四百四十六話 大狼后ヒヨリミ様

 

 騒ぐ音の方に走りながら宝物庫の周囲を確認。

 天井から吊るされた魔道具によって明るさは保たれている。


 二十畳ぐらいはあるか?

 宝物庫の奥の間という感じか。

 何処かに、パレデスの鏡があるかもしれない――。


 ――視線を巡らせた。

 だが、ないようだ。


 宝物庫のような空間が見えた十七面か十八面の可能性があるかもと思ったが……。

 そう都合良くはいかない。


 十七面のパレデスの鏡の先は、時が止まっているような印象を抱かせる部屋だった。

 不気味な心臓、内臓が納まっている黒い額縁、剣と防具、等が見えた。


 十八面のパレデスの鏡の先は、暗い宝物庫だった。


 二十四面体トラペゾヘドロンを用いて、探索したい気分が高まる。

 だが、他にもやることは無数……。


 ま、今、できることをやろう――。

 廊下のような場所に出た。


 足を止める。

 真上から見たらL字の形かな。

 左と正面は岩壁だし。


 俺たちが出たところの背後は宝物庫。

 右側に廊下が続いている。

 床には赤い絨毯が敷かれてあった。


 廊下の少し先に階段が見える。

 手前に黒豹ロロとハイグリアにエルザの姿を確認。


 その階段下は広間のようになっている。

 古代狼族たちが集まっていた。


 俺たちの居る廊下の壁は、岩と土が合わさった素材。

 少し先の方の壁の素材は、ガラス張りのような光沢を持った材質に変化していた。


 その光沢に合うように陳列棚も並んでいた。

 陳列した品……。

 輝く石、長剣、槍、爪、手裏剣、杖、リングメイル、プレートメイル、武道着、タブレットのような鋼板、貝殻、猫の置物、種袋、ペットボトル、死んだソジュのような脳。が保管されている。


