六百七十八話 凄腕の二人からの挟み撃ち
オーラ的な魔力を纏った二人は間合いを詰めてくる。
その背後の敵の増援を確認。
突進してくる剣士は腕を掲げる。
その腕の甲から葉脈的な魔力を前方に展開――。
反対の腕に持つ剣の切っ先を俺に向ける。
葉脈の形の蠢く魔力の盾で体を防御しつつの突き技か。
見るからに強者と分かる。
隣の二槍使いも加速――。
地面に穴を開けながら横にステップを踏む――。
グリーブの底に鋼の棒でも仕込んでいるのか?
側面から攻撃か?
違った――。
二槍使いは前屈みの姿勢で前進。
葉脈の魔力の盾を出した剣士は歩幅を短くした。
急激に速度を落として隣の二槍使いとアイコンタクト。
が、一瞬で、また加速する動きで前に出る。
――加速なら加速だ。
<
――血魔力<血道第三・開門>。
<
続けて<血道第四・開門>――<霊血装・ルシヴァル>を発動。
一瞬でガスマスク状の吸血鬼武装が口元に展開された。
俺の姿を面頬的な装備を見た剣師と二槍使いは、動きを止め、
「闘気霊装か、或いは呪霊装か?」
「構うな、やるぞ――」
そう発言した二槍使いは前進すると、剣士の前に出た。
二槍使いは、剣士の甲から外に放出されている魔力の盾越しに俺を睨む。
葉脈的な魔力が構成する魔力の盾はゆらゆらと揺らぐ。
と、その魔力の盾越しに睨みを強めた二槍使いは、一呼吸を入れてから――。
剣士が繰り出した魔力の盾の隙間から電光石火の勢いで魔槍を突き出してくる。
俺は頭部を傾け、その魔槍を避けた。
二槍使いは右手を引く。
と、同時に左手が握る魔槍を前に出す。
また、剣士が放つ葉脈のような魔力の盾の隙間から二槍使いの魔槍が突出する。
二つの魔槍が俺の下腹部に迫ったが、魔槍杖バルドークの柄を下げて対応。
柄で紫色の魔槍の連続的な<刺突>の技を防ぐ。
「その構え、風槍流か」
二槍使いがそう発言。
俺は構わず、反撃――。
下から魔槍杖バルドークを振るった。
「ライブン、頼む」
「任せろ――」
二槍使いの背後な剣士が腕の甲から出した葉脈風の魔力が不気味にゆらゆらと蠢く。
その葉っぱの脈的な魔力の盾と魔槍杖の穂先が衝突――。
魔槍杖バルドークの嵐雲の穂先は弾かれた。
剣士の魔力の盾によるフォローを受けた二槍使いは、
「これを喰らえや、<魔連突>――」
――再び、紫色の魔槍で俺を突く。
二つの魔槍の<刺突>の連続技。
<水雅・魔連穿>系のスキルか。
頭部に迫った紫色の穂先を魔槍杖の螻蛄首で受けた――。
眼前で紫陽花の火花が散る。
すると、紫色の槍の形状が変化しつつ魔槍杖バルドークの柄の表面を滑るように伸びてくる。
紫色の穂先が頬に迫った――。
戦国武者風の面頬の<霊血装・ルシヴァル>で紫色の穂先を弾く。
しかし、それた紫色の穂先は俺の耳を削る。
「ぐあ――」
激しい痛みが走った。
そこに追撃の剣士の「<練岬突>」の突きが迫る。
二槍使いの「<刺突>」も迫った。
剣士は葉脈的な魔力の盾を縮小させる。
俺は魔槍杖バルドークを斜めに傾けて――。
螻蛄首で<練岬突>を受けた。
やや遅れて石突き代わりの竜魔石で二槍使いの突き技を防ぐ。
柄の衝突した二カ所から火花が散った。
その火花を吸い寄せるように――。
掌の中で滑らせ回転させた魔槍杖バルドークの竜魔石で――。
二槍使いの右手が握る魔槍を上方に弾く。
二槍使いは俺が弾くことは想定済みのように、歩幅を変えた。
二槍使いの体勢と片腕の動きに魔力が腰に溜まる。
――<刺突>系と読む。
巧みな槍武術の歩法だ。
俺は左へと爪先半回転を実行――。
その二槍使いが繰り出した風を纏う速度の<刺突>をギリギリの距離で避けた。
魔槍杖バルドークを左手に移す――。
剣士は葉脈的な盾をより小さくしながら前進。
剣の切っ先を伸ばしてくる。
