千八十二話 皆と会話にエヴァの<紫心魔功>
驚く皆の中からヴィーネが、
「……精霊様は冗談の場合には『ふふ』の微笑みが入りますから、いつもの冗談ではなく、本当のことのようです……」
と発言。
続いて、レベッカが俺を見て、
「新しい精霊様にシュウヤの雷属性獲得も凄すぎるんだけど、神聖ルシヴァル大帝国建国って……どういうことなの!! シュウヤが王様になったの!?」
「はい、魔皇帝に! 今のところはバーヴァイ城が本城ですが、いずれは魔軍夜行ノ槍業の八人の槍武術の師匠たちが過去に活躍した魔城ルグファントを本城にするはずです」
とヘルメが俺を見ながら発言した。
少し溜め息を吐きたくなるが、まぁ、その流れは否定しない。
キサラは胸元に手を当てつつ、
「短い間に魔界セブドラで国を打ち立てたシュウヤ様……
「精霊様は、魔皇帝とかルシヴァル大帝国の話を冗談でよく仰っていたが、どうやら本当のようだね」
クレインがそう発言。
俺は頷いて、
「本当だ。ちなみにグィヴァは右目に入れる。そのグィヴァを使役するまでの事を説明しておく。最初は、【源左サシィの槍斧ヶ丘】でサシィを<
と、<武装魔霊・煉極レグサール>の大剣バージョンを皆に見せる。
「……武装魔霊……ん……」
エヴァは魔導車椅子を両足に戻して寄ってきた。
俺の体と、<武装魔霊・煉極レグサール>に触れる。
目を閉じて、紫色の魔力を体から放出させていく。
体がビクッと揺れていた。
同時に俺の記憶と<武装魔霊・煉極レグサール>の記憶を読んでいるようだ。
エヴァは涙を流していく。
皆、その様子を見つつ、
「……新しい武器を入手したのですね。でも、魔王アドゥムブラリ?」
「「……」」
「アドゥムブラリは出てこないのね」
レベッカがそう聞くと、エヴァの体がビクッと揺れて、
「シュウヤ……この凄い痛みに……耐えたの?」
と声を震わせながら聞いてきた。
アドゥムブラリの件か……。
「あぁ、俺の記憶を見ながら、その時の体感をリーディングすると大変だぞ。やめたほうが……」
と心配しながら言うと、エヴァは天使の微笑を見せてくれた。
「――ん、シュウヤと心を共にしたい。だから大丈夫」
エヴァ……。
片目から涙を流しながらの微笑みとか、心がキュンどころではないな……涙が出そうになる。
「……分かった」
皆に向け、ケーゼンベルスにも説明したように、
「アドゥムブラリは勿論、今は魔界セブドラだ。
「「え?」」
「「「「ええぇぇぇぇ!!」」」」
「……あの単眼球に小さい蝙蝠のような羽のアドゥムブラリが?」
「おう、イケメンなアドゥムブラリに変化して、<
「……驚き桃の木よ?」
美人極まりないレベッカさんの口調が微妙に面白い。
そして、レベッカのツッコミを聞くと、凄く安心感を覚えるんだよなぁ。この妙な安心感はなんなんだろうか。
「マスターが男を<
「はい、しかし、意外ではありませんよ。一度ハンカイを誘っていますから。断られていますが、またお願いすると時々話をしていましたし」
ヴィーネの言葉に頷いた。
「でもでも、心臓が跳ねるほどの驚き話には変わりないから」
「それは、はい」
「……バーソロンさんの光魔騎士に闇雷精霊グィヴァ様の使役……衝撃の展開ばかりですが、アドゥムブラリの復活は完全に予想外です。しかし、今にして思えば、シュウヤ様はアドゥムブラリのことを気に掛けていました。魔界セブドラ入りした状況ですし、妙に納得できます。そして、そのアドゥムブラリは……自由に?」
キサラの言葉に頷いた。
「あぁ、自由に羽ばたいた」
「……ふふ」
「自由に……」
「「ふふ」」
「ん、シュウヤはアドゥムブラリの為に己の生命力を分け与えた。凄く痛かった。シュウヤ……は、凄く凄くがんばった。感動した……」
エヴァはぽろぽろと涙を流しまくる。
そんなエヴァの涙を親指で拭き取るが、止まらない。
そのエヴァに、
「ありがとうエヴァ」
「ん」
「……生命力を分け与えた……」
「それって、とんでもない出来事よ?」
「はい、まさに救世主……」
「……キサラの言う