 どれも、魔力が漂うが、今も運んでいる宝の品より重要度は低いアイテムだろう。

 しかし、俺はお宝鑑定団ではない。


 伝説レジェンド級、神話ミソロジー級の品があるかもしれない。


「お宝……だが、取るなよ?」

「分かっている」


 バーレンティンに忠告してから、皆に視線を向けて頷くと走り出す。


 両側の壁の飾りが極端に減った。

 凹凸があるから音響効果がありそうだ。


 階段下に集まっていた古代狼族の衛兵たちの下に近づいていった。

 彼らの爪式鎧は、今まで見てきた古代狼族の兵士たちと違う。


 兜はかぶってないが、重装歩兵を彷彿する衛兵たちだった。

 そんな衛兵たちが、ハルバード級の爪武器を前方に伸ばして相棒を押さえようと取り囲んでいる。


 そして、俺たちが、その衛兵たちに近寄った時――。

 ハイグリアが黒豹ロロを守るように前に出て両手を広げた。


「お前たち! 何度話をすれば、わかってくれるのだ!」

「神姫様……そうはいいますが……」

「ええい! わたしはともかく神獣様に武器を向けるとは何事か!」

「ですが、闇虎ドーレのような魔獣です!」


 その直後、衛兵の一人が爪槍を黒豹ロロに差し向ける。


「ガルルゥ――」


 唸り声を上げた黒豹ロロは触手で、その向かってきた爪槍を弾いた。


「黙れ! 優しい神獣様はお前たちを殺していない。そのことが理解できているのか?」

「ハイグリア姫! 引いてください。危険です!」

「アリス!」


 エルザが声を上げた。

 すると、古代狼族の衛兵の一人が、そのエルザに対して爪槍を差し向ける。

 エルザは横回転しながら爪槍を避ける。

 そして、背中のヤハヌーガの柄に手を当て素早く大刃を引き抜いた――。


 お、爪先半回転の技術だ。

 ヤハヌーガも迅速に横から半円を描くように揮う――。

 もう一人の衛兵が繰り出した爪槍をヤハヌーガの大牙で薙ぎ払った。


 弾いた、いや、爪槍の先端を切断していた。

 その切断した爪槍の破片が、階段の方へと飛び、階段の端に突き刺さる。


 囲っている古代狼族の衛兵たちが驚く声が上がった。

 驚く気持ちは分かる。


 ドラゴン殺し級の巨大だんぴらと似たヤハヌーガの大牙を片手で扱う人物だ。


 俺たちはここに来る前にモンスターをぶった斬るところを直に見ているから、剣の技術と身体能力が高いことが十分知っていたが、やはりエルザは強い。


「――エルザ、狼さんたちを死なせちゃだめだよ? 神獣様は肉球タッチで狼さんたちを外に押し出していたんだから」


 アリスがそう語るように黒豹ロロは無数の触手で衛兵たちをあしらっている

 俺もエルザの側に駆け寄った。


 古代狼族の衛兵たち近づきながら、


「ロロ、大丈夫か!」


 と、側に来たことを、皆に知らせた。


「ンン、にゃ~」

「あ、シュウヤ兄ちゃん! 神獣様、戻ろう!」

「にゃんおー」


 相棒はアリスを背中に乗せたまま走り寄ってきた。


「うあぁぁ――」


 その際、古代狼族の兵士たちを吹き飛ばす。


「シュウヤ!」


 ハイグリアも駆け寄ってきた。

 だが、古代狼族の衛兵たちは、さらに混乱したように叫び出す。


「大変だ! 人族たちの襲来だ!!」

「近衛兵は何をしているんだ!」


 階段から降りてくる古代狼族の衛兵は増えているが……。

 近衛兵という存在もいるらしい。

 階段に角度はそんなにないが、先は長い。


 ここはかなり地下深いってことか。

 ま、最初に黒豹ロロが掘った穴も深かったし、当然か。


「――鐘を鳴らせ!」

「近衛兵の音叉部隊は何をしている! 音叉月界が鳴らないのもおかしい! 要塞の真下からの盗賊の襲来なんだぞ!?」

「まさに、前代未聞よのぅ」


 衛兵長のような大柄の古代狼族が呟く。

 老けた古代狼族は、ここの衛兵長さんか?