右から剣士、左から二槍使い。
凄腕の二人からの挟み撃ち。
剣士の剣をスウェーバックで避けた。
その剣に対して――。
魔槍杖バルドークを押し当てつつ
同時に氷の大剣が発生中の魔槍杖バルドークを左手の掌の中で滑らせた。
その回転させた魔槍杖バルドークの嵐雲の穂先で右側の剣士を狙う――剣士は甲の葉脈の形に動く魔力の盾で、嵐雲の穂先を防いできた。
――
「――チッ、俺たちを同時に往なすとは、反応速度が並じゃねぇ」
剣士がそう発言しながら反撃。
その前に出た剣の間合いを利用する形で、俺は一回転――。
剣士の突きを避けつつの――。
浴びせ蹴りを剣士の肩に喰らわせる。
「ぐあ――」
踵落とし的な打撃を喰らった衝撃で後退する剣士。
直ぐさまフォローにくる二槍使い。
俺の着地際を狙うように、紫色の魔槍を輝かせ「<龍突牙>」と突き技を出してきた。
俺は拳の<導想魔手>で対応。
その<龍突牙>の魔槍の技に<導想魔手>を衝突させた。
龍の魔力を宿した紫色の魔槍に貫かれた<導想魔手>だったが、勢いは殺すことができた。
相殺に成功した。
刹那、浴びせ蹴りを喰らっていた剣士が体勢を立て直していたのか、
「ぬぉらぁぁぁ」
吶喊――。
叫ぶ剣士の甲から派生する葉脈的なモノが光の触手と化した。
――触手の尖端は刃となった。
その触手の光刃の機動はヘルメの<珠瑠の紐>的。
蛇のような動きでもある。
その触手の光刃で俺を攻撃するつもりか?
が、まずは二槍使いを牽制。
二槍使いの胸部目掛け――。
左手が槍と化すような魔槍杖バルドークの<刺突>を繰り出した――。
二槍使いは二つの魔槍を上げる。
クロス受けで、俺の<刺突>を防いだ。
――防御は硬い。
嵐雲の穂先と俺を睨む二槍使い。
俺はそのまま真っ直ぐ左に伸びる魔槍杖バルドークを維持。
右から迫る触手の光刃を注視。
『シュレ、光の刃の一部でいいから防御しろ』
『承知』
蓮の形の防御層が、俺の体の四方に展開。
迫る触手の光刃の一部を相殺してくれた。
俺はその触手の光刃の根元、剣士の腕の甲を注視。
細かい網目状の魔力層が蠢く。
俺は魔槍杖バルドークを消去しつつ――。
甲から光の触手の刃を発生させ攻撃してくる剣士に向け――。
強引にトレースキックを敢行――。
光の触手の刃が、当然、俺の、そのトレースキックの右足に集中する。
――光の触手の刃が右足に喰らい付く。
エイリアンの卵を植え付けるような勢いで、傷を喰らいまくった。
痛いなんてもんじゃねぇ。
が、構わねぇ――。
剣士は「――え?」と驚きつつ鋼風の剣の腹で、血塗れの俺の蹴りを受ける。
剣士の腕の甲から派生した金色の葉脈は縮む。
剣士は俺のトレースキックを受けたが衝撃は殺せない。
背後に吹き飛んだ――。
しかし、右足が痛すぎる。
が、回復も早い。
ヴァンパイア系の特権だ――。
俺の右足は、アーゼンのブーツ以外は骨が露出してボロボロだ。
ま、再生するからいいんだが――。
『シュレ、散れ』
『ハッ――』
蛸足魔力は一瞬で消失。
消えた刹那、<血鎖の饗宴>を意識。
再生途中の生々しい傷が残る足から迸る血飛沫が<血鎖の饗宴>と化し、その血鎖の群れが、蹴りを受けた剣士に向かった。
宙を行き交うように空間を侵食する血鎖が、血に飢えたヴァンパイアの牙に見える。
――吹き飛ぶ剣士は鋼風の剣を下に向けた。
切っ先で地面を刺すと――片足の膝で、地面を突きつつ回転しながら蹴りの衝撃を殺す。
その剣士は、素早く腕を掲げて甲を輝かせる。
甲から金色の葉脈を展開させ蠢く葉脈を幾重にも派生させた。
葉脈が不気味に光ると、その葉脈の上部が、光の触手に変化。
その光の触手の刃で、俺の<血鎖の饗宴>を防ぐ。
葉脈と光の触手の刃は、攻撃にも防御にも使えるということだ。
キサラのダモアヌンの魔槍から出すフィラメント系の能力だろう。
