六百三十五話 ドナーク&ジクランの再来
イメージは<導想魔手>だが――。
<
刹那、ズキッと頭部に痛みが走った――。
グルドン帝国の兵士たちは<
――よっしゃ。
衝撃波としての範囲はせまいが<
無色透明の魔力波動か?
エヴァが扱う紫色の<念導力>のような色はない。
更に<銀河騎士の絆>と<
体から灰銀色の魔力粒子が迸る。
灰銀色の魔力粒子は小さいアオロ・トルーマーさんの幻影となって俺の体と一体化した。
刹那、頭部がズキッと痛む。
『――いいマインドじゃの。初見にも関わらず、己の一部を具現化しておる』
心にアオロ・トルーマーさんの声が……。
『マインドから溢れ出る優しき愛の水……あらゆることをありのまま受けいれる受容性の高いマインドじゃのぅ……実に素晴らしい生きた<
暖かい思念だ……。
更に、
『――褒美に、一千世代にもわたって継承されてきた深い銀河騎士の
幻影の小さいアオロ・トルーマーさんはローブ姿だ。
そのアオロ・トルーマーさんは片手を上げる。
小さい掌からライトニング? いや、魔力のしだれ柳が四方に出た。
魔力のしだれ柳は、兵士たちの体に絡む。
兵士たちは痺れたように動きが止まった。
銀河騎士マスターのアオロ・トルーマーさんの技か。
そのアオロ・トルーマーさんの姿は消えた。
途端に、兵士たちに絡む魔力の柳のような<
そして、<超翼剣・間燕>と違い、スキルの獲得はできなかった。
相性が悪い?
単に、精神や魔力といった能力が足らないのかもしれない。
俺の仙魔術か導魔術の技術が、まだまだ、低レベルということか。
しかし、<銀河騎士の絆>は凄い。
他の評議会の銀河騎士マスターたちの精神と繋がることが可能。
これからもアオロ・トルーマーさん以外の銀河騎士マスターたちの技が使える&習えるということか。が、リスクもある……鼻血が……耳からも血が……。
更に、こめかみ辺りがヒクヒクとする。
血管が切れたか? 青筋もあるかもしれない。
ま、構わねぇ。
俺は光魔ルシヴァル――血はすぐに回復する。
すると、魔力の糸のようなモノが絡んでいる兵士が、
「――魔力の糸だと!?」
と、魔察眼が使えるようで、叫ぶ。
要するに<
一種の――サイコキネシス系の能力か。
「……魔技使いでもあるのか」
「この震刃ナイフで……切れたが、光糸使いのような技もあるとはな」
兵士の一部は<
正式な<
ヘルメの<珠瑠の紐>のような麻痺させる効果もなし。
拘束力も弱いのか、外れ掛かっている兵士もいた。
しかし、気を失った兵士もいる。
最初の<
衝撃波としての威力だろう。
俺は、そのまま右手のムラサメブレード・改を――。
拘束した兵士目掛けて<投擲>――。
その<投擲>した鋼の柄巻と、俺自身の魔力の繋がりを強く意識した――。
<
<
直に鋼の柄巻を握らなくとも――。
飛翔する鋼の柄巻からは青緑色のブレードが出現したままの状態だ――。
そのムラサメブレードが兵士の胴体に突き刺さった。
「――ぐああ」
俺は掌を翳す。
<
ガトランスフォームの掌が光った。
前からあるリパルサーのようなモノ。
兵士の胴体に突き刺さったムラサメブレードは――。
超伝導磁石に引き寄せられるが如く、俺の掌に戻った。
形が変化した鋼の柄巻の感触を確かめつつ、新しいボタンは押さない。
ブゥゥンと音を立てたブレードを見てから、前傾姿勢で突進――。
その右手のムラサメブレードを強く振るう――。
兵士に絡む魔力の糸が出ている<
拘束状態のグルドン帝国の兵士の首に青緑色のブレードを吸い込ませた。
――兵士の首を刎ねる。
次は左の集団――。
左手の血魔剣の切っ先を伸ばしつつ<
ズキッと頭部にダメージがきた。
同時に<
倦怠感を久々に味わった。
壁に激突するグルドン帝国の兵士。
血飛沫を吸い取りつつ――。
<
アクセルマギナから即座に魔力回復薬ポーションが浮かぶ。
