六百五十九話 ゾルディックの体内迷宮

 ガス様の鑑定能力で海ドラゴンの名前を教えてくれた。

 属性も、ある程度の情報が事前に分かったし、便利だ。


『やりおるな、まっくろ黒すけガス龍!』


 沙が興奮しながら思念を寄越す。

 俺はヘルメを見ながら、


「ヒューイ・ゾルディックか。モンスターの名前とは思えない。もしかしたら、巨大な魔素が二つあることと、その名は関係があるかもな」

「ヒューイとゾルディック。二つの別個の存在が、一つの巨大怪物の中に棲息しているから、『二つの魔素がある』という予測でしょうか」

「そうだ。ヒューイ・ゾルディックの頭部が氷山の一角的な、体長がゴジラ級の大きさだった場合の推測だがな。または、外側の筋肉に近い内臓の類が発する魔素と、内側の心臓に近い内臓の類が発した魔素が、分かれて反応を示しているだけかも知れないが」

「はい、閣下がフォロニウム火山で倒したドラゴンの体内にあった動く魔石を心臓部とした、火の精霊的な強さを持ったメガロンのような存在が、ヒューイ・ゾルディックなのかも知れません」

「ありえる。まぁ内側の大きい魔素の反応が、心臓部と予測はつく」

「はい」

「主の予見は大概は当たる」

「外側は巨大な城よりも大きいですし、どちらにせよ、奥の心臓部が弱点でしょう」


 皆が俺とヘルメの言葉に頷く。


「素晴らしい知見。僅かな情報と魔力の流れだけで、そこまで把握できるか」


 黒い龍ことガス様が感心しながら語るが、普通はそう考える。

 それとも魔素の動きを操作して、わざと一カ所に魔素を集中させた囮……って、モンスターがそんな武芸者的なことはしないか。


 そして、ヒューイだけならなんとなく人型の職の神レフォトが好みそうな名前だ。

 しかし、サザナミか……群島諸国と関係したモンスターで、災厄級。

 やはり、最初に予想したように、地下にハイム川のような巨大な大河があるんだろうか。


 そういえば、俺が転生して地下を放浪していた頃……。

 グランバから逃げていた時、巨大な地下水脈があった……。

 

 あのような地下の大水脈があるのかもなぁ。

 ロマンがある。その大怪物はまだ来ない。

 

「……まだ、そのヒューイ・ゾルディックは上に来ないし、皆と合流しようか」

「分かった」


 坂道を上がると、仲間の気配を察知。

 黒沸騎士ゼメタスと赤沸騎士アドモスだ。

 黄黒虎アーレイ白黒虎ヒュレミと細身のヴェハノもいる。

 中衛に汎用戦闘型アクセルマギナ。

 後衛に<従者長>ママニ。


「ニャア」

「ニャオ」

「閣下ァ」

「帰還しましたぞ!」


 沸騎士たちは傷が多い。

 骨剣と骨盾にはリザードマンの死肉がこびりついていた。

 活躍してくれたと分かる。


 自然とラ・ケラーダの仕草を取りつつ、


「――おう。黄黒虎アーレイ白黒虎ヒュレミに沸騎士たち、ありがとう! 沸騎士たちは魔界に帰還してくれ」

「「承知」」


 沸騎士たちは互いの骨盾をぶつけ合う。

 骨盾をぶつけ合った沸騎士たちは音頭を躍るように骨剣を構えつつ消えた。

 星屑のマントが煌びやかに点滅。


 闇の獄骨騎ダークヘルボーンナイトも光る。 

 すこぶる格好いい消え方だ。


「魔界セブドラという次元軸を捉えることが可能とは……魔道具は不思議ですね」


 アクセルマギナがそう発言。

 そういうアクセルマギナも不思議だと思うが。


 銀河騎士マスターのアオロ・トルーマーさんが協力し、ナパーム統合軍惑星同盟の優秀な魔科学者の集団と、その中でも一際秀才のフーク・カレウド博士が造り上げた簡易AIが、アクセルマギナだ。

 しかし、そんな優秀なアクセルマギナといえど、さすがに俺の精神と繋がる闇の獄骨騎ダークヘルボーンナイトの機構の分析はできないようだ。

 ま、一旦壊れたアクセルマギナなこともあるか。

 ガードナーマリオルスが修理に成功したお陰で、再起動が叶った彼女でもあるわけだし。

 んだが、OSの背景に映る綺麗な宇宙銀河にも意味があると、自身も成長すると、アクセルマギナは語っていた。マスドレッドコアを得て、その言葉に嘘がないことを自らの成長で証明したことになる。


 そして、魔石を納めてもらえるアイテムといい『ドラゴ・リリック』と『アウトバウンドプロジェクト』のことも含めて、アクセルマギナの成長にも大いに期待ができる。

 

