九百六十二話 ゼメタスとアドモスとマルアに〝列強魔軍地図〟の説明


「しゅ、シュウヤ様、その黒髪の綺麗な方も……」

「「「……」」」


 ルシエンヌと【剣団ガルオム】の方々は当然驚く。


「そうだ、眷属。剣精霊、武装魔霊といったアイテムの眷属と言えば分かりやすいか。悪いが、今はマルアたちに説明する」

「「「はい!」」」


 ルシエンヌと【剣団ガルオム】の方々は魔界沸騎士長ゼメタスとアドモスと〝列強魔軍地図〟とマルアを見比べるように視線を巡らせていく。

 さて、〝列強魔軍地図〟をマルアと魔界沸騎士長ゼメタスとアドモスに見せつつ、


「これは〝列強魔軍地図〟という名の魔界セブドラの一部の地図だ」

「閣下、先ほど重要な報告があるとおっしゃったのは、そのことでしたか」

「閣下は、魔界セブドラに向かわれた?」

「そうだ、行った」

「「「「「おぉぉ」」」」」


 <筆頭従者長選ばれし眷属>以外の皆が驚いた。

 リサナとミレイヴァルも知らなかったからな。


「ンン、にゃお~ん、にゃ、にゃ~」

「ピピッ」

「ルルゥ」


 ガードナーマリオルスと黒き獣トギアの小型グリフォンは、相棒の触手に、ツンツクツン、ツンツクツン、ツンツクツンと突かれていた。


「お母さんたちがいた魔界セブドラに渡っていたのですね! 凄い!」


 マルアは感激したような表情を浮かべている。


「そうだ」

「わぁ~」

「「おぉ~」」


 魔界沸騎士長ゼメタスとアドモスの鋼鉄の鎧の一部が少し溶けていた。

 気持ちが熱くなりすぎだ。


 溶けた部分は魔力を噴出しながら新たな肩の小鰭のような防具と胴の光魔ルシヴァルの紋様が描かれた杏葉に佩楯と胴を造っていた。

 アニメイテッド・ボーンズとプレインハニーの効果は、今も継続中?

 それとも厖婦闇眼ドミエルを倒した影響で、皆が結構な魔素を得て成長したってことか。俺も戦いの最中だが、無数のスキルを得ることができた。


 そんなことよりも、


「ナミが用意した〝夢魔の曙鏡〟のアイテム類と、ナミの<夢送り>のスキルを用いて、夢魔世界に移動したと思ったら、玄智の森へと移動していたんだ」


 そう説明。


 マルアの額には疑問符が浮かんで見えた。

 魔界沸騎士長ゼメタスとアドモスの額は前立の飾りの鍬形で、渋いまま。

 

 そのゼメタスとアドモスの眼窩の奥の橙色の炎の瞳もかなり渋い。

 マルアは、


「……その方法は、皆さんが時々仰っていた……セラの傷場から魔界セブドラ側の傷場に移動する時に必要な〝魔王の楽譜〟と〝ハイセルコーンの角笛〟を用いる方法ではない?」


 頷いた。


「おう、違う方法。玄智の森から魔界セブドラ側へ行ける傷場は、鬼魔人傷場と呼ばれていたな。この惑星セラにある傷場とは異なる傷場だったということだ」

「分かりました」

「そのような傷場が存在するとは驚きですぞ!」

「――我も初めて知った!」


 頷いて、


「少し長くなるが話をするぞ?」

「「「はい!」」」

「ナミの<夢送り>で体験したスキルを得られる夢の夢魔世界は、普通の夢ではない、異世界転移の夢……夢だが夢ではない、もう一つの現実だったんだ」

「もう一つの現実……」

「おう。細かく見れば、すべての物質は小さな粒、振動している原子で波。周波数で形が変わる〝グラトニ図形〟は地球ではそれなりに有名だった」

「ぐらとに図形……」

「ぐらとに?」

「「「ぐらとに図形?」」」


 話がずれたが、まぁ良いか。


「おう、砂などを金属板に乗せ、特定の周波数の振動を与えることで、金属板に描かれる砂の図形が周波数ごとに変化する話は有名だった。ミクロの粒の集まりには、個有振動数があったりする」


 音楽や音波で砂の図形が変化するのは非常に面白いんだよなぁ。

 そして、それは同時にDNAにも、細胞が多い人間にも作用する。


 非常に重要な周波数の固有振動数。

 