しかし、俺は光魔ルシヴァルの宗主。
<血鎖の饗宴>を生む血と魔力は有限だが膨大だ。
強力なスキルかアイテムであろうと……。
魔力消費を抑えるか、俺と同じ量の魔力を備えていなきゃだめだろう。
案の定、<血鎖の饗宴>を防ぐ金色の葉脈と金色の触手の刃の色合いが薄まった。
根元の甲が不自然に点滅。
剣士は焦燥顔となった、魔力を失ったか。
魔力を失った剣士は剣を闇雲に振るう――。
俺の<血鎖の饗宴>は、その剣を砕いて破壊。
そのまま波頭のような血鎖の群れは剣士を呑み込んだ。
そうして――。
右足から出した<血鎖の饗宴>を引き戻す。
剣士は跡形も無く消える。
すると、左の二槍使いが、
「――あぁぁ、ライブン! 糞が――<雷魔穿>」
紫色の魔槍の穂先で、俺の頭部を突いてくる。
紫色の穂先がドリル状に変化。
消費の激しい<血鎖の饗宴>を消去――。
俺は再生しかけの右足を地面に突けつつ――。
頭部を僅かに横に傾ける。
――面頬防具の<霊血装・ルシヴァル>に、その紫色の矛が掠った。
頬と首下から振動と熱量を感じつつ爪先半回転――。
体を独楽のように回しながら右手に神槍ガンジスを召喚――。
二槍使いの側面に回った直後――。
アーゼンのブーツで地面を貫く勢いの踏み込みから――。
――二槍使いの脇腹を貫こうと<水穿>を繰り出す。
二槍使いは二振りの魔槍を下に傾けた。
卍型に近い構えだ。
神槍ガンジスの双月の矛を防ぐ。
俺は<生活魔法>の水を撒く。
右手が握る神槍ガンジスを引いた。
『槍の引き際』は狙わせない――。
左手に魔槍杖バルドーグを召喚。
すぐに左手の魔槍杖バルドークで<刺突>を放つ――。
「チッ」
舌打ちをする二槍使い。
紫色の魔槍の角度を変えた。
魔槍杖バルドークの嵐雲の穂先を胸元で受ける。
防御が硬い。
「――水だぁ? この槍の穂先にも水を纏ってやがる」
口調は荒いが<水穿>と<刺突>を防ぐ、その二槍使いの腕前は、かなりの物だ。
俺は神槍ガンジスを握る右手に力を入れた。
つばぜり合いの形に入る。
左手の魔槍杖バルドークを消去。
「武器召喚のスキル持ちか……戦闘職業は<武装召喚師>あたりか?」
「アイテムボックスが優秀なだけだ」
俺の言葉を聞いた二槍使いは、無手の左手をチラッと見る。
二振りの魔槍の柄越しに、俺が力を込めた神槍ガンジスを注視してきた。
構わず……。
つばぜり合いを制するように、神槍ガンジスの方天画戟と似た矛を――二槍使いの胸元に当てようと押し込むが……力は拮抗状態……。
二槍使いも力が強い。
「片手だけで、この力か……」
「人族じゃないからな」
「そうかい……名を聞こうか。【魔塔アッセルバインド】の新入り……」
「名はシュウヤ。お前は?」
俺が名乗ると、二槍使いの小麦色の双眸が縦に割れた。
人族っぽいが、
その二槍使いは、
「俺はソウザ、通称、闘槍ソウザ。【ネビュロスの雷】という闇ギルドの副長助勤、三番隊隊長だ」
「ソウザか。で、三番隊隊長さんよ。俺たちは【魔塔アッセルバインド】ではない。【天凜の月】だ」
「血長耳と同盟を結んだ連中……手練手管の評議員どもの意向では動いてないのか。ペレランドラ側に血長耳がついたのか?」
「血長耳は知らんな」
「……上の連中は、評議員の女は要らない。『
ソウザは、喋りながら二振りの紫色の魔槍の角度を変えた。
神槍ガンジスの矛のベクトルを変えてくる。
方天画戟の穂先の下、螻蛄首に備わる蒼い毛の槍纓を遠ざけるように、神槍ガンジスを、片手の魔槍で突き放しつつ、左足で蹴りを放ってきた。
そのソウザの左足の裏、踵から飛び出た鋼風の刃を視認。
神槍ガンジスの蒼い槍纓に魔力を通し、刃に変化させた。
ソウザは蹴りを中断しつつ、紫色の魔槍を傾ける。
紫の魔槍の柄の形状を刃の群れに変えた。