 それに魔界セブドラの次元界と、この惑星セラがある宇宙の次元界は近いといっても、次元と次元の間には狭間ヴェイルがあるのだから、詳細の解析は難しいだろう。

 それだけ俺の魔力と融合した闇の獄骨騎ダークヘルボーンナイトが特殊中の特殊と分かる。

 黒沸騎士ゼメタスと赤沸騎士アドモスも過去に、魔界セブドラに楔を打って得た、俺との絆のことを語っていた。だから、アクセルマギナは、不思議だと、この闇の獄骨騎ダークヘルボーンナイトを見て語ったのかな。次元界を跨がる高度な計算は、それこそ、機械の神デウス・エクス・マーキナ様にお祈りしないと無理だろう。

 

 その汎用戦闘型アクセルマギナは縁に移動。

 縁のぎりぎりに片膝を突けながら頭部を下に傾けて、滝壺を覗く。

 銃口を下に向ける姿か。

 そして、魔機械の腕から僅かに漏れる橙色の魔力光と白銀色の魔力粒子……。

 あの魔機械の腕はすこぶる格好いい。

 

 やはり宇宙軍特殊部隊だ。


 そんなアクセルマギナを見ているとヴェハノが、


「シュウヤ様、ジョディ様とヴィーネ様に何度も命を救われました」

「そうか、無理をしたな?」

「……はぃ」

 

 ヴェハノはそう言うと肩を震わせる。


「まぁいい、今後は気をつけてくれ」

「ニャア」

「ニャオ」


 黄黒虎アーレイ白黒虎ヒュレミが寄ってきた。

 二匹は、俺を押し倒す勢いだ。両前脚を腹に押し当ててくる。

 そんな二匹の背中に手を回した。

 背中の毛を確認……『よしよし』と、抱きしめる。

 この柔らかい毛のモサモサ具合の感触は、たまらない。

 黄黒虎アーレイは少し柔らかめの毛だ。

 抜け毛が凄いが、地肌も、ぬこぬこっという特徴的な柔らかさを持つから癒やされるなぁ。

 白黒虎ヒュレミのほうは、硬めの毛。

 少し艶があって、さらさらして、イイ感じ。

 それでいて、地肌は意外に柔らかい。

 筋肉は少しゴワッとしているが、非常に揉み揉みしがいがある感触だ。

 そんな大虎二匹の湿った鼻の息は、荒い。


『ふがふが』、『ふがふが』、『くんかくんか』、『きになるにおい、なりお~』、『このにおい、たまらんち』、翻訳するとこんな感じだろうか。


 匂いを嗅ぐことを止めた黄黒虎アーレイ白黒虎ヒュレミ

 二匹は、俺の足下で香箱スタイルを取ると、じっと、見上げてくる。

 可愛いが二匹は、俺の新しいヒトデ防護服が気になるようだ。


「ガォ」


 と、短く鳴いた琥珀。その琥珀はママニの肩に乗っている。

 ハルホンクから得た琥珀が装着中の特殊ハーネスは、ママニの背中と首の防具の金具と繋がって、ママニ専用の可愛い装備品に見えた。

 その琥珀を肩に乗せたママニは片膝で階段を突く。頭を下げた。

 肩の琥珀が揺れると「ガォ!?」と驚いた琥珀は前足を振るい、ママニの首にパンチを繰り出した。

 

 白髭をピクリと動かしたママニは気にせず、


「――ご主人様。リザードマンの集団はわたしたちが退いたところを狙い追撃をかけてきました。しかし、ジョディ様とヴィーネ様が神獣様と一緒に反転、リザードマンの追撃部隊を逆に潰し中です」

「分かった。血文字で聞いたが激戦の最中だったはず。ママニ、見事な撤退と戦術だ」

「ありがたき、お言葉――」

「ガォ」

 

 琥珀も健気に返事を寄越す。

 可愛い琥珀ちゃんだが虎獣人ラゼールのママニと相性が良いと分かる。


 教団セシードは虎獣人ラゼールの一部が、大切にしていた宗教。

 その宗教が崇める神虎セシードを守るためにあるような存在が、魔法の虎の琥珀だったようだからな。

 その琥珀だが、ハルホンクから得たハーネス以外にどんな能力があるんだろう。


 神社を守る狛犬的な存在?

