三百三十九話 子供たちの行方
◇◆◇◆
非常誘導灯に似た魔力光が点滅し空間に明暗を齎す。
地下を這う血を好む昆虫とも魚ともつかない気味の悪い魔物が蠢き消えていた。
饐えた匂いも漂う。
その臭いは黒く濁った滝壺の中を思わせた。
ここは薄暗い血の実験場の地下牢。
頑丈な特殊合金で出来た地下牢の中には無数の種族たちが閉じ込められていた。
そんな捕まった彼らだが幸いなのは……。
吸血鬼たちにとっては食料であり実験に使う生きた新鮮素材として重宝され、まだ生きていることだろう。
しかし、捕まっている人々にとっては悪夢でしかない。
そんな最中、捕らえられていた子供の一人が口を開く。
「アッリ元気をだせ。蟻退治をがんばっていた頃の元気はどうした」
「……だってだって、ここ怖いんだもん」
「……大丈夫だよ。ぼくが守るから」
「ターク、ありがと」
子供たちは励まし合う。
翳りを見せていたが互いに頷いてから笑みを浮かべていた。
その時、廊下の奥から吸血鬼たちの足音が響き、
「――離せ、なんだ、この絡んで離れない糸は!」
「ネームス!」
「これ重すぎだろ」「こんなデカブツに血が入っているのか?」「貴重な材料となるかもしれないとトイズ様の指示だ」「ビアノ様の実験に使うんだとよ」「なら仕方ねぇ」「鳥は美味そうだが」「確かに……」
吸血鬼たちは運んでいる者たちをそう評しながら運んでいた。
「クソ、俺は鳥じゃねぇ、焼いても食えねぇんだからな!」
吸血鬼たちに捕まった鋼木巨人と鳥に似た種族の剣士が叫ぶ。
「わたし、は……」
「ネームスも、これをなんとかほどけ!」
鋼木巨人と鳥に似た種族はもがいて身体に絡まる血糸を