それを飲む――便利だ。
だが、その僅かの間にも、坂から次々と下りてくるグルドン帝国の兵士たち――。
両手の武具を消す。
アイテムボックスから、波群瓢箪を取り出した。
「――リサナ、ヴィーネのフォローを頼む。坂の下付近の敵を制圧しろ――」
「はい♪――」
坂に向けて、片手で<投擲>――。
波群瓢箪は重い。
巨大な鐘的な波群瓢箪と衝突した兵士たちは潰れるように吹き飛んだ。
そして、坂に突き刺さった波群瓢箪から勢いよくリサナが飛び出していく。
リサナの後を追うように桃色の魔力粒子が宙に弧を描く。
瞬く間にカタツムリとナメクジの形をしたデボンチッチのような不可思議のモノが周囲を明るく照らしていく。結界的な桃色の魔力フィールドが坂から崖の外側の宙空にも広がった。
波群瓢箪からは、一対の漆黒の巨大な腕が誕生。
群がる敵兵士たちを掴む巨大な手が、その兵士たちをリンゴでも潰すように握り潰す。
そのまま握り潰した肉が手にこびりついたまま両腕を振るい回す。
坂を下りてくる敵兵士たちを吹き飛ばしていく。
漆黒の波群瓢箪は、ミニ戦車のごとく坂の一部を制圧する動き。
圧巻だ。
やはり、こういう場面では滅茶苦茶役に立つ。
が、勢いはありすぎた。
障害物となった兵士たちの死体も潰れる。
装備類も吹き飛んだ。
坂道は、もとの幅に戻った。
ま、これも仕方なし。
沸騎士とミレイヴァルを使うか迷ったが、使わず。
ヴィーネが翡翠の
あの強いヴィーネが坂の下に戻って戦うように、グルドン帝国は大軍だ。
そして、一人一人が強い。ヴィーネの振り下ろした翡翠の
坂の上では、相棒たちが暴れているはずだが……。
さすがに大軍のすべての対処は無理か。
ジョディとママニ&ビアからの連絡はない。
帽子は俺の近くで浮遊している。
俺は波群瓢箪を基点としているヴィーネの近くに向かうように……そのヴィーネの追撃を振り切って、俺に近寄ってくる連中を見た。
身軽そうな奴らが多い。
そのグルドン帝国の兵士たちの前へと歩き出す。
血魔剣とムラサメブレード・改を出す。
柄の握り手を強くした。
魔擦眼と掌握察で状況を把握。
――重装歩兵は減った。
軽装歩兵か魔剣師タイプが多い。
背後に、優秀な射手っぽい弓を持つ存在もいた。
坂の上にいた射手ではない。
その射手が火矢を寄越す。
俺はムラサメブレード・改を振るって、その火矢を払った。
刹那、その火矢を放った射手の胸にガドリセスの刃が突き出た。
射手は苦悶の表情を浮かべて血を吐くと倒れる。
その射手の背後にいたヴィーネ。
ガドリセスを引く際にチラッと銀色の虹彩を俺に寄越す。
微笑みを返した。
そのヴィーネに刃が迫る。
が、『ご安心を』というような微笑みから一転――。
身を翻しつつの胴抜きで――兵士の体を真っ二つ。
臓物が散った。
その内臓を魔毒の女神ミセアに捧げるようなポーズからヴィーネ無双が始まる。
と、いかん、魅了される。
「チッ、背後のエルフは青白いぞ?」
「噂に聞くダークエルフか」
「――背後の新手の傭兵は、仲間に任せろ。今は、この障害の排除を優先する。ラシュマルの首はすぐそこなんだからな……」
「おう」
「「掛かれ!」」
向かってきた。
須く、倒す――<超翼剣・間燕>を発動――。
――手前にいた兵士の胴を抜く。
ブゥゥンとした赤い旋律が響いた。
二人目の兵士の脇腹を抉る。
三人目の肩口を血魔剣が喰う。
ブゥゥンという青緑と赤い旋律が連鎖した――。
四人目の頭部を溶かす。
五人目の左半身を切断。
六人目の左半身の心臓を血魔剣の真っ赤な刃が喰らう――。
――六人目を斬るのに成功――。
しかし、矢が飛来した。
左手の<シュレゴス・ロードの魔印>から蛸足が飛び散り拡散。
矢を防ぐシュレゴス・ロード。
俺からは半透明な蓮の花に見えた。
構わず――。
「散れ」