その刃の群れで、蒼い槍纓の刃を迎撃。
蒼い槍纓に通していた魔力を止めて神槍ガンジスを少し引く。
神槍ガンジスの角度を変えると――。
チャンスと見たのか、ソウザは「いくぜ――」と、再び蹴りを繰り出してきた。
左手に召喚した魔槍グドルルのオレンジ刃で蹴りに対応。
足の裏から出た刃と青龍偃月刀の形をしたオレンジ刃が衝突――。
双方折れず溶けずに火花が散った。
重い衝撃を残す。
二槍使いソウザはブーツも特別か――。
ソウザは、続けざま、槍武術の歩法から紫色の魔槍を振るう。
「<闘薙ぎ>――」
紫色の魔槍の一閃。
俺はスウェーバックで避けた。
二槍使いは、そのまま回転を続けて前進。
右手が握る魔槍で、俺の上段を狙うフェイク。
続けて、左手が握る紫色の矛を、俺の下段に寄越す。
俺の足を刈るような薙ぎ払い。
その足払い的な矛を、魔槍グドルルの刃で冷静に弾く。
「――凄い反応速度に冷静沈着さだ。見事な武人、風槍流か」
「察していると思うが、俺は【天凜の月】を率いる立場の槍使いだ」
俺がそう言うと、ソウザは嗤う。
「道理で――」
紫色の穂先の<刺突>が迫った。
――ダッキング。
<刺突>を屈んで避けた――。
同時に、左手が握る魔槍グドルルを動かす。
オレンジ刃の角度を変えるフェイク。
そして、その魔槍グドルルをいきなり消去。
その寸の間――右手が握る神槍ガンジスで<牙衝>を繰り出した。
ソウザは下段に迫る<牙衝>を見る。
下に傾けた紫色の魔槍で方天画戟とにた双月の矛の<牙衝>を弾いた。
歯軋りをしたような歯を噛み、目がギラついたソウザは、
「――俺も闇の世界の住人……普通じゃねぇんだよ!」
嗤うように叫ぶ。
両肩から魔の印が浮くと魔力も噴き出た。
同時に三角筋と上腕二頭筋が盛り上がって防護服がはち切れる。
その両腕が握る二つの魔槍で、神槍ガンジスごと俺を狙う。
鬼が取り憑いたような激しい気魂を見せるソウザ――。
爆発的な速度の連続的な突きを繰り出す。
俺は避けて、弾き、その魔槍の矛を時折喰らい、何十合と打ち合った――。
刹那、俺は体勢を直しつつ左手に王牌十字槍ヴェクサードを召喚。
二槍使いのソウザは、俺の左手をチラッと見て。
「チッ、一槍の風槍流の他に二槍流も手練れか! 武芸者にもほどがあるぞ、てめぇ――」
叫ぶソウザに向けて、神槍ガンジスの矛の<刺突>を繰り出す。
ソウザは、二振りの魔槍をクロス――。
方天画戟と似た
刹那、ソウザは紫色の魔槍を左右に動かして腕を広げる形で、神槍ガンジスを弾く。
が、ソウザは腹を晒した格好となった――。
その腹を狙う――。
王牌十字槍ヴェクサードを<投擲>――。
「この距離で――」
ソウザは反応。
短剣の挙動で、長柄の王牌十字槍ヴェクサードが放り込まれたんだ、驚くのも無理はない。
しかし、驚きつつも反応するソウザは強い。
王牌十字槍ヴェクサードは魔槍の柄の下部と衝突し跳ねた。
が、王牌十字槍ヴェクサードは個別に意思があるが如く、宙空で、穂先の位置をソウザに向ける。
と、急降下――ギラリと視線を鋭くしたソウザは反応。
斜め上から飛来する王牌十字槍ヴェクサードを避けた――。
地面に突き刺さった王牌十字槍ヴェクサード。
俺はその間に――。
仙魔術と<水神の呼び声>を発動。
僅かな霧と魔力の波が周囲に拡がった。
霧の衣を背負う十字架となった王牌十字槍ヴェクサード。
アーメンってか? お祈りはしないが、続けざまに鋼の柄巻を出して魔力を通す――。
ブレードの放射口から出たブレードがブゥゥゥンと音を鳴らす。
――ムラサメブレード・改を縦に振るった。
退いたソウザの肩口を狙う。
<飛剣・柊返し>を繰り出した。
「剣も扱えるとは凄まじい器用さだな。剣槍使いとでも言うのか?」