 一瞬、ナナの扱う〝ブリちゃん〟こと、闇の狛犬を思い出すが……。


 ナナは、恐王ブリトラと悪夢の女神ヴァーミナの力を宿す特別な個性ある子供だから、比べるのは違うか。


 <ルシヴァルの紋章樹>の力を得た琥珀。

 光魔ルシヴァルの力は伝わっていると思うが、未知数だ。その琥珀はママニの髭と黄色い体毛に前足を伸ばして、可愛くじゃれていた。

 

 ママニは首がくすぐられたように体を震わせる。

 そのママニは「ぁぅん」と、かゆみを我慢したように身を悩ましく揺らしてから、ヘルメが抱く蛇人族ラミアの赤ちゃんを見た。


「その子が……」


 と、発言した刹那――。

 坂道が揺れた。


「――グオォォォォォ!!」


 下から強烈な咆哮音が響く。


「――閣下、ヒューイ・ゾルディックの海ドラゴンが、岩と壁と坂道を崩しつつ上昇してきます」


 ヘルメがそう告げる。

 上がってくるとは思ったが……。

 ヒューイ・ゾルディックの大怪物は滝壺を崩壊させる勢いか。


 そのヘルメは爪から生えた<珠瑠の紐>で魔法の揺り籠のようなモノを作る。

 瞬く間に蛇人族ラミアの赤ん坊を、その揺り籠の中に入れて赤ん坊の保護を強めた。


「ママニ、滝壺にヒューイ・ゾルディックって名の大怪物が封じられていた。ここまで退いてもらって悪いが、その琥珀を連れて、相棒たちのほうに一旦戻ってくれ。上がってくるヒューイ・ゾルディックは俺たちが倒す」


 俺の言葉に頷いたママニは縁に移動して――。

 滝からの水飛沫を払うように、額に手を当てつつ、滝壺を覗く。

 

 地響きと揺れが凄い。

 下を見ずとも、ヒューイ・ゾルディックが強烈な勢いで滝壺を壊しつつ上がってくると分かる。

 俺の予想通り、ママニの表情は強張った。


 そのママニは振り返って、


「……遺跡ごと破壊しそうな勢いです」

「あぁ、ヴィーネには血文字で、待ち合わせ場所を『遺跡の外』か、または、お前たちが最初にリザードマンの勢力と戦った『柱が並ぶ中央広場』にして、そこで落ち合おう、と、伝えてある」

「はい。では、そのヴィーネ様と神獣様のお側に戻ります。ビア、ご主人様の指示に従うのだぞ?」

「ふん! ママニよ。先生から血獣隊隊長を任されたからといって、偉そうに指示を出さなくとも、それぐらいは分かっている!」


 ママニはビアの荒々しい口調を聞いて、すぐに、「ふっ」とした微笑みを見せる。

 そして、涼し気な顔で目を細めつつビアに対して頷いた。


 涼し気ってよりは、血獣隊としての仲間に対する顔か。


 女性の虎獣人ラゼールのママニ。

 毛が多くて表情の把握は難しい。


 そのママニはチラッと視線を寄越した。

 ママニの顔色から『ここにビアと残って戦いたい』という印象を抱かせる。

 

 が、


「ガォ?」


 元気な琥珀が鳴く。

 ママニは、自身の肩で元気に鳴いた琥珀を見て、小さく頷く。

 虎獣人ラゼールとしての、口髭が揺れた。


 ママニは小声で「琥珀様、わたしが御守り致します」と発言していた。


「ガォォ、ガォ」


 琥珀はママニに返事をすると、その琥珀は魔力を発しながらハーネスを自動的に緩める。

 琥珀は、よちよちと歩いてママニの頬から首下に向け、小さい頭部を上下させて、自身の魔力を帯びたヒゲから胴体までを擦り当てていった。そのまま背中から尻尾まで、体全体で『大好き』と表現する仕草は、ネコ科動物と同じで、とても可愛い。


 ママニは、その可愛らしい琥珀を見て微笑んだ。


 俺も自然と笑顔になった。

 優しげな表情を作るママニは、頷いてから視線を寄越すと、


「……では、ご主人様、のちほど」

「おう」


 戦場に向かうように表情を引き締めたママニは踵を返す。

 背中から虎獣人ラゼールらしい毛が逆立つ。

 血のオーラも出した。

 琥珀から出た魔力もママニの血のオーラに加算したかのように、ママニの<血魔力>が倍増していく。

 放射状に迸る血のオーラで、天井から降る水滴を吹き飛ばす。

 倒れた石柱を踏み潰す勢いで高く跳躍――。

 跳ぶママニはリザードマンの死体が並ぶエリアを軽やかに越えて広間を躍動感ある走りで駆けた。

 

 普段見せる忍者系の走りとは違って力強い。

 ラーマニ族の特異体継承者の力を使った?

 成長したってことか。髭から虎を出した力以外にもある?