そう命じると――『ハッ』と思念を寄越すシュレゴス・ロードは瞬く間に、左手が握る血魔剣の峰を避けつつ左手の掌に納まった。
血魔剣の髑髏の柄から迸る血。
その血の十字架のような柄越しにグルドン帝国の兵士を睨む。
射手が驚愕した表情で俺を見る。
残りのグルドン帝国の兵士はあと五人。
坂の上から駆け下りてくる兵士は減った。
ヴィーネたちが押さえ込んでいるようだ。
その残った兵士たちの間から、一人の帽子をかぶる兵士が顔を出す。
あ、短槍と十手を持つ奴だ。
偵察用ドローンに映っていた強者の兵士長か。
そいつが……。
「何者だ……」
と聞いてきた。
さっきも答えたが、俺は素直に……。
「
と、答えた。
「随分と訛りのあるマハハイム語だな……なぜ、我々の行動の邪魔をする」
「たまたまだ」
「……」
「んじゃ、話はお終いか?」
「我らはグルドン帝国の第二師団なのだぞ……」
「だから何だ」
「チッ――」
魔脚の踏み込みは速い。
短槍の穂先が迫る――。
横に避けつつ左手の血魔剣の<血外魔道・暁十字剣>――。
偵察用ドローンで、その十手の機動は既に読んでいる。その十手を持つ片腕を速剣の半円を描く軌道の血魔剣の剣身が捉えた。
「げぇぇ――」
血飛沫が迸っている兵士長の片腕が宙に舞う。
即座に武器チェンジ。
右手に魔槍グドルル。
左手に魔剣ビートゥ。
兵士長は片腕を失っても戦意は失わず。
短槍を離さない。
しかし、苦悶の表情は変わらない。出血も止まらないし魔力操作の質も落ちた。
仕留める――前傾姿勢で兵士長との間合いを詰めた。
視線のフェイクを入れてから兵士長の足下に魔槍グドルルで<牙衝>。
同時に左手を振るう――。
下段の突き技のオレンジの刃が右足の甲を潰す。
悲鳴も上げさせず――振るい抜いた魔剣ビートゥが兵士長の首を刎ねていた。
刹那、魔素を真上に感知――。
バリスタのような大きい魔矢だ――。
かなり速い――。
即座に右手の魔槍グドルルを短く持ち直しつつ――。
大きい魔矢目掛けて体勢を低くしてから地面を蹴る――風槍流『風研ぎ』の姿勢に移行。
同時に魔力を活性化――。
真上にグドルルの穂先を突き出す――。
オレンジ刃の<塔魂魔突>で飛来した魔矢をぶち抜いた――。
手応えあり、魔矢は両断されず――細切れとなって魔軍夜行ノ槍業に吸い込まれていく。
<塔魂魔突>を繰り出した魔槍グドルルのオレンジ刃から不可思議な振動が起きた。
同時に腰の魔軍夜行ノ槍業からも魔力が迸る――。
更に、魔軍夜行ノ槍業が震えながら、
『……基本通りの素晴らしい<塔魂魔突>である』
そう思念を寄越すセイオクス。
俺は後方に一回転しながら着地。
同時に、肉肢のイモリザを意識した。
出現したイモリザに、
「背後の兎人族と
「はーい♪ うさちゃんたちー御守りしますからねー」
「うあぁぁ、銀色の髪が動いている!!」
「……わたしたちは……」
背後から悲鳴が谺した。
兎人族と
まだまだ戦いは続く。
いちいち詳細を伝えるのは面倒だから無視。
と、リサナの近くで戦うヴィーネが、
「――ご主人様、今の矢は坂の上からです」
そう発言。
翡翠の
俺に飛来してきた魔矢を狙おうとしてくれたようだな。
しかし、精度と威力といい申し分ないバリスタのような魔矢だった。
「そうだな。沙とヘルメに相棒の攻撃を避けているだろう射手。それでいて、距離が離れているはずの俺に対しての正確な遠距離攻撃だ」
魔矢は垂直に下りてきた。
特殊相対性理論で計算尽くされた衛星からの攻撃かってぐらいの精度だ。
「はい。強者です――」
ガドリセスを振るって近づく兵士を切り伏せるヴィーネの問いに頷きつつ、
「リサナは、この坂下か、背後のイモリザの近くに波群瓢箪を置け。そこで連携しつつ兎人族と
「はい」
「了解です」
坂を下りてくる兵士。
俺は右手の武器を王牌十字槍ヴェクサードに交換。
左手にムラサメブレード・改を出す。