ソウザは、片方の肘を曲げつつ紫色の魔槍の角度を変えて対応。
ソウザが<飛剣・柊返し>を弾くことは想定済み。
俺は王牌十字槍ヴェクサードを見ながら……。
「違う。手功より目功という言葉は知っているか?」
「ふっ、その物言い、自分で剣を使っておいて己の槍に、風槍流のプライドに刺激でも受けたのか?」
と、ソウザは嗤う。
「さあな、お前の実力なら、俺の剣と槍の差異を理解できると思っただけだ」
「……鑑識眼を養えという意味か」
「好きなように考えろ――」
俺は左に横回転しながら左手に雷式ラ・ドオラを召喚。
その左手が握る雷式ラ・ドオラで<雷水豪閃>を発動――。
足下の濃霧が雷式ラ・ドオラに纏わり付く。
穂先の杭刃の水蒸気が、女神のような姿を模った。
その
ソウザは紫色の魔槍を掲げたが、
「ぬお――」
紫色の魔槍と衝突し逸れた<雷水豪閃>の一閃は、ソウザの太い腕と上半身の一部を切り裂く。
血飛沫が舞う中、両手から武器を消去――。
ソウザは、怯んだが、紫色の魔槍を落とさない。
その紫色の魔槍に魔力を通す。
また魔槍の形状を変化させつつ、その形を変えた魔槍の穂先を俺に向けてきた。
魔槍の穂先から派生した幾重もの刃が湾曲しつつ刃の群れとなって飛来。
直ぐに右手に魔槍杖バルドークを召喚――。
左手に魔槍グドルルを召喚――。
俺も我流の二槍流を展開しつつ<導想魔手>で――。
湾曲した刃の群れを受けては爪先半回転で、飛来する刃の群れを避ける。
その湾曲した刃の攻撃をすべて避けた直後。
ソウザは、幾重にも派生した刃の群れを従えるように魔槍の中に収斂させて、防御の姿勢となった。
そのソウザに<双豪閃>――。
嵐雲の穂先が頭部に向かう――。
薙刀の穂先が下腹部に向かう――。
二つの穂先がソウザに向かう。
防御を意識したソウザは紫色の魔槍で<双豪閃>の初撃を防ぐ。
火花が散った。
「――重い、槍の連打だな……」
構わず、続けて魔槍杖バルドークの<豪閃>。
魔槍グドルルの<豪閃>。
再び<双豪閃>――。
ソウザの紫色の魔槍と体の一部を削りに削る。
火花と血飛沫が舞った。
傷を受けたソウザだが、反撃に紫色の魔槍を振るっては<刺突>系の技を何度も放ってくる。
俺とソウザは、何合も打ち合った。
一旦――退いて二槍流の構えで、カウンターを待つ。
二槍流のソウザは誘いに乗らず。
俺を睨むソウザは片頬を上げて嗤う。
俺との戦いを楽しんでいるようだ。
ま、俺も楽しんでいるが。
わざとらしく両手を無手に。
訝しむ表情を見せたソウザに向けて無手のまま前進――。
ワザと左手を上げ、掌に古竜の短剣を召喚。
直ぐに、その古竜の短剣を消す刹那、イモリザを意識――。
右腕の肘辺りから第三の腕を伸ばす。
続けて、「なんだァ?」と、俺の第三の腕を注視するソウザ。
イモリザの第三の腕はフェイクではないが、フェイクと同じ効果を得た。
そして、右手に魔槍杖バルドークを召喚。
左手に独鈷魔槍を召喚――。
その左手に魔力を込める。
直ぐに独鈷魔槍の両端からブレードが伸びた。
戦闘型デバイスの上に浮かぶ小さいガードナーマリオルスが反応している。
その間に――。
イモリザの第三の腕が握る聖槍アロステで<光穿>を繰り出した。
ソウザは鬼気迫る表情を浮かべた。
第三の腕が握る聖槍アロステの<光穿>に反応。
ソウザは右手が握る魔槍を斜めに出して十字矛の<光穿>を受けきった。
「く、重ぇし、光を内包した槍技に、二槍は布石で三槍かよ!」
と、発言。
しかし、ソウザはさすがだ。
第三の腕が握る聖槍アロステの<光穿>を受けきった。
だが、
「……布石は色々と用意するから意味がある――」
「な!?」
刹那――。
《
ソウザは、突然の無詠唱の魔法に面喰らった。
「ぬあ――」
ソウザは、左肩に《
――成功。
集中が途切れたソウザ。