 両手に自身の小麦色の爪と一体化している角槍を持つ。


 狼のデザインと月のデザインだ。

 少しだけ俺が右手に持つ新しい武器の月狼環ノ槍と似ていた。


「すみません。俺たちはハイグリアと知り合いなんですが……」


 と、老けた古代狼族の方に話しかけてみた。


「姫様とお知り合いの方々か……それは大事な客人。しかし、興奮した若者は巨大な酒瓶に入ったレシュンの酒を何十杯と飲んだあとのように自制が効かなくなるからのぅ」

「エイブラン様、このような者たちと会話をしてはいけません!」

「そうですよ! 宝物庫の品々といい……盗賊団の頭目か! 神姫様も、このような得体のしれない怪しい人族と……」


 古代狼族の若者の衛兵は、聞く耳を持たない。


「窃盗団はわたしたちですが……」

「アラハ、今は黙っておけ……」


 黒豹ロロの触手に捕まっているアラハとツブツブが呟いている。

 すぐに黒豹ロロが対応。


 長い尻尾と複数の黒触手でアラハとツブツブの体をくすぐり始めていく。

 一瞬、ハイグリアはそのくすぐり遊ばれる様子を見て微笑んでいた。


 しかし、神姫らしくキリッとした表情を浮かべて切り替える。

 そして、二槍を持つ老けた古代狼族に視線を向けた。


「エイブラン! 古株のお前が動かないでどうする! さっさと皆を止めろ!」


 当たり前だが、ハイグリアと大柄なエイブランと呼ぶ老人は知り合いらしい。


「……姫様、暫し待たれよ」

「何を待つのだ! 肉球で殴られて、羨まし、いや、兵士たちが弾き飛ばされ続けているのだぞ!」

「いや、わたしが直に若者たちを殴り伏せるにしても、余計混乱が増えるだけですぞ……時期に気持ちも収まるはずですじゃ」 

「……そ、それもそうか。シュウヤ済まない。エイブランのいう通りだ。古代狼族の気質的に一度興奮すると中々収まらない……」

「そうみたいだな」


 こっちもこっちでも数が多い。

 神姫ハイグリアが居たとしても宝物庫から実際に宝を運んでいる状態だ。

 衛兵たちが勘違いしても仕方がないか。


 ヴァンパイアのバーレンティンたちは俺のすぐ後ろに控えている。

 互いを守るように身を寄せ合っていた。

 赤髪の獣人の血を引く人族にしか見えないサルジンが、廊下に置かれた宝物を物色しては、一人だけ女性の名を聞いていないヴァンパイアがそのサルジンに注意している。

 彼女は俺を信用していないと語っていた。


 ジョディはその墓掘り人たちを含めて、最後尾の位置だ。

 涼し気な表情を浮かべて、じろりじろりと、ヴァンパイアの行動を探っている。


 俺と視線が合うと微笑むが、すぐに<光魔の蝶徒>としての白と黒が織りなす綺麗な虹彩を煌めかせて、墓掘り人たちに注意を向けていた。


 何だかんだいっても、しょせんは口約束だ。

 墓掘り人たちの注意は必要という認識だろう。

 バーレンティンが裏切ることはないと思うが。


 手には大鎌サージュを出現させていた。

 俺が知る地球では、巨大な鎌の刃が特徴的なScytheサイズと呼ぶ武器だ。


 そして、彼女の周囲に小さい白蛾たちが舞う。

 その白蛾たちが発した白糸群が絡む宝のアイテムたちも浮いていた。


 ヘルメは俺の隣だ。

 指先から伸びた<珠瑠の花>が運ぶ宝物庫の品はジョディより多い。

 血色に輝いて血が床に垂れている長剣は……。

 吸血王サリナスとハイグリアが呼んでいた代物か?


<珠瑠の花>の輝く紐が宝具に絡んでいる物の中には、槍のような武器もある。

 禍々しい魔力を放つミイラのような腕もあった。


 レブラの枯れ腕と呼んでいた物かもしれない。

 宵闇の女王レブラと関係は、あるだろうな。


 ノーラから聞いた神話といろいろと符合する……。

 そのミイラの腕を見た時、指の紅玉環が震えたような気がした。

 武装魔霊のアドゥムブラリが、あの禍々しい腕を欲しているのか?


 まるっこい単眼球体のアドゥブラリに腕が付いたら……。

 あまり想像したくないから止めとこう。


 だが……正直、気になる物ばかりだ。


 アリスは黒豹ロロから降りてエルザの側に居る。

 黒豹ロロの触手の一つに、小さい頭を撫でられていた。

 頭を撫でながら、ネコ耳を引っ張るように持ち上げていくと、アリスも気持ちよさそうに背伸びしている。


 カワイイ。


 一方、ツラヌキ団の小柄獣人ノイルランナーの二人は、まだ触手たちによってくすぐりの刑を受けていた。

 あれはあれで、拷問なのかもしれない。

 〝仲間はここから離れた場所〟〝買い物を楽しんでから〟〝トムランセの焼肉店の肉が美味しい〟〝川にはトブチャの魚がいっぱい〟〝大根おろしはんばーぐ〟〝マジュンマロン〟〝正門前の宿屋ブルームーンに集合だ〟