「はい、献身と犠牲……痛みを得ながら己の生命力を仲間に分け与えるなんて……シュウヤ……優しいにも程があるわよ?」
と語るユイも涙を流している。
「あぁ、分かってるさ。が、皆も同じ立場ならそうするだろう?」
「……それは……分からない」
「うん、咄嗟にできるかは分からないわ」
「痛いの嫌いって言ってるのに、シュウヤは仲間や眷属のことになると、ほんと……宗主よね」
「うん。アドゥムブラリは男だし、普段は野郎とか言ってるくせに、凄く優しいんだから……」
レベッカとユイがそう語る。
そのレベッカは、
「でも、アドゥムブラリだからってこともあると思う。アドゥムブラリから色々と悲しい過去を聞いていたことを思い出した」
「あ、それを思うと……うん……シュウヤらしい……やっぱり、凄く優しい男がシュウヤよね……」
「……はい」
「「はい」」
「シュウヤお兄様……素敵です」
「はい」
「主の家来の単眼球が……」
「主ノ帰還ニ皆ガ……ナニカアッタノカ?」
「ミナルザン、留守番ご苦労様。泣いているのは、うれし泣きもあるから気にするな」
「ソ、ソウカ」
「ミナルザン、もぎゅってないで黙って見てなさい」
「……ムム」
ミナルザンはスタスタとペントハウスを歩いて台所に向かう。
机にあったコップをキュイズナーらしい手で取ると、口に運んでなんかのジュースを飲んでから、アギトナリラとナリラフリラの管理人と会話していく。
すっかり魔塔ゲルハットに順応していた。
俺がゲストの気分だ。
「ん」
エヴァはまだ泣いていた。
皆も涙を流しているが、構わず、
「…… で、話を戻すと、この<武装魔霊・煉極レグサール>なんだが、これには闇神アーディン様との繋がりがあったんだ。俺もデルハウト繋がりで、槍使いだから、闇神アーディン様には興味があった。だから、その闇神アーディン様の神像の前に大剣状態の<武装魔霊・煉極レグサール>を出すと、大剣状態の<武装魔霊・煉極レグサール>と闇神アーディン様の神像が反応した。それを見てどうするか皆と相談して、その闇神アーディン様の神像に<血魔力>を注ぎ、お祈りを捧げたんだ。そうしたら、闇神アーディン様の幻影が現れた。その闇神アーディン様に捧げた<血魔力>の対価として、<武装魔霊・煉極レグサール>に魔槍の形態を加えて下さったんだ――」
と、<武装魔霊・煉極レグサール>の大剣を一瞬で魔槍に変化させた。
「「おぉ」」
「や、闇神……」
「びっくりだらけ」
「はい、ちょっと混乱しますが、凄い出来事だらけですよ、それもわずか一ヶ月……」
「……そうだったのですね!」
皆が驚く中で闇雷精霊グィヴァが元気に発言。
あぁ、まだ言ってなかったか。
皆が闇雷精霊グィヴァを注視していたが、グィヴァは「ふふ」と笑顔を見せてお辞儀を行っていた。
アドゥムブラリの唇の動きと会話を思い出す。
知記憶の王樹キュルハ様の秘宝があれば、皆への説明をかなり省けるから、獲得を目指してがんばるのはアリか……。
その思いのまま、
「話を続ける。その闇神アーディン様の神像に闇神アーディン様の幻影が出現可能になった理由には、俺以外にも、長い間【魔雷教団】の方々が、その闇神アーディン様の神像に魔力や念に護摩を焚くような儀式を行っていたお陰もあると思う。そして、闇神アーディン様から、【源左サシィの槍斧ヶ丘】の北にある【闇雷の森】を調べてくれ的な依頼を受けた……その【闇雷の森】を調べたら、俺のためになると仰ったんだ。そうして【闇雷の森】に進むと、そこを占領していた
「……ちょ」
「巻物には、龍とドラゴンに家が浮いている……」
「「……」」
皆、