前進しながら<邪王の樹>の礫を出す。
《
長剣使いと槍使いは、樹の礫を斬る。
が、無数の《
物量の氷弾を浴びまくった。
凍り体が孔だらけとなった兵士を王牌十字槍ヴェクサードで突いて普通に倒す。
ヴィーネもガドリセスで凍り付いた兵士を斬ってから、坂を上がる。
坂の上には兵士の死体が積み上がった箇所があった。
魔術師軍団は一掃されたようだ。
神獣率いる虎軍団とヘルメに沙が活躍している。
レッサーパンダの幻獣を発見。
遠くを飛翔しながら旋回しているのが見えた。
どこまでいったんだ、アーレイとヒュレミの大虎コンビは。
刹那、魔矢が飛来――。
俺とヴィーネは左右に走りつつ、その魔矢を避けた。
「ヴィーネ――あいつが邪魔だ、やるぞ」
「はい」
そのまま戦場の端に向かった。
目的はその魔矢を繰り出した射手だ。
帽子をかぶった、異質な射手。
しかも、浮いている。足下に魔法陣があった。
<導想魔手>のような技術を持つようだ。
射手に近付こうとしたが、横から槍使いの部隊が迫った。
ヴィーネとアイコンタクト。
ガドリセスを振るい抜いて最初の一人を切り伏せた直後――。
俺が前に出ながら王牌十字槍ヴェクサードの<刺突>を繰り出す。
ヴィーネも呼応。
即座に、俺の横から回転しつつのガドリセスを一閃。
ガドリセスの刃で、槍使いの武器を弾くと、長柄武器が上向いて下半身がお留守になった。その瞬間を逃さない――。
俺は左手のムラサメブレード・改で<飛剣・柊返し>――。
槍使いの両太股を払う。
青緑色のブレードが槍使いの太股を消去した。
ブゥゥゥン――と肉を焦がす音が怖い。
すかさず、
「ご主人様の剣術は飛躍的に高まっています――」
ヴィーネが褒めてくれた。
同時に、ヴィーネは華麗な袈裟斬りを敢行。
近付いた槍使いを切り伏せる――とステップしながらラシェーナの腕輪から闇の精霊たちを発動――他の槍使いたちの動きを牽制。
正直、まだ剣術に自信はなかったりするが、そのヴィーネの背中に合わせた。
闇の精霊たちの攻撃を逃れた素早い槍使いが視界に入る。
――ヴィーネに槍を向けてきやがった。
俺は右手に血魔剣を用意――。
その血魔剣を迅速に振るった。
槍使いの槍武器の穂先を、血を帯びた血魔剣の峰が切断する――。
切断された槍の穂先が反転しつつ、その槍使いの顔面に突き刺さった。
「ぎゃぁぁ」
ヴィーネの背中を守った。
すると、どこからか投擲された瓶が、その槍の穂先が突き刺さった顔に炸裂。
ポーションか。
槍使いは回復しながら逃げていく。
「しかし、テフェルの槍を切断とはな、初めてみる」
そう喋ったのは、槍部隊を率いていた将校らしき人物。
更に、
「……銀髪の女か。嫌な予感がするんだが」
「あぁ。まさか、ドナーク&ジクランの再来ってか?」
「不吉な……フジク連邦の糞コンビ」
そこに、また魔矢が迫った――。
ヴィーネのような連続的に矢を放つスキルでもあるのか、バリスタクラスの魔矢が増えている。
「ご主人様、あの射手を優先しますか?」
「いや、相手はたぶん逃げるだろ。魔矢野郎は後回し――」
背中にヴィーネの体重を感じながら――左手の<シュレゴス・ロードの魔印>から出た蛸足の魔力で、飛来した魔矢のすべてを防ぐ――。
ヴィーネを狙う魔矢が多かった。
翡翠の
一応、その太く魔力の籠もった特別な魔矢を放つ射手目掛けて、闇杭を飛ばす――。
が、予想通り射手は避けつつ避難する。
「ありがとうございます」
「いつものことだ」
と、ヴィーネの背中越しに俺が語ると――。
そのヴィーネは、振り向いたのか、俺の首筋にキスしてくれた。
一瞬だったが、項に受けたヤッコイ唇の感触が気持ち良かった。
さて――。
「ドナーク&ジクランの再来といこうか?」
「そうですね!」
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