 と、どうでもいい情報から、大事な情報を吐いていた。


 さすがは神獣ロロディーヌ。

 触手の技で、情報を引き出すとは。


 そんな風に状況を把握していると、階段の上から太鼓と笛の音が鳴り響く。

 音はだんだんと大きくなった。


 そして、黒衣を着た古代狼族の足先が見える。

 階段を下りてきた。

 一人じゃない。集団だ。


 次々と、黒衣を着た古代狼族たちが降りてくる。

 羽織っている黒衣はシースルー気味。

 透けた胸元は、ふっくらと膨らんでいるおっぱいの持ち主が多い。

 爪から伸びている鎧ではなく薄着のワンピース系の衣装だった。


 太腿とかパンティのような下着も見えていた。

 リョクラインのように体毛も薄いから色っぽい……。


 そんな黒衣集団と対を成すような存在もおりてきた。

 周りが黒だけに目立つ存在は、白銀模様の衣装を身に纏う古代狼族だ。


 透けた白銀色のベールから覗かせる表情は微笑んでいる。

 細い銀眉は繊細そうだ。

 青い目の形はハイグリアとそっくりだ。

 肌はハイグリアと同じく人族に近く、正直美しい……。


 古代狼族らしい銀色の体毛はハイグリアより少ない。

 両手の指先から伸びている爪は、勿論、銀色だ。


 その銀爪は、ハイグリアのように鎧ではない。

 銀色の爪は、小さい指貫き型のオペラグローブのように変形している。


 グローブ系だが、魔力が多大に内包している。

 ハイグリアと同じく特別な銀式製の防具だろう。


 その白色のグローブと白銀色の衣装から、女王のような雰囲気を感じた。

 そんな白銀色の衣装が似合う古代狼族の前の階段には……。


 木蓮のような花弁によって花弁の道が作られていた。


 魔力を内包した花の道か、贅沢な道だ。

 白銀が似合う方の左右の位置には、編み巾着の籠を抱えた複数の黒衣の方が居た。


 その古代狼族の女性たちが、花弁を床に撒いていく。

 籠には、まだ、たくさんの花々が入っている。


 こりゃ確実にお偉いさんだ。

 緊張してきた……。


 すると、どよめきが起きた。

 階段の下に集まっていた衛兵たちの鈍い声だ。


 そして、一人の衛兵が、


「――大狼后ヒヨリミ様!」


 と、叫んで平伏した。

 続けて他の衛兵たちが口々に「ヒヨリミ様!」と叫ぶように連呼し始めていく。


 あの白銀模様が綺麗な方がヒヨリミ様か。

 威厳を感じるから納得だ。


「静まりなさい――」


 甲高い声だ。ヒヨリミ様が発した言葉じゃない。

 黒衣の衣装が似合うリョクラインと似た細身の古代狼族の女性の言葉だ。


 その黒衣の女性は他の黒衣の方と同じように杖のようなアイテムを握っている。

 そして、今『静まりなさい』と言葉を発した女性の反対の位置に居た同じ黒衣が似合う古代狼族の女性が、一段、二段と軽やかに階段を下りてから――。


 キリッとした表情をこちらに向けてから杖の切っ先を口に含んだ。

 その途端、口元、いや、杖から笛の音が鳴り響く――。


 笛の音に合わせて太鼓の音も聞こえてくる。

 胸に小太鼓を抱えていた黒衣の女性たちがその太鼓を叩いていた。


 耳朶を震わせる勢いだ。

 小さいが、意外に重低音。

 そこから笛を吹く黒衣の女性たちと太鼓を叩く黒衣の女性たちの演奏が始まった。


 すると、小さい狼の幻影と小さい月の幻影が、笛の音と太鼓のリズムに合わさるように、黒衣と白銀模様が綺麗なヒヨリミ様の周囲を踊りだす。


 不思議な音階に合わせて、リズム良く階段を下りてくる。


 続いて、『静まりなさい』と発した黒衣の女性が、先に降りた黒衣の女性に近づくように階段を一段、降りる。


 そこから舞台の演劇でも行うように俺たちに顔を向けた。


 こっちを見つめてきた。


「ヒヨリミ様の、御前である……控えおろう!!!」


 皆、一斉に片膝を地面に突けていく。

 俺も即座に皆の行動に続いた。

 敬う姿勢を取る。


 すると、一人、立ち尽くしているハイグリアが居た。


「ヒ、ヒヨリミ様……」


 ハイグリアは怯えたように声と肩を震わせている。


「ハイグリア、挨拶がまだですね?」


 ヒヨリミ様の声は透き通った声色だった。


「ああぁ、はい! ヒヨリミ婆様! ただいま帰ってまいりました!」


 敬礼するように挨拶するハイグリア。

 尻尾の動きがピンッと背筋に沿うように固まった。

 オモシロイ。

 と、心の中でガラサス風に反応したが、当然、だれも反応しない。


『何か、妾に求めたか?』


 いや、左手にサラテンが居たか。


 しかし、婆様というか、お姉さんじゃないか!