紫色の魔槍の防御が緩む。
が、念のため右手首から<鎖>を射出。
<鎖>に反応したソウザは紫の魔槍を<鎖>に衝突させてきた。
その紫色の魔槍に<鎖>を絡めて、<鎖>を引く。
「ぐ――」
体勢が崩れたソウザ。
俺は右足の踏み込みから――。
独鈷魔槍の<塔魂魔突>を繰り出す。
――左手一本が槍と化すような基礎秘伝突き。
『八極魔魂秘訣』の『一の槍』の技術だ――。
「――ぐあぁ」
伸びきったソウザの右腕を貫くことに成功。
<鎖>を消去、紫色の魔槍も落ちた。
――よし。
続けて、もう一つの魔槍を構えるソウザ目掛けて――。
<
衝撃波をソウザに喰らわせた。
片腕が握る魔槍で防御しているが、もう、今までのような防御力はない。
緩んでいる――。
俺は魔槍杖バルドークに血を纏わせる。
「――カカカッ」
「ングゥゥィィ」
魔槍杖バルドークと呼吸を合わせる
刹那、<刺突>のモーションを取る。
そう、必殺技に近い<女帝衝城>を繰り出した。
俺の血を触媒に――。
血の茨と魔槍を連れて纏う女帝槍レプイレスさんが、二振りの魔槍を振るいつつ出現した。
魔槍を抱えてソウザに突進――。
女帝槍レプイレスさんは、茨と魔槍の群れで、小さい城を形成。
ソウザは紫色の魔槍の形状を変化させて刃の群れを一瞬で造るが遅い。
ソウザの体は、その魔槍の群れに呑まれて、木っ端微塵に破壊。
紫色の魔槍も、一瞬で何百という魔槍の連続した<刺突>のような攻撃を受けて破壊される。
ソウザの背後にいた闇ギルドの面々も、女帝槍レプイレスさんが持つ二振りの魔槍と、従えているような魔槍の群れによって次々と貫かれていった。
凄まじい広範囲攻撃。
濠の底に槍の罠を備えた小さい城が、その濠を前面に出したように突進する攻撃だからな。
一部の向かいの建物を破壊。
幸い、一般人は避難している。
が、【魔塔アッセルバインド】の事務所に迷惑をかけてしまった。
今後は市街地で使うのは止すか。
女帝槍レプイレスさんは、血濡れた魔槍の群れを従えつつ足下に茨道を生成。
闇ギルドの一隊を屠り続けた。
その女帝槍レプイレスさんが振り返る。
怒ったような表情を浮かべた瞬間――。
俺の周囲に残る霧を蒸発させた。
『弟子よ、妾を愛用するとは愛があるな。そして、この間より威力と精度があがった。中々の<女帝衝城>である。が、水神アクレシスにセイオクスなぞ、使うでない――』
女帝槍レプイレスさんが不満そうな思念を寄越すと、茨を備えた魔槍の一つが、俺の左手の独鈷魔槍を突いてきた。
そして、嗤い声を響かせながら――。
周囲の血飛沫をマント代わりに全身に吸い込むと消える。
闇ギルドの兵士の一部は恐慌状態。
強者は沈黙しつつ防御を優先。
俺は皆に、
「――皆、強者と、その部隊を倒した」
「ん」
「エヴァは守りを意識さね――」
「分かってる、でも――」
「――シュウヤ様、左のリズさん側にも敵がいます」
「数が多くて凄腕も何人かいる――」
「ご主人様、右手から増援が――」
低空飛行状態のヴィーネの指摘通り。
そのヴィーネは翡翠の
――光線の矢を放つ。
ユイとレベッカに向かった敵の額を、その光線の矢が貫いた。
勝利の余韻もなく、わらわらと増援が続く。
敵の闇ギルドの人員が見えた。
飛翔するヘルメが氷礫を出した。
その増援を足止め。
「にゃごあぁぁ」
左側で戦うリズさんたちのほうか。
ヒューイに傷をつけた存在は倒したのかな。
すると、俺たちを囲うように集結しつつある敵の増援が、
「三番隊が全滅!?」
「――大魔術師がいるぞ!」
「魔槍使いだ――」
二つの得物で飛来する矢を弾く。
左手首から出した<鎖>で大盾を作ってエヴァたちを守った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます