千六十四話 闇雷の封泉シャロアルと異空間
複数のぼんやりとした明かりが近付いてくる。
そこから、またも複数の巨大な岩が飛来してきた。
まだ距離があるから余裕だが……。
先ほどの巨大な深海魚や
偶然ではないな。
俺や闇精霊ドアルアル様の復活を阻む存在が闇雷の封泉シャロアルにはいるのか?
そして、この塊に<水血ノ魂魄>を用いたら……。
不完全な形での復活とかは、アレだからな。
正式に復活できる方法があるからこその神像の片目だろうし、この流れのまま行こうか――。
闇神アーディン様の神像の片目と闇精霊ドアルアルの塊から出た光が巨大な岩に向かう。
同時に
面白いが、液体を取り込もうとして失敗でもしたのか?
しかし、この漆黒の液体世界をどこまで行けばいいんだろう。
闇精霊ドアルアルの塊を用いた正式な復活は結構なことなのか。
バスティアンさんの幻影は、〝闇雷の封泉シャロアルの封入の儀〟は始まったと語っていたが……。
ん? ギリシャ神話にもあったな、瞑界に向かう話が……。
まさかな……。
ま、魔軍夜行ノ槍業のシュリ師匠の何かもここにある以上は、挑戦しようか。
<シュレゴス・ロードの魔印>が使えるから良かった。
そんな僅かな思考の間に巨大な岩が近付いてきた。
『主、大岩の一つは我が潰そう』
『おう。他は俺が破壊、いや、利用しよう――』
左手から
その先端が刃の如く変化を遂げる。
刃状の
その
そんな半透明な蛸の足に、闇神アーディン様の神像の片目が放っている光が当たると、その光の影響か、半透明な蛸の足は怪しく輝いた。
蒸発するとかはない。
そのシュレゴス・ロードに、
『岩は一部だけ利用して、他は破壊しようと思う』
『承知――』
思念を返しながら――。
――<黒呪強瞑>と<闘気玄装>を発動。
――<導想魔手>と<鬼想魔手>も発動。
二つの大きな岩は上下から俺に迫る。その二つの大きな岩の真芯を<導想魔手>の拳と<鬼想魔手>の拳がとらえて、豪快にぶち抜いた。
岩の破片が液体世界に散る。
続けて<武装紅玉・アムシャビス>の指輪を意識、<ザイムの闇炎>を発動。
岩の破片に向け――。
左手一本で握る魔槍杖バルドークを振るう。
闇炎を纏う紅斧刃の<豪閃>で複数の岩の破片を一度に真っ二つ!
まだ残る破片は赤黒い炎を自然と発して燃焼を始めていた。
その赤黒い炎はその場に残る。
漆黒の液体世界を彩るように見えた。
左手から伸びた刃状の
膨らんだ
が、そんな感傷に浸る暇はないと言わんばかりの勢いで下から大きな岩が飛来。
タイミングを合わせて――その大きな岩に向けて<闇の千手掌>を繰り出した。
闇の杭が掌を模って集積した<闇の千手掌>が大きな岩と衝突。
大きな岩は破裂するように爆発して吹き飛ぶ。
その大きな岩を破壊した後、暫くは何もナシ――。
そこから更に数秒後、横から大きな岩が向かってきた。
少し平たいか。
『あの平たい岩は破壊しないでいい、利用する――』
『承知――』
平たい岩を<導想魔手>と<鬼想魔手>の貫手で浅く突く。
二つの魔手が突き刺さった平たい岩は目の前で止まる。
その前方に突き出た貫手状態の<導想魔手>と<鬼想魔手>を消しながら、その平たい岩に跳び乗った。
その岩に向けて左手首の<鎖の因子>から<鎖>を射出――。
平たい岩に<鎖>の先端が突き刺さり、岩の層を削りながら突き抜けた。
岩を突き抜けた<鎖>を伸ばして一気に操作――。
平たい岩を囲うように雁字搦めに絡ませてから、<鎖>を少し引きつつ左手首を持ち上げた――ピンと伸びた<鎖>からガシッと金属音が鳴ったような気がした。
<鎖>が平たい岩に絡んだことを確認。
そのまま両足のアーゼンのブーツの裏で平たい岩にしっかりと踏み込んだ。
そして、――<血道第四・開門>――。
――<霊血の泉>を発動。
続けて、エクストラスキルの<ルシヴァルの紋章樹>を意識し、発動――。
一瞬で<血魔力>が平たい岩を覆うと、平たい岩の表面にぽこぽこと小さいルシヴァルの紋章樹が誕生していった。
足下以外が、小さいルシヴァルの紋章樹だらけとなった。
――面白い、タケノコ祭りって勢いで生えまくりだ。
更に、岩の周囲の漆黒の液体世界にも小さいルシヴァルの紋章樹が生えまくり。
闇雷の封泉シャロアルの液体世界に……。
小さいルシヴァルの紋章樹ができていく様は爽快だ。
それらの無数の小さい紋章樹の上部は太陽の如く輝き、根っこは暗くなるが、月虹の輝きも生む。その月虹が暗い根っこに陰影を作る。
更に、根っこ付近の空間がぐにゃりと歪む。
その歪んだ空間から赤色、紫色、黒色、蒼色、黄緑色、灰色のカラビ=ヤウ多様体のようなモノが見え隠れ。
更にルシヴァルの紋章樹の根っこから、根っこの幻影が多数出現。
その根っこから毛細結界のような魔線が大量に迸り、液体世界を昇竜のように急上昇。
その魔線の動きは、闇雷の封泉シャロアルの液体が満たす漆黒世界を裂いていくようにも見えた。
根っこの周囲に起きている事象は瞑界シャロアルへの干渉と推測。
光魔ルシヴァルの時空属性の楔とも言えるかな。
これで闇精霊ドアルアルの塊と闇神アーディン様の神像の片目を失っても、魔界セブドラに帰還が可能。
が、それはそれとして、これらの現象はそうじて凄く美しい。
漆黒の液体世界なだけに目立つ目立つ。
俺が今発動中の<魔闘術>系統の<ルシヴァル紋章樹ノ纏>とも連携したのかも。
『主! 驚いたぞ。岩を<血魔力>で利用とは、このことか』
『おう。何事も楽しむ精神だ。アドゥムブラリと沸騎士たちに能力を分け与えたことで能力は落ちているから、目印にでもなればいいかな? ぐらいの感覚だったが、ここまで発展するとは正直思わなかった』
『能力が下がろうとも<血道第六・開門>に進化を果たしたのだ。血道に多少の影響はあると思うが、血の研鑽と血の吸収と血道の威力には、さほどの影響はでていないと言うことだろう』
シュレゴス・ロードの鋭い分析能力に少し感心しつつ……。
『あぁ、そうみたいだな』
と思念を伝えて、井戸の底から空を見る気分で――。
小さいルシヴァルの紋章樹を凝視。
根っこ付近の歪んでいる空間に多く発生しているカラビ=ヤウ多様体のような不思議なモノを眺めた。
そして、前にも数回思い出しているが、下から天を見上げる時……。
地獄に蜘蛛の糸を垂らしたお釈迦様の話……かんだたの話を思い出してしまう。
井の中の蛙大海を知らずって諺も同時に思い出した。
さて、<ルシヴァルの紋章樹>が生えた平たい岩を乗りこなそう!
三倍の速さで動いてやる!
白い悪魔に負けない、とかの変な気概のもと――。
闇雷の封泉シャロアルの液体世界の中を降下していった。
すると、シュレが、
『――瞑界シャロアルに光魔ルシヴァルが来たと宣言しているようなものだな』
『おう。<霊血の泉>と<ルシヴァルの紋章樹>の盛大な目印を発生させてやった。不意打ちを受けた以上はな。〝光魔ルシヴァルここにあり〟の宣戦布告だ』
『瞑界シャロアルに、光魔ルシヴァルがいると宣戦布告か』
『あぁ、闇神アーディン様の神像の片目も文句は言ってないだろう?』
『フッ、魔界の名のある神だろうと、片目では喋られないと思うが?』
『……今日は思念が多いな』
『普段は皆がいる。そして、主の状況を考えての発言だ』
『……ありがとう、シュレゴス・ロード』
『……主、承知』
シュレゴス・ロードは普段はアピールしないだけに……。
然り気無い優しさに心が温まる。
そんな思念会話の最中にも、岩は降下し続けている。
ここ闇雷の封泉シャロアルの液体世界には――。
闇神アーディン様とバスティアンさんの幻影が示した方向に向かう自然な海流的な流れがあった。
地球で言う偏西風に貿易風などの定まった方向に向かう風や水温の変化でもあるんだろうか。
ま、そんな物理的な現象ではないだろう――。
右目のアタッチメントを触りカレウドスコープを起動させた。
一気に右目の視界が広がり、高解像度となった。更に戦闘型デバイスを凝視。
人工知能システムにウィンドウ画面は生きている。
汎用戦闘型アクセルマギナは魔界セブドラにいるが……。
この戦闘型デバイスの中身は無事。
立体的ではない簡易版アクセルマギナもいるし、立体的なホログラムのガードナーマリオルスも動いていた。
その風防の硝子面を触りディメンションスキャンを起動させる。
高解像度の視界の右上にミニマップ的な物が追加された。
カーソルを合わせるようにミニマップを意識すると拡大。
昔、<血鎖の饗宴>で体を覆って土の中を探検したことを思い出しつつ――。
闇雷の封泉シャロアルの液体世界を見ていく。
同時に、平たい岩に刺した<鎖>や<ルシヴァルの紋章樹>で平たい岩を実際にコントロールしているわけではないが、潜水艦をコントロールしている気分で闇雷の封泉シャロアルの液体世界の中を降下していった。
いざ、海底二万里の旅へ――。
と、下からまた光る存在の群れが近付いてきた。
魔素の形からして、トビウオのモンスターか?
迎撃か回避か――。
その光る存在の群れとはまだ距離が離れているから余裕だ。
一応、<滔天内丹術>と<水神の呼び声>を意識、発動――。
<ルシヴァル紋章樹ノ纏>の効果もあると思うが――。
漆黒の液体のぬめり感が減った。
瑞々しい水を肌から感じることが増えた。
もっと速く使っておけば良かった。
『主、水の気配が増えた、<水の神使>を使ったか?』
『<水神の呼び声>だ』
『なるほど』
が、基本は漆黒の液体世界――。
水のようで、ぬめり感のある液体世界なのは変わらず。
闇雷の封泉シャロアルか……。
まだ瞑界シャロアルの出入り口の範疇だと思うが、すんなりと<水神の呼び声>が発動できてよかった。
神界セウロスの力はここでも通じる。
光魔ルシヴァルの俺だからここで水神アクレシス様のスキルが使用できたのかも知れない。
その間にも、光の群れが近付いてくる。
右手に持つ魔槍杖バルドークを構えて降下――。
先ほどと同じく魔槍杖バルドークから水鴉の幻影が生まれ、『カカカッ』と乾いた笑い声を響かせる。
『主――』
左手から出た
長い光の群れは、平たい岩で降下している俺を追跡してくる。
闇神アーディン様の神像の片目と闇精霊ドアルアルの塊から出ているサーチライトのような光が、長い光の群れに向かった。
長い光の姿が顕となった。
魚ではない。
ハルバードのような魔槍の群れだった。
神像の片目と闇精霊ドアルアルの塊の光を浴びたハルバードたちは表面が溶ける。
悲鳴のような異質な金属音と不協和音を連続的に響かせてきた。
更に、どす黒い炎を発し始めるハルバードたち。
この液体世界でも音は伝わってきた。
どす黒い炎を発したハルバードたちは、穂先と柄から不気味な泡のような粘体を発生させながら斜め右のほうに逃げていく。
ハルバードたちは個々の表面から得体の知れない体液を周囲に放ち続けていた。
最初は魚の群れにも見えたが、怖すぎる。
すると、斜め下にバスティアンさんの幻影が再出現。
『さすがは御使い様です。このまま左下の方向に進んでください』
『進んでくださいか。ほぼ自動のベルトコンベア的に下ってきたんだが?』
『ふふ、それは御使い様だからこそ、闇神アーディン様の神像の片目と闇精霊ドアルアルが案内している証拠です』
『そうなのか』
『はい』
その思念会話の後、バスティアンさんは会釈。
また左下のほうに片腕を伸ばした。
俺も会釈すると、バスティアンさんの幻影はチラッと俺が左手に持つ闇精霊ドアルアルの塊と右上に浮かぶ闇神アーディン様の神像の片目を見てから、思念ではなく口で、
『……お願い致します』
と喋るように口を動かした。
俺は『はい、この左下のほうに行けばいいんですね』と腕を差しながら口を動かした。
バスティアンさんの幻影は『はい』と言うように唇を動かし、お辞儀をしながら消えていく。
そのバスティアンさんの幻影が差した方向も、今まで通り漆黒の液体世界だったが、またもぼんやりとした明かりが出現。
また大きな岩やハルバードの群れが襲い掛かってくるのではないだろうな……。
と思いながらも、平たい岩に乗りながら流れのままに――まにまに、と進む。
ぬめり感は段々と消えてきた。
すると、前方の液体世界が輝く?
違った、金色と銀色の空気の泡のようなモノが大量に奥から発生している影響か。
『主、前方に何かがあるぞ!』
『あぁ』
と、周囲の液体がサラサラした液体に変化した。
そして、
「――ボッ」
と音が響くと、空気のある空間に飛び出た。
いきなり視界が反転――え? 否、浮いて、落下している?
乗っていた平たい岩は振動を起こして破裂。
平たい岩に絡めていた<鎖>を消す。
うぉ――急いで<導想魔手>を足下に生成――。
闇雷の封泉シャロアルの液体世界から脱出したのか?
その<導想魔手>に片膝を突いて着地した。
視界が反転とか、いきなりで焦る――。
つうか、ここどこだよ――。
見上げると、漆黒の液体世界、闇雷の封泉シャロアルの液体世界だ。
平たい岩の破片が落下してきた。平たい岩が破裂した空間には<ルシヴァルの紋章樹>の小さい幻影が残っていた。
平たい岩、短い付き合いだったが南無――。
そして、再度、ここはどこだよ――。
<導想魔手>を凝視、その半透明の魔力の歪な手越しに、その下を覗く――。
そこは大きい柱が複数建ち並ぶ大広間だった。
幅は数百メートルはあるか?
城の大ホールや大きな洞窟の出入り口っぽい。
その中央の大きい柱が何本も並ぶ奥で、誰かが戦っていた。
俺の右に浮かぶ闇神アーディン様の神像の片目は無事。
左手に持つ闇精霊ドアルアルの塊も無事。
その闇神アーディン様の神像の片目と闇精霊ドアルアルの塊の光が差すのは、大きい柱。その大きい柱を守っている魔族と戦っている魔族にも向いていた。
魔族と魔族の戦いは熾烈。
両方とも四本腕に魔槍を持つ。
戦いは気になるが……。
この大広間を把握しようと周囲を見渡した。
――天井の俺が抜け出たところは、漆黒の液体世界。
闇雷の封泉シャロアルの液体はフォースフィールド的な見えない壁に阻まれている。
下の大広間の左右の端にも闇雷の封泉シャロアルの液体世界が存在していた。
それは、一種のゲートのようにも見えるが……。
見えない壁に阻まれているようだ。
と言うことは、ここは闇雷の封泉シャロアルの液体世界の中に存在する特異な世界か?
闇神アーディン様とバスティアンさんは、この大事な場所に、俺を誘導したわけか。
下の戦いの影響で、中央の柱の一つが打ち倒された。
とりあえず、乱入すれば戦いは止まるか?
状況的に、一際大きい柱を守る魔族が闇神アーディン様と関係した者だと思う。
が、しかし……ここからだと頭部と魔槍ぐらいしか分からない。
もうバレていると思うが、一応<無影歩>を発動――。
『主、下の者たちと戦うのだな』
『あぁ、そうなるかもだ』
『承知した。我を使え』
『おう、使うかもしれない――』
シュレゴス・ロードと念話をしてから<導想魔手>を消す。
一気に降下――。
股間の金玉がキュンとなったところで――。
<導想魔手>を足下に生み出して、その<導想魔手>を蹴る。
斜め下に跳躍し――大広間の地形と戦っている魔族を凝視――。
<鬼想魔手>も足下に生み出して、<鬼想魔手>の上を駆けていく。
その間にも、下の激戦模様と地形を把握していった。
巨大な柱を守るのは……。
先ほど、泉の真上に出現していた幻影の一人。
その
青白い炎を発している魔槍と、稲妻と炎が迸っている魔槍を四本腕に持つ頭が禿げた大柄な魔族だった。
刹那、魔軍夜行ノ槍業が震える。
<導想魔手>の上に着地して動きを止めた。
『弟子! あの禿げた魔族!! 見て、あの頭部の魔印刺青と肩防具の二槍魔印、間違いない、魔魁三王のブカシュナよ! そして、わたしの雷炎槍エフィルマゾルを、なんであいつが持っているの!』
『魔魁三王のブカシュナが、魔人武王の弟子を倒したから?』
『そうかもしれない……あ……え……』
と、シュリ師匠が珍しく動揺した。
理由は即座に理解した――。
柱は、上下の間の中間に空きスペースがある物が多く、そこに魔法陣があり色々な物が浮いていた。
そして、その内の一つの柱の上下の間にある立方体の魔法陣の中にシュリ師匠だと思われる女性の頭部と両腕が浮いている。