 電磁波もそうだ。

 ニューロ・セキュリティ、脳制権は非常に重要。

 TVが核兵器に優るどころじゃねぇからな、認知領域の戦いは……。

 TVの映像とネットの映像のサブミニナル効果が脳に与える影響、それに加えてスマホや電子デバイスによるBluetoothとルーターのWi-Fiと携帯基地局からの電磁波網は、人々の脳や内臓に確実に影響を与え続けていた。

 

「固有振動数……」


 というヴィーネの呟きで今に戻る。


「すまん、話がずれた。固有振動数の話は忘れてくれ。で、その異世界の名は玄智の森。その玄智の森に渡った際の俺の体は、今の俺の体とは少し異なっていた。<鎖>と魔法は使えず、武器は無名無礼の魔槍のみ。今思えば……水神アクレシス様が水鏡を利用して、俄に造り上げた仮の体だったと推測する。で、玄智の森は元々、神界セウロスの仙鼬籬せんゆりの森の中の一地方だったんだ。しかし、その仙鼬籬せんゆりの森で、マルアの母とその一族が関連する大事件が発生。その大事件の影響で神界セウロスから分離し、魔界セブドラ側に隣接してしまった異世界が玄智の森だった。その玄智の森には多数の魔族たちが流入し、その玄智の森にいた仙人と魔族は長く争いながらも愛し合い憎しみ合う間柄として、子孫を残し続けていたようだ。その辺りは、惑星セラの南マハハイム地方の文化形成と似ている」

「わたしのお母さん? 仙妖魔の秘剣のお母さんが、デュラート・シュウヤ様の移った玄智の森に関係が……あれ?」


 マルア……。

 すぐにエヴァが寄り添う。


「ん、シュウヤは帰ってきて強くなった」

「はい、それは分かります!」


 優しいエヴァに任せよう。


「で、俺が転移した玄智の森は、神界セウロスの仙鼬籬せんゆりの森から分離して数千年は経過したであろう玄智の森だった。神界セウロスの血が濃厚な一族たちは、主に仙武人と呼ばれていた。そして、魔族とその仙武人は争い合っていた。そこでホウシン師匠と出会いエンビヤを救って……武魂棍を叩いて武王院に入学し……ここからは長くなるからそれは今度。その玄智の森にいた魔族たちを救う一環で、魔界セブドラに渡ったんだ。救った魔族たちは、鬼魔人と仙妖魔の軍。その流れで、この魔界セブドラの〝列強魔軍地図〟は、配下にした魔界騎士ド・ラグネスが持っていて、それをくれたんだ」

「なんと……」

「そのようなことが、閣下が救ったその魔族たちはどうなったのですか?」

「移動中。鬼魔人と仙妖魔の軍と共に出た魔界セブドラの位置は、魔界王子ライランの所領の範囲内のはずだ。〝列強魔軍地図〟で説明しよう。皆の移動に協力してくれたミトリ・ミトンが担い手の大厖魔街異獣ボベルファに乗っている鬼魔人と仙妖魔の軍は……この辺りのはずだが……まずは、ゼメタスとアドモスの故郷の――」


 と、魔界沸騎士長ゼメタスとアドモスの地元に指を差した。


「――あぁ、私たちのグルガンヌの東南地方!」

「おぉぉ、我らの土地を俯瞰して見るとこのように……」


 魔界沸騎士長ゼメタスとアドモスは感動しているようだ。

 冑の横から槍烏賊の防具が伸び縮みしている。


「ンンン」


 黒猫ロロが反応していた。

 とりあえず。


「配下の魔界騎士ド・ラグネスに、この〝列強魔軍地図〟の巻物は普通の地図ではない? と聞いたら、『はい、血と魔力を刻み入れ契約をすれば、〝列強魔軍地図〟の契約者の精神力と魔力の程度により、〝列強魔軍地図〟に地図が表示され、その地図の範囲も決まるとされている伝説レジェンド級のアイテム。更に契約せずとも、触りつつ魔力と思念をこの〝列強魔軍地図〟に送れば地名を書き込めます。契約者ならば、地名を消すことも自由です』と語っていた」

「「「おぉ~」」」


 魔界沸騎士長ゼメタスとアドモスは勿論、マルア以外の【剣団ガルオム】の方々も驚く。

 この〝列強魔軍地図〟は、スペシャルな地図のアイテムで、神話ミソロジー級に思えるが……実は伝説レジェンド級。

 この事から、神々や諸侯に魔界騎士にも、似たような地図アイテムは結構流通しているようだ。

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