 そのラーマニ部族からピレ・ママニの部族に帰依をし、ママニの部族に纏わる力を得たママニ。

 

 どういう理由でピレ・ママニのママニを引き継いだのか。

 まだ、はっきりとは聞いていない。


 が、その件と関わると予測する傭兵隊長から奴隷になる下りでの〝裏切り〟というキーワードが彼女の心に僅かな重しとなっていることには気付いている。

 光魔ルシヴァル<従者長>として、ママニは俺の家族となったから、彼女の重しを少しでも……。

 

 いや、これは余計な世話か。

 彼女自身が口にしない以上無理強いはしない。

 

 時が自然に癒やすこともあるだろう。


 そんな豪快さと繊細さを合わせ持つ虎獣人ラゼールのママニ。


 その光魔ルシヴァル<従者長>ママニの走りに魅了された。


 んだが、魅了といえば、アクセルマギナだ。

 黒と橙色が基調のルシヴァル宇宙軍の戦闘服って印象のアクセルマギナ。

 右尻を隠す漆黒のスカートもいいが、やはり、魅力度では、左尻と太股の生足を防御するプロテクターが一番か。


 そのアクセルマギナに向けて、


「アクセルマギナ、下のヒューイ・ゾルディックと戦ってもらうかもしれないが、今は右腕の戦闘型デバイスに戻れ」


 と、指示。

 アクセルマギナは「ハッ」と気合い声を発して、下に向けたP90と似た未来的な銃を回転させつつ振り向く。

 体勢を整えて敬礼すると、体から魔力粒子を発生させた。

 魔力粒子が包むアクセルマギナは笑みを浮かべて、


「今、戻ります」


 切ない声を響かせて魔力粒子となったアクセルマギナ。

 幻想的に消えゆくアクセルマギナの姿に、ある種の儚さを感じたが、無事に戦闘型デバイスに収斂。

 ゼロコンマ数秒も経たず、風防の上で敬礼を行うアクセルマギナが出現。

 投影されたアクセルマギナの足下には、小さいガードナーマリオルスもしっかりと映る。一緒にチューブで敬礼らしいポーズを取った。


 俺は、その間に――。

 お座りしながら尻尾を振っていた黄黒虎アーレイ白黒虎ヒュレミに近付いた。


 二匹の頭を撫でてから、


「――よし、お前らも魔造虎に戻るんだ」

「ニャア」

「ニャオ」


 俺の掌を甘噛みする黄黒虎アーレイ白黒虎ヒュレミ

 二匹はそのまま魔造虎に変身した。

 その魔造虎を戦闘型デバイスが自動的に格納。

 

 戦闘型デバイスの風防の上で魔造虎は可愛くアイコン化。

 アイコンは猫の陶器人形のフィギュアだ。

 ヒナさんとサナさんが見たら『トレビアン・ヌコ!』と発言するぐらいに可愛いかもしれない。


 んだが――。

 そんなアイコン化したOS機能は楽しんでいられない。

 ヴェハノにも戻ってもらおうか。

 巨大化した相棒に乗ってもらったほうが安全だ。


「ヴェハノも撤退してくる相棒たちのところに戻ってくれ」

「はい、では――」


 細身のヴェハノもママニの後を追う。

 

 さて、下の大怪物、海ドラゴン、エイリアン海竜、災厄級、喩えは無数にあるが……。

 ヒューイ・ゾルディックの気配が強まった。


 ヒューイ・ゾルディックは滝壺を破壊している。

 リザードマンの砦がある、この蛇人族ラミアの故郷の一部を壊す勢いだ。

 下から迫力ある振動を響かせて迫る大怪物、ヒューイ・ゾルディック。


 このプレッシャーを備えた魔力の質から……。

 ヒューイ・ゾルディックが、相当、ヤヴァい部類と認識。


「――ビア、ヘルメ、用意はいいか?」

「はい」

「承知した!」

「よし、まずは頭部か……戦うことになったら俺はヒューイ・ゾルディックの心臓部を目指す。二人は頃合いを見て、俺が行う戦いに参加を決めろ――」

「主――」


 崖から跳ぶ。

 二人の返事を背中越しに感じた――。

 慣性で一気に急降下――。

 が、<導想魔手>を蹴って空中で方向転換――。


 忍者染みた機動で反対側の壁を走りつつ――。

 坂道の縁に着地。

 そのまま坂の縁から、滝壺目掛けて跳ぶ――。


 この星にも重力はあるから――慣性で急降下――。

 滝と岩を崩壊させつつ上がるヒューイ・ゾルディックの頭部を見定めた。

 

 ヒューイ・ゾルディックこと、ゾルディックは、その頭部の形をシャープに尖らせる。

 ゾルディックの頭部の面積は巨大。

 だから尖っても太い――。 

 俺は<鎖>を岩壁に刺した。

 <鎖>を手首に収斂させつつ体を岩壁に運ぶ。


 一旦、その岩壁に足を突けて<導想魔手>に着地。

 <鎖>を消去しつつ下を覗く。


 ゾルディックは口を閉じている。

 リザードマンの死体を喰った時に見せていた拡げた口だと、滝壺を構成する岩が邪魔で上がりにくくなると判断したのか?