急いで<導想魔手>を蹴って、
『……柱の上下の間に存在している女性の頭部と両腕が、シュリ師匠の?』
『そう……立方体の魔法陣の中に入っている……わたしの頭部と両腕……』
『闇神アーディン様の眷属が、どうしてシュリ師匠の頭部と両腕を……』
見回すと、他の柱の上下の間にも立方体の魔法陣があり、そこに魔族の頭部と両腕に体、武器や防具が入っていた。魔軍夜行ノ槍業の他の七人の師匠たちは何も言ってこないから、あの中には、七人の体や装備はないと分かる。
『……闇神アーディンが得たアイテムを、闇神アーディンの眷属が、この瞑界シャロアルと魔界セブドラの境目を利用して、守っていたようね』
『闇神アーディン様は、〝腰の魔軍夜行ノ槍業にいるシュリとの縁とも思え〟と語っていましたが、縁どころではありませんね……』
『うん。弟子、魔魁三王のブカシュナから、わたしの雷炎槍エフィルマゾルを取り戻して! そして、頭部と両腕を奪い返して!』
『分かりましたが、取りあえず、魔魁三王のブカシュナを倒す方向で話をしてみます、いいですか?』
『もう! 武人過ぎる。二人が重なった瞬間、<空穿・螺旋壊槍>を使ってこの空間ごと、あ、それだと背後の柱にわたしの頭と腕も壊れちゃうから、それ系は暫く禁止ね……と言うことでぇ……わたしのお弟子ちゃん、頼むぅぅぅぅ~』
と、魔軍夜行ノ槍業が踊るように持ち上がってきた。
一瞬、シュリ師匠の拝む姿が見えた気がした。
『分かりました。最初は基本通り、アイムフレンドリーを意識します』
『うん!』
<導想魔手>を蹴って、大広間に着地した。
戦っている二人の魔族はまだ此方には振り向かない。
<無影歩>はまだ効いていると思うが、俺がこの世界に突入したことはもう察知しているはず――。
刹那、二人の魔族の得物がかち合ったところで、互いに離れ、片方の魔魁三王のブカシュナが反転しながら俺に向け棒手裏剣を投擲してきた。
<無影歩>を維持したまま、<血道第三・開門>――。
<
<ルシヴァル紋章樹ノ纏>と<闘気玄装>の加速力と合わせた速度で――。
その棒手裏剣を避けた瞬間――。
足下が点滅――その点滅が爆ぜた――。
無数の棒手裏剣などに細かな鉄球のようなモノを体に浴びた。
<ルシヴァル紋章樹ノ纏>と<無影歩>と<闘気玄装>が一気に削れる。
――痛すぎる。アーゼンのブーツごとハルホンクの防護服の一部が削れた。
後退して<闘気玄装>を纏い直しつつ――。
コンマ数秒も経たせず、攻撃してきた魔魁三王のブカシュナに向け――。
「ハルホンク、先ほど衣装を替えたが、また替える。棒手裏剣には棒手裏剣でお返しといこう。<朱雀閃刹>だ」
「ングゥゥィィ!!」
朱雀を模した左腕の袖口から――。
棒手裏剣と手裏剣が多数装着された朱雀を模した装備が出た。
その朱雀を模した装備が急回転しながら棒手裏剣と手裏剣が射出されていく――。
棒手裏剣と手裏剣を、魔魁三王のブカシュナに向かわせた。
棒手裏剣と手裏剣から
魔魁三王のブカシュナは、二つの魔槍を振るいながら、朱雀の魔力を内包した棒手裏剣と手裏剣を弾きながら後退――。
側面から来ていた闇神アーディン様の眷属の仁王と似た魔族の一閃を半身の姿勢で避け、反撃の青白い炎を宿す魔槍の石突を仁王の魔族の胴体に向かわせつつ、更に後退。
その体に
魔魁三王のブカシュナの傷は回復したようだ。
その魔魁三王のブカシュナが、
「――随分と巧妙な<魔絶・暗速>に、中々の威力の飛び道具とは……」
と発言。
闇神アーディン様の眷属だと思われる存在は、俺を見て、
「その塊に片目は……なるほど……ありがとうございます」
そう言うと、足下に闇炎の魔法陣を展開させる。
複数の巨大な石弓と闇炎の甲冑を着た存在がそこから左右に生まれ出ていた。
それに気付いた魔魁三王のブカシュナが、
「レンブリアが守りに入るとは……」
と発言しつつ、俺を凝視。
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