八百五十三話 ロロディーヌとメトの、のほほん歩き
「さて、皆、話は聞いたな? <夢取鏡師>のナミに夢をもらう。で、ユイとペレランドラ、今の【天凜の月】の概要と未来と魔塔ゲルハットの話し合いを進めてくれ」
「ピュゥゥ」
お、ヒューイが戻ってきた。
「はい」
「了解。夢の儀式の後は?」
「サイデイルに一旦帰る」
ユイとペレランドラは頷いた。
「ピュゥゥ」
ヒューイは庭のほうに向かう。
すると、黒虎ロロディーヌが、「ン、にゃお~」と荒鷹ヒューイの姿を追うようにバルコニーの端に移動。
「にゃァ」
と、
ロロディーヌは成猫の黒猫。
メトは子猫の銀灰猫。
その二匹は体を寄せつつ一緒に歩いて近付いてきた。
可愛い。親子みたいだ。
すると、共に微笑ましい動物の様子を見ていた【夢取りタンモール】の長のギンガサがナミに視線を向けると、
「ナミ、これを――」
「え?」
驚いたナミ。
ギンガサから水晶玉が複数入った半透明な袋を幾つか受け取っていた。
「長、これって……」
「いいのだ。我らの新しき盟主と、その眷属の方々に失礼がないよう」
「は、はい!」
ナミは恐縮した態度でギンガサに頭を下げる。
ギンガサは満足そうな表情を浮かべて頷く。
「ギンガサ、何を渡したんだ?」
「はは、盟主、それは後ほどのお楽しみですぞ。善意には善意を」
ニカッと笑うギンガサ。
「分かった」
大きな勾玉の礼として、ナミに施術用の夢を渡したのか。
そこで、ペレランドラが一歩前に出た。
「皆さん、盟主の戦闘能力の一端を見て大変驚かれたと思いますが、【天凜の月】と魔塔ゲルハットに関することは、まだまだ話し足りません。上のペントハウスに移動しましょうか」
ペレランドラが腕を拱門のほうに向けた。
「「はい」」
【夢取りタンモール】と【髪結い床・幽銀門】の面々は俺たちに礼をしてから歩き出す。
ペレランドラとユイは歩きつつ、
「【天凜の月】の幹部に縄張りの説明と【髪結い床・幽銀門】の暗殺ギルドの仕事内容の委細はユイさんたちにお任せするとして、わたしは資材を活かして衣服商会を、この魔塔ゲルハット内に立ち上げることを報告しますわ。そして、上院評議員として知るべき情報を色々とお伝えしたいと思います」
「うん。衣服商会。職人と働き手たちも逃げずに留まっていたようだし、色々とラッキーよね」
「はい、談合の場ではラッキーペレランドラと揶揄されました」
「「「ふふ」」」
ドロシーとクレインとペレランドラは笑う。
ユイは『へぇ』と言った調子で皆を見る。
下界のやりとりは色々とあったようだな。
「クレインが活躍した話ですね?」
キサラがそう聞いていた。
「そうさね」
すると、ユイが、ヴィーネとクレインを見て、
「で、わたしは上に行くけど、ヴィーネとクレインは?」
ヴィーネは俺とナミを見て、
「わたしは夢と鏡とナミの技術が見たい。そして、施術には注意が必要だ」
と、俺の右手をギュッと握ってくる。
恋人握りに移行してきた。
ヴィーネの掌に愛を感じた。
横に来たヴィーネのおっぱいさんに悪戯はしない。
「わたしは夢のスキルについては知っているからユイと一緒に説明に加わるさ。【魔塔アッセルバインド】の会長とリズのことも伝えておく」
ユイは頷いて、
「【髪結い床・幽銀門】と【夢取りタンモール】の方々の中には、少数精鋭の傭兵ギルド【魔塔アッセルバインド】がどうして【天凜の月】に? と考えている方は多いと思うし、丁度いいと思う」
ユイがそう発言。
クレインとペレランドラは頷いた。
そのペレランドラが、
「ギンガサさん、パムカレさんと皆さん、最上階の庭園へとご案内します。ドロシーも行きますよ」
「「はい」」
【髪結い床・幽銀門】と【髪結い床・幽銀門】の面々も続く。
「ん、わたしもナミさんの鏡と夢のスキルを見たい」
「わたしも~」
「当然、わたしもです。シュウヤ様と一緒に添い寝を」
『褥は妾が……』
沙の念話には応えず――。
俺たちもバルコニーを歩き出した。
「ンンン」
「ンン」
可愛い菊門さんを見せびらかせていた。
うんちさんは見えない。
『ふふ、可愛いお尻ちゃんですね!』
『あぁ、猫の友達気分という感じののほほん歩きは可愛い』
エヴァ、レベッカ、ビーサ、キサラがその猫たちを見て微笑みながら、拱門を潜り中層の踊り場に入った。
床はいつ見ても綺麗だ。
夜になると、床の中に流れている水が輝くとか、豪華すぎる。
宙には、管理人が乗っている光源もある。
その光源は貝殻が集結したアンモナイトだ。
不思議すぎる。
アンモナイトライダーと名付けたくなる。
すぐに
エヴァの肩の上に移動していた。
ナミを案内するように中層の部屋に移動した。
「ご主人様、こちらへ」
「シュウヤ、えっちなのは禁止だから!」
「ん!」
エヴァはレベッカに合わせての発言と分かる。
レベッカのほうはヴィーネと俺の手を解こうと俺とヴィーネの手を必死になって叩く。
「きゃっ」
手を叩いていたレベッカの声だ。
ヴィーネの反対の手がレベッカの横っ腹を撫でていた。
レベッカはヴィーネの手が撫でた脇腹が擽ったくて脇を締めながら、細い体でくの字を作ろうと姿勢を崩して小さい悲鳴を発していた。
ひょうきんで可愛い女性がレベッカだと、よく分かる。
俺の右手を独り占めしてご機嫌なヴィーネさんは「ふふ」と笑って、
「ご主人様、楽しみですね! 鏡を使った夢の受け渡し、夢取の技術は興味深いです」
「おう」
先に出たレベッカはヴィーネの自慢を見て「ふん!」と鼻息を荒くする。
そのレベッカを見て、
「レベッカ、エヴァのように髪薬を使った散髪をしてもらわなくていいのか?」
「今はいいの! シュウヤの施術が終わってからやってもらう」
「ンン、にゃお~」
廊下の先で止まっていたロロディーヌ。
そこは俺とペレランドラが激しくエッチ、いや、処女刃の儀式を行った部屋の前だ。
やはり、相棒は相棒、神獣ロロディーヌ。
俺がどこで何をしてるのか、遠くにいても分かっている顔付きだ。
ま、ドヤァな顔なんだが。
「そこの部屋で夢の儀式をするのね!」
「盟主、その右の部屋で?」
「おう。寝台もあるし、そこの部屋に入ろうか」
「ンン、にゃお~」
「にゃァ」
先に
寝台の上に跳躍した
そこまで寝台に弾力はないと思うが、毎回行う相棒の遊びの一つか。
さて……。
過去にナミから、
『魔力、精神、筋力が増す効果の夢、眠った才能を開花する夢、スキルの獲得を促す夢、リスクはありますが、新しいスキル自体を獲得する夢もあります』
と聞いている。楽しみだ。
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