 すると、その細くなった頭部の周囲に半円形の魔法陣を幾つも発生させた。

 更に、地肌から無数の突起物を出すと、周囲に生み出したばかりの魔法陣を下から突き刺した。突起物がぐにょりと膨らみ魔法陣を光らせつつ先端から魔弾を射出。

 卍の紋様を出す魔弾を連続的に射出してくる。

 魔弾の狙いは俺か――<鎖>を消した。

 <導想魔手>を蹴って跳んで宙を飛翔しながら飛来する魔弾を避けた――。

 卍の紋様を発した魔弾に追尾能力はない――。

 

 身を捻りつつ、左手を下に伸ばし――。


『わくわく』

『毎回だが、残念――』


 即座に――。

 《凍刃乱網フリーズ・スプラッシュ》を繰り出す。

 左手の先の空間に水色の紋章魔法陣が生成。

 

 その紋章魔法陣から凍った刃が無数に出現し、瞬く間に縦と横に重なると――氷の画一的な網目模様が美しい《凍刃乱網フリーズ・スプラッシュ》となった。

 

 その《凍刃乱網フリーズ・スプラッシュ》の巨大な氷の網は、飛来する魔弾と次々と衝突するが、勢いを逆に増して、ゾルディックの頭部と衝突。

 ゾルディックの頭部は、瞬く間に、さいの目状の模様となった。さいの目状の氷の傷は破裂し、内部の口内と歯牙だった凍ったモノが周囲に飛び散った。


 ゾルディックの上昇する勢いも止まる。

 魔法威力が上がった。

 俺の成長と新防護服のヒトデバージョンの効果もあるだろう。


 しかし、凍り付いた頭部の切れ目から触手染みた肉腫が生えて肉のようなモノが再生していく。

 

 回復が速い――が、これからだ。

 そのゾルディックの頭部に着地するや否や――。

 <血鎖の饗宴>を足下に生成し、登山用の爪があるアイゼン装備を超えた血鎖の爪で、ゾルディックの頭部を削りに削る。

 

 ――細かな血肉と骨が散った。

 

 目指すは、もう一つの巨大な魔素の反応だ。

 まだまだ遠いが、ゾルディックの心臓部と予測――。

 果たしてどんなモノだろう。

 

 意識のある魔石か?

 それとも魔人か。

 ――エイリアンか。


 だとしたら、まさに『未知との遭遇』だ。


 あ、今、俺が削っている内臓的な存在は宇宙船だったりして?


 なわけがないか。

 上は、頭部だったしゾルディックの巨大な胴体だろう。


 このまま魔素の反応が強い体内を目指す――。


 が、《凍刃乱網フリーズ・スプラッシュ》は内部深くまでは浸透していなかった。

 

 黒っぽい血飛沫が噴き上がる。


「グァァァァァァ」


 震動と同時に強烈なゾルディックの悲鳴が谺する。

 同時に周囲のゾルディックの臓器が変形。


 肉か、骨か、異質な壁のような内臓が押し寄せてくる。

 内臓から出た触手と、先が尖った骨刃も迫った。

 下からも硬そうな肉厚の床が盛り上がってくる。 


 三百六十度の方向から俺を押し潰す気か――。

 まずは先に迫る触手の群れと骨刃だ!

 ――<血鎖の饗宴>で迎撃。

 血鎖が貫いた触手は青白い炎を発して散る。

 血鎖は骨刃を喰らうように砕き破壊。


 激烈な血飛沫音が耳と脳に谺する。

 

 が、異質な音が血飛沫音を打ち消した。

 空気圧のような音の正体は壁?


 壁の出っ張りか。

 フジツボ的な壁の出っ張り孔から肉の礫を飛ばしてくる。

 ブッシュッ、ブッシュッ、ブッシュッ、ブッシュッ、ブッシュッ!

 と、肉鉄砲祭りだ。

 俺は<血鎖の饗宴>を操作しつつ――。 


 <鎖型・滅印>を発動――。

 

 両手首の<鎖の因子>を活かす。

 両手首のマークから出た<鎖>という<鎖>が血鎖の間を縫うように突出する。

 

 マシンガン的な連続射撃の<鎖>が飛来する肉の礫を捉えて貫く。

 肉鉄砲を射出するフジツボ的な出っ張り孔を持つゾルディックの内臓の壁も貫いた。


 その壁は俺を潰そうと近付いてきた。

 ブッシュッ、ブッシュッ、ブッシュッ――。

 と、うるさい――。

 《氷刃フリーズソード》で、そのブッシュの壁を斬る――。


 続けて左右の手にムラサメブレード・改と血魔剣を召喚。

 《氷刃フリーズソード》の軌跡を追うように――。

 

 ブゥゥンとブゥゥゥン――。

 と、心地いい音が響くブレードを振るいまくった。

 