「そして、そのまま【闇雷の森】の中心にある【闇神寺院シャロアルの蓋】に向かって、中に入った。その中は、瞑界シャロアルの出入り口だったんだ。バスティアンさんという闇神アーディン様の眷属の幻影と遭遇して会話してから、俺だけが、その瞑界シャロアルに入れた。その瞑界を進むと、闘柱大宝庫という名の宝物庫に到着。そこではレンブリアさんという闇神アーディン様の大眷属がいて、その大眷属は魔魁三王のブカシュナと戦っていた。ブカシュナは、近隣でも名が通った武装勢力のトップで、諸侯クラスの強者だ。で、その戦いに乱入してブカシュナを撃破すると、レンブリアさんと話をしてから、闇神アーディン様の祭壇に移動して、その祭壇に闇精霊ドアルアルの塊や俺の<血魔力>を捧げて闇精霊ドアルアルを復活させようと試みた。そうしたら、称号の神魔高位特異現象増嵩などの効果もあり、奇跡的な事象が起きた。……闇神アーディン様の計らいか分からないが、雷属性を得る幻想修業となったんだ。幻想修業は闇神アーディン様との槍稽古で、記憶が飛ぶほどの凄まじい戦いの連続だった……何回も死んでから、色々と獲得すると、その中で雷属性も得られた。更に、闇精霊ドアルアルの塊は昇華する形で闇雷精霊グィヴァとなり、使役できたんだ」
と早口で説明したが、皆唖然。
「「……」」
「えっと……」
「瞑界シャロアルは初耳。でも、凄い冒険……」
「シュウヤ様らしい大活躍!」
キサラがそう元気な口調で言うと、拍手を始める。
と、皆が一斉に拍手、拍手で、「「おぉぉ」」という気合い声と共に拍手祭りとなった。
ヴィーネが、
「凄いぞご主人様! 闇神アーディン様とサシで修業を行えるなんて、凄すぎる!! 闇雷精霊グィヴァ様も凄い! おおぉ~」
と興奮。
エヴァは魔導車椅子に座りながら浮遊し、一生懸命拍手してくれていた。
暫し待っていると、ヴィーネが寄ってきて、
「……でも、こうして帰ってくれたことがなによりです、ご主人様……」
「……あぁ、同じ気持ちだ。バーソロンの説明もままならないが、まぁ、色々とあったってことだ――」
ヴィーネの気持ちを得ながらそう語る。
すると、エヴァが、
「ん、闇雷精霊グィヴァ様、よろしくお願いします。シュウヤの記憶を見たから全部本当と分かる」
「エヴァ、もっと教えて」
「エヴァ、頼む、宗主からも聞けるが、エヴァからの語りも不思議と頭に入るからね」
エヴァの師匠のクレインがそう語る。
エヴァは頷いてから、
「ん、バーソロンも光魔騎士なのは事実。角鬼デラバイン族を代表して活動していたバーソロンは凄い女性で強者。魔界王子テーバロンテにバビロアの蠱物を胸に入れられて見張られていた。そんな状態だったけど、デラバイン族のために魔界王子テーバロンテに屈していなかった。そのバビロアの蠱物も酷いけど、バルミュグが持っていた魔杖バーソロンにも、バーソロンは意識の一部を入れられていた」
「テーバロンテが魔杖バーソロンに……そういうことだったのね」
「……うん」
「魔杖バーソロンの語りには、神意力がありましたね」
「はい、シュウヤ様と交渉していた魔杖バーソロン……色々と怪しかった理由ですね」
皆頷く。
「後、バーソロンの持つ情報網はとても大切。塔烈中立都市セナアプアの下層と上層の魔薬コネクションを潰せる情報網だと思う。【白鯨の血長耳】と【天凛の月】に関係なく、南マハハイム地方の魔薬で苦しむ弱者たちを救える大情報! あまり信じたくないけれど、表は善人で裏では大悪人の評議員たちの一部が、凄く気持ち悪い……。そして許せない。そして、【テーバロンテの償い】の残党の情報は先生も知りたいと思う。後、メルたちとカルードさんには、【血印の使徒】の情報を伝えたほうがいいと思う。だから、バーソロンの<
「「おぉ」」
「評議員も絡んでいるのですか……」
ペレランドラが驚いている。
「ん、絡んでいる……一般の役所と繋がる人の一部も協力して利益を甘受していた。塔烈中立都市セナアプアでは被害がでないような仕組み。他の都市の被害者のことは考えていない。自分が良ければそれでいいという思考……」
クズはどこの世にもいる。
毒になるものを分かっていて打たせるとかナニモンだよ、腐った連中には正義の裁きを下すべきだろうな。
「エヴァが怒るなんて珍しいわね」
「ん、ごめん」
「ううん、それだけバーソロンの情報網は大切なのね」
「ん、そう」
「……話を戻すけど、【源左サシィの槍斧ヶ丘】の<
「ん、黒髪の美人さん。長い黒髪。その黒髪を見てシュウヤはユイを思い出していた。後、日本人の女性たちのことも思い出していた」