 何度見ても、白銀の毛といいハイグリアと似ている。


 そのヒヨリミ様が、


「……ふふ、帰りを待っていましたよ。リョクラインとルルンから話を聞きましたよ。あ・と・で・お・は・な・し・を……じっくりと聞きましょうか」


 ハイグリアに向けた声だ。

 その声音は恐怖を抱かせる。

 魔力も発生していた。


 独特な魔声に、<光魔の蝶徒>ジョディも感じたらしい。


 俺と視線を合わせて、「あなた様、気を付けてくださいね」と、片膝を床につけて体勢をかがめながら、俺に忠告してくれた。


「……分かっているさ」


 と、小声で呟く。


「しかし、閣下。黒衣装を着ている幹部兵と周囲の衛兵たちから、わたしたちが回収した宝物に対して睨むような視線が集中していますが……」


 ヘルメが忠告したように、階段の上に居る黒衣装の方々とぶつぶつと文句をいうように言葉の渦が広がる。

 そして、衛兵たちからも、


「ヒヨリミ様!! この者たちは盗賊です!!」

「ヒヨリミ様! 退いてください! 危険です!」


 と、立ち上がっては、騒ぎ始めていく。


「衛兵たち――騒ぎすぎです。冷静になりさない」

「そうですよ」


 ヒヨリミ様の左右に居た黒衣の古代狼族の女性が、注意を促す。

 すると、そのヒヨリミ様が、


「……ふふ、キコとジェス、わたしが話をしましょう」

「は、しかし」

「いいから――」


 ヒヨリミ様は微笑みながら、


「衛兵たち、皆、不安を覚えなくて大丈夫です。この方々たちは、わたしが招きました。音叉結界も鳴らなかったのは理由があるのです」

「「――ええぇ!?」」


 皆、ハモリ声を上げる。

 というか……俺も驚いた。


 キコとジェスと名を呼ばれていたヒヨリミ様のお側付きと思われる女性たちが、「落ち着きなさい」とまた注意を促している。


 そうして、静かになったところで、ヒヨリミ様がまた口を動かした。


「……皆が知っているように、今、神像広場で狼将のアゼラヌ、オウリア、ドルセルの帰還を祝う催しが行われています。さらに神姫ハイグリアが多大な結果を残して、帰還を果たしました」


 ヒヨリミ様はにっこりと微笑むと、細い腕先をハイグリアへと向ける。


「……その件を踏まえて、宝物のことを褒美に考えての行動だったのです。だから、皆、安心してください。あ、宝物庫の奥に穴が開いているようですから、衛兵たち。地下探索の小隊を崩して、防備に当たってください」


 と、真剣な表情を作りながら指示を出しているヒヨリミ様。


 指示を受けた古代狼族たちは礼をして、


「そうだったのか」

「悪かったな……」


 と、次々に謝る言葉を発して、胸元に手を当てながら整列を始める。

 隊長と思われる老兵のエイブランから「お前たち、指示すぐに動くのだ」と注意を受けて、衛兵たちは「はいッ」と声を発してから、迅速に廊下をかけていった。


 すると、その光景を満足そうに見ていたヒヨリミ様が階段を下りてくる。

 左右に居た黒衣の方々も慌てて花の道を作り出していった。


 そのヒヨリミ様は、ハイグリアではなく俺を見つめている。

 表情は笑みというか冷笑だ。


 どうしよう。無難な笑顔か。

 アイムフレンドリー……だ。

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