 青緑色と赤色のブレードが、迫る肉壁の内臓を切断――。

 切断面から血飛沫を噴出させた内臓の壁は湾曲しながら離れた。


 が、すぐに反対の方向から、またブッシュ壁と同時に飛来する肉の礫。

 新ヒトデ防護服の背中に、肉の礫が衝突。

 少し痛かったが些細なモノ――。

 翻しつつの逆袈裟斬りの血魔剣で背後の肉の礫を斬り落とす。


 肉の礫が下と左から迫る。

 <飛剣・柊返し>を繰り出して対処。

 壁を切り開いた先の空間に移動――。

 俺を追うように飛来する肉の礫。


 すかさず――。

 <超能力精神サイキックマインド>を発動。

 肉の礫を衝撃波で吹き飛ばす。

 その吹き飛んだ肉の礫目掛けて――。

 <光条の鎖槍シャインチェーンランス>で追撃。


 再生をさせるつもりはない。

 肉の礫を出すフジツボ的な壁を光の網で押さえた。

 が、今度は右下のほうから巨大な肉塊が飛来。

 同時に<光条の鎖槍シャインチェーンランス>の当たっていない内臓の壁が押し迫ってきた。

 とりあえず飛来する肉塊が先として――<鎖>では無理か。

 <光条の鎖槍シャインチェーンランス>か迷ったが――。

 両手から武器を消す。

 腰と背中から<血鎖の饗宴>を出す。

 血鎖をスラスター的な推進力として活かす――。

 ――血鎖の加速を得た状態で右回し蹴りを敢行――。

 巨大なサッカーボールのような肉塊に蹴りを喰らわせた。

 肉塊を潰すように吹き飛ばす。

 その吹き飛んだ肉塊と衝突した壁は勢いが止まったが、蹴りの回転中の俺に違う方向から迫る肉腫――形はハンマー、体を反らし、そのハンマー肉腫を寸前で、避けた直後に巴投げの要領で体を反らした勢いを乗せたオーバーヘッドキックを、そのハンマー肉腫に喰らわせた。

 

 ハンマー肉腫をアーゼンのブーツの甲が捉えた。

 ズシュッと潰れた異音が響く

 よしっ、ハンマー肉腫を破壊――ハンマー肉腫だった肉の飛沫を体に浴びつつ――。

 反転しながら魔槍杖バルドークを右手に召喚――。


 次は分厚い内臓の床だ。

 ここをぶち抜く――。

 

 その床の内臓に向けて、魔槍杖バルドークを振るい下げた。

 床のような分厚い内臓に、嵐雲の矛が突き刺さる。


 しかし、強い反動があった。

 ドォンと鈍い音が響くと、衝撃波が出た。

 周囲の肉厚的な内臓の床が衝撃を受けたように撓む。


 この分厚い内臓は固い。

 ――魔力を魔槍杖バルドークに込めて――。

 固い内臓の床を蹴って真上に跳躍しつつ――。

 丹田に魔力を溜めつつ一気に魔力を解放。

 

 そして、再び魔力を魔槍杖に流す。

 魔槍杖バルドークを持つ右腕を引いた。

 脇を締めて左手を前に伸ばす――。

 <刺突>のモーションから――。

 真下の分厚い内臓の床に向け――。

 <闇穿・流転ノ炎渦>を繰り出した。

 闇の炎の渦が魔槍杖だけでなく右腕にも巻き付いて、腕が痺れたが構わねぇ。

 闇の炎の渦の力で螺旋力が増した魔槍杖バルドークの強さを活かす形の嵐雲の矛が、見事、分厚い内臓の床をぶち抜いた――。


 魔力溢れる魔槍杖バルドークの嵐雲の穂先から闇の炎が盛大に迸る――。

 手と甲にも闇の炎は絡んで昇った。

 既に巻き付いていた闇の炎の勢いを加算させるように、その闇の炎の渦は、龍が滝を昇る要領で肘から二の腕に蜷局を巻きつつ肩から、闇の炎が迸った。


 俺の右半身では無数の闇の炎の渦が巻いていることだろう。

 音と感覚で、荒々しい闇の炎の動きが理解できた。

 

 よーし、孔が空いた。


「ングゥゥィィ!」


 ハルホンクも喜んだ。


「マスター、下に巨大なエレニウムストーンのようなエネルギー源を感知。心臓部かもしれません」


 アクセルマギナが反応。


「――回収できたらフォド・ワン・ユニオンAFVが解放できるかな」


 ――俄然やる気が増す。

 そのまま手術道具のコッヘルを想起するように<血鎖の饗宴>を扱う。


 孔の肉厚の組織を血鎖で燃やしつつ、蓋を開けるように肉の底を拡大する。

 その間に、足下からも<血鎖の饗宴>を出した。

 拡大させた孔に突入――。

 

 突入をスムーズにするため――。

 孔回りの肉を<血鎖の饗宴>の血鎖で削りに削り、肉壁を燃焼させた。

 右手の魔槍杖バルドークで<豪閃>を発動。


 孔を拡大させるように、横の血肉を<豪閃>で切り刻む。

 そのまま<豪閃>の勢いを得て体を駒のように回転させながら――。

 食道的な空間を切り開きつつ――。


 ゾルディックの体内を下へ下へと突き進む。

 同時に、魔竜王バルドークと奇怪フィナプルスとの激戦を想起。

 そんな大怪物との戦いと同じく――。

 視界は暗い。


 <神剣・三叉法具サラテン>で横にも孔を開けるか?

 とりあえず<闇の千手掌>を繰り出す。

 闇の巨大な掌底が、横の食道を拡大させる。

 肉厚な壁は、ボコッと音を立てて凹む。

 ま、このまま下降する。

 反対側には<超能力精神サイキックマインド>を発動。

 

 食道の一部に衝撃波をぶち当てた。

 ドゴッと鈍い音が響き血飛沫が迸る。

 

 すると――肉厚な食道の空間を過ぎた。


 広い場所に出た。


 ここは胃袋?

 怪物の体内の何処かだとは思うが……。

 

 ――すると――。


 頭部なしの複眼を胸に宿す大柄の怪物が出現――。

 奇怪フィナプルスの時と同じか?


 体内にモンスターは徘徊していた。

 このゾルディックの防衛機構のモンスター兵士だろうか。


「ビッシャーーー」 


 奇怪な音を出す。

 複眼から魔線の攻撃を放ってきた。

 <導想魔手>を蹴って飛翔――。

 

 その魔線を避ける。

 幸い、追尾性能はないが、俺を追う魔線。

 魔線が当たったところは溶けていく。

 エレ銃のような威力はないが、ビーム砲的な威力はある。


 さて、須く倒そうか。


 そう……『汝、須く寛大たれ、嘘偽りを述べるなかれ、生まれた星を愛すべし、いついかなる時も正義と善の味方となりて、不正と悪に立ち向かうべし』


 アオロ・トルーマーさんの言葉は覚えている。

 ゾルディックの大本の存在が、悪かは分からない。

 が……俺の黄金比バランスのマインドは、少なくとも、あの大柄兵士は敵だと訴えている。


 左手に神槍ガンジスを召喚――。

 右手の魔槍杖バルドークを消去。

 その神槍ガンジスに両手で魔力を込めて……。


 最大限の<投擲>を敢行――。


 オーバースロー気味に槍投げ選手のようなスタイルから<投擲>した。


 下の大柄怪物目掛けて突き進む神槍ガンジス。


 刹那――。

 太刀打の位置にある蒼い毛の槍纓が一纏めになって方天画戟に絡まる。


 穂先が蒼い光を帯びて、急に巨大化。

 おお、巨大な方天画戟とか格好いい。

 月の形をした両刃が輝く。

 意図してない変化だ。

 そのまま行け! 神槍ガンジス! 

 

 喰らえ――怪物!


 巨大な方天画戟風の神槍ガンジスの穂先が頭部なしの怪物の胸元を貫く。


 大柄の怪物を貫いて倒した神槍ガンジス――。

 新たな蒼い人口太陽でも、宙空に作り出すように、蒼い閃光を発した。


 ――よっしゃ!


 蒼い閃光が周囲の内臓世界を浄化するように爆発を誘発する。

 次々に連鎖爆発が巻き起こった。

 一気に視界が広がる。


 狭い場所で戦っていただけに爽快感があった。


『――器、見事。そして、巨大な魔素の反応が近い。何か魔法を発動したようだ』

『了解』


 沙に思念を返すが、離れていく神槍ガンジスが蒼い道標に見えた。


 あのままだと神槍ガンジスが回収できなくなる。

 その前に――。

 <超能力精神サイキックマインド>を意識。

 

 <鎖>は使わない。

 <超能力精神サイキックマインド>で神槍ガンジスを左手に引き寄せる。

 神槍ガンジスはクルクルと回転しながら戻ってきた。

 両刃の方天画戟と一体化した蒼い槍纓は、蒼い毛の飾りに戻っている。

 

 その神槍ガンジスを、左手で掴む前にアクセルマギナが回収。

 瞬く間にアイコン化する神槍ガンジス。


 神槍ガンジスのアイコンの槍纓は少しだけ形が変化。

 ――アップグレードの演出が細かい。

 すると、前方の世界が急激に狭まった。


 沙が言ったように、下の巨大な魔素を持つ何かが、魔法を発動したせいか?