と語ったエヴァは真顔で俺を見る。
少し緊張を覚えるが、その通りだとユイを見る。
ショートカットのユイは最高級の和風美人さんでもあるからな。
そのユイは笑顔となって、
「ニホンとかは知らないけど、黒髪を見てわたしを思い出してくれたのは嬉しい」
と言ってくれた。
自然と笑顔となる。
エヴァは頷いてから、
「…… でも、サシィとのえっちの記憶は楽しくない。でも、シュウヤは精力が強いから、わたしたちが必要と分かって安心できた……ふふ。あ、そのサシィは<源左魔闘蛍>などの独自の<魔闘術>系統が使える。源左では<魔闘気>という名前。わたしたちの知らない文字を浮かばせる武術が凄く格好良かった。そして、シュウヤは、地球のニホンという国の方々が魔界セブドラに転生したか転移して魔族たちと交わり、源左という魔族になったと考えていた。そして、カマクラ時代の武士や侍、あづちももやま時代のせんごくぶしょうや忍者のことも考えていた。その武士と侍を祖先に持つ源左の民たちに、凄く尊敬の気持ちを抱いていた。後、おにぎりというお米の料理もあって、シュウヤはフクナガさんの特別な料理を楽しみにしている。わたしも食べてみたい。食べた存在の能力が上昇する特別な料理らしい。そんな【源左サシィの槍斧ヶ丘】の統領の源左サシィは大事な存在。だから、わたしも会いにいく!」
エヴァがそう発言。
頷いた。
「おう、エヴァは魔界セブドラ入りか」
「ん! 行く!」
「了解した」
「わたしも行くから。【源左サシィの槍斧ヶ丘】については理解したわ。で、シュウヤ、肝心の魔の扉は? 魔の扉はトラペゾヘドロンと同じだったの?
レベッカが矢継ぎ早にそう聞いてきた。
皆も注視してきた。
魔界セブドラに向かうには、惑星セラでは傷場が基本だからな。
すると、バーソロンが、
「……エヴァさんは……」
「ん、そう。完璧ではないけど、わたしは触った人の心が分かる。記憶も分かる時がある。心を見て感じられるエクストラスキルを持つの。シュウヤの場合は、どうしてか分からないけど、一瞬で凄いところまで読める」
え? そ、そうなのか。
エヴァは俺に向けウィンク。
エヴァの<
「凄い能力です!」
「ふふ、ありがとう。だから、シュウヤが魔界セブドラで過ごした事象はだいたい理解できた。バーソロンたちを救って、百足魔族デアンホザーと皆のために戦って、凄く格好良かった。あ、精霊様には悪いけど、デラバイン族を助けただけで、いつもと同じ。ただ悪者の存在が大きすぎるだけ。でも、魔皇帝は本当と言えるほどに、シュウヤにデラバイン族の民たちから希望が集まってる」
エヴァの語りに同意するように、
「言い替えたらデラバイン族と周辺地域の大同盟だな。ま、民たちの前でヘルメが神聖ルシヴァル大帝国の建国宣言をして、俺も宣言を行った。だから事実は事実だ。大厖魔街異獣ボベルファもバーヴァイ城に呼んである。そして、エヴァも言ったが、魔界セブドラでの戦いは厳しくなる予感がある。だから、バーヴァイ城に来たい者がいたら俺と一緒に来てもらいたい」
「当然! わたしは行くからね」
「わたしも」
「わたしもさ」
「はい、わたしも……しかし、【天凛の月】の最高幹部全員が魔界セブドラに向かうのは……」
とヴィーネが発言。
ミレイヴァル、マルア、クナ、ルシェル、リサナ、ペレランドラ、ペグワース、カットマギー、ナミ、リツに皆は黙って見ている。皆は遠慮して黙っていた。カリィとレンショウもいる。
マルアとクナが直ぐに来ないのは珍しい。
そのクナと目が合うと、膝が震えて倒れそうになり、ルシェルが支えていた。クナ、目が合っただけで感じてしまったのか。
【夢取りタンモール】のギンガサ、ペイジ、サーモ、マベベ、パトクは地下に掛かりっきりのようだ。
【髪結い床・幽銀門】のメンバーには、パムカレ、ヒムタア、アジン、ジョー、ウビナンがいる。
暗殺&盗賊ギルドを兼ねた戦髪結い師たち。
全員はさすがに魔界には連れて行かない。
さて……。
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