鬼神キサラメ様の思念が聞こえると……<魔軍夜行ノ槍業>、<魔軍夜行ノ理>、<夜行ノ槍業・壱式>、<夜行ノ槍業・弐式>、<夜行ノ槍業・参式>、<夜行ノ槍業・飛車鸞刃>、<夜行ノ槍業・召喚・八咫角>、<鬼神キサラメの抱擁>、<キサラメの神紋の系譜>、<鬼神・飛陽戦舞>、<鬼神・鳳鳴名鳥>のスキルと恒久スキルに称号の夜行光鬼槍卿と魔界九槍卿を獲得したんだ」

「「「「「「おぉ」」」」」」


 暫し間が空いて、涙を流すクエマが、


「……戦神グンダルン様以外にも繋がりを得た主様……血文字で少し聞きましたが、鬼神キサラメ様のスキルを得られるとは……」

「……うむ。光魔ルシヴァル宗主の主は、戦神グンダルン様と鬼神キサラメ様に認められている! なんと喜ばしい出来事か! ガハハハ」


 ソロボは豪快に笑う。

 ムーも笑っていた。


「……あぁ、しかもだ。私の一族が信奉していた鬼神キサラメ様だぞ……ソロボ……私たちの判断は間違っていないどころか……光魔ルシヴァル一門に加わることが、私の一族の運命だったのだな……うぅ」


 ソロボも涙を流す。

 ムーは「……っ」と、ソロボの足に小さい手を当てていた。

 優しい子だ。


 ソロボも涙を流しつつ俺を凝視、


「そして……複数の八大神から祝福を得た存在は……オークの中でもあまりいないはず……」


 そう言うと、クエマも、


「ふむ……ドドン大氏族、カイバチ大支族、デオゼ大氏族、ヴェン大氏族、グング氏族、アヤロク支族、ラヴァイ支族の中でも、少数のみだろう」

「はい、非常に稀な存在が我らの主……」

「伝説のハイオークキングに引けを取らない……」


 と語る。


「……やはり本人から聞くと凄まじい話だ。しかし、魔人武王ガンジスの弟子が【闇剣の明星ホアル・キルアスヒ】の配下とはな」


 ハンカイの言葉に、


「あぁ……実際、魔人武王ガンジスの弟子ハディマルスは、キルアスヒの支配下にあったから、あの場にいたってことだろう。そして、キルアスヒは、邪神ヒュリオクスの眷属だったパクスのように、身も心も厖婦闇眼ドミエルに喰われていた説が濃厚かな」

「魔人武王ガンジスの弟子が、何か弱みを握られていた?」

「たぶんだが、魔界セブドラで厖婦闇眼ドミエルは生きているから、魔界で何かがあったってことではないだろうか」

「ふむ。魔人武王ガンジスを過大評価しているだけかも知れんぞ?」

「それはあるかもだが、ま、そういった理由で――」


 肩の竜頭装甲ハルホンクを意識――。

 軽装にチェンジしながら<血霊兵装隊杖>を解除して、鬼神キサラメ骨装具・雷古鬼を装備した。


「おぉ……」

「それが鬼神キサラメ骨装具・雷古鬼……」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る