 また、内臓の圧縮か、攻撃か。 

 まぁ、当然か。

 ヒューイ・ゾルディックの内臓世界を突進中だからな。

 ゾルディックのナチュラルキラー細胞が、異質な存在の俺を潰そうと躍起になっているんだろう。


 眼前にも肉腫が迫った。

 内臓が急激な勢いで再生している。


 が、構わねぇ。

 先に心臓部を叩く。

 まずは、『サラテンの沙、出番だ――』


 <神剣・三叉法具サラテン>――。


『――やっとか!』


 左手から出た<神剣・三叉法具サラテン>は目の前の肉腫をぶちぬく。

 そのまま実体化した大人バージョンの沙は、神剣を振るった。横から迫った肉壁を見事に両断。


 すげぇ切れ味だ。


 続いて、沙は俺をチラッと見て微笑む。


「<御剣導技>――」


 スキルを発動すると、その振るった神剣に軽やかに乗った。

 神気溢れる飛沫的な粒子を悩ましい体から発しながら神剣と共に突進していく。


 凄まじい勢いで内臓群を貫いていった。


 が、大人しく見ていられるほど環境は甘くない。

 俺のほうにも左から肉壁が迫った。

 

 俺は魔槍杖バルドークと神槍ガンジスを再召喚。

 直ぐに<双豪閃>――。

 そのままユイの<舞斬>を実行するように横回転。


 魔槍杖と神槍で肉壁を斬りまくる。

 <双豪閃>を終えても――。

 二槍流を示すように――。

 斬り下げ、斬り上げ――。

 <水月暗穿>を実行しては蹴り上げて浮いた肉壁を<豪閃>で処分。

 続いて、イモリザの第三の腕に聖槍アロステを召喚。

 三槍流で<双豪閃>、ぐるぐる回りながら周囲の肉壁を切り刻む。

 その回転終わりにも、突いては、回転しながら竜魔石を突き出した。

 隠し剣氷の爪を発動――氷の両手剣で内臓の壁を貫く。


 そのまま魔槍杖バルドークに魔力を込める。

 如意棒のごとく、伸びに伸びた氷の両手剣で、内臓の壁を遠のかせつつ斬る。


 内臓の壁を強引に、滝壺の岩に押し当てて削るように滝壺の岩ごと斬りまくった。

 足場に利用した<導想魔手>にも武器を出して四槍流に移行するか?

 と、考えたところで、イモリザの第三の腕が斬った肉壁を最後に、感触が弱まる。


 壁的な内臓からの攻撃が弱まった。

 回復が追いつかないか。派手に暴れたからな。


 難なく魔力の光を宿す図太い骨が密集した地帯に到達。

 

 しかし、このゾルディックは……。

 どんだけ大きいんだよ。

 気分はゾルディックの体内迷宮を冒険している気分だ。


 イモリザの第三の腕が握る聖槍アロステを消去。

 イモリザを普通の肉芽に戻す。

 

 その瞬間、骨魚のモンスターが大量に出現。

 更に、無数の歪な魔法陣が周囲に発生。


『沙、右側の骨魚は任せた――』

『ワハハ――器よ、妾を愛しておるか?』

『今は敵に集中しろ』

『ふん!』


 袈裟斬りを終えた沙は、一旦動きを止めた。

 俺に視線を向けてウィンクを寄越す。

 と、<神剣・三叉法具サラテン>としての力を示すように神剣を振るう――。

 その振るった神剣で<投擲>でもするのかと思ったが違った。振るった神剣から振動波を発生させて、その振動波の力で、宙空に骨魚の群れを縫い止めている?

 

 あのスキルは初見だ。


『器よ、見たか! これが、本物の、<さいきっくまいんど>である!』


 一瞬、膝から崩れそうになった。


『器様。今の動きと、敵を止めた霊気の技は『神仙燕書』に伝わる〝天地の霊気〟に部類する特殊スキルです』

『アァ、羅、妾が内緒にしていたことを!』


 羅が本当のことを教えてくれた。

 大人びた沙は、ひょうきん感溢れて、可愛かった。


 そのひょうきんで、じゃじゃ馬的な、美人さんの沙は心を弾ませる軽快な所作で神剣に乗ると、天地の霊気に関する内緒の技で動きを封じた骨魚たちに向けて、テンションの高そうな仕草のまま突進――。


 沙のサーフィン機動の<御剣導技>だ。

 見事に骨魚の群れを貫く。


 沙は、そのまま高波に挑むサーファー気分なのか。

 ゾルディックの内臓の壁を突き抜けた。

 また、滝壺の岩壁に向かう。

 神々の残骸でも発見したのか?


 と、思ったが――。

 神剣に乗った沙は宙空で華麗にターン。

 その機動はバレルロールのアクロバット飛行。

 反った高波を滑る一流のサーファーにも見えた。


 ――珍しい。


 が、少し残念か。

 岩に神剣が突き刺さる光景が見られず。

 大人バージョンの沙は、神剣に乗った状態。

 そんな美人な沙が、どんな仕草で、どんな反応で、突き刺さった神剣を抜くのか、どんな姿になるのか、見たかった。

 その刹那、


「――我の領域に侵入するとは何者か!」


 エコー掛かった声は、すぐ下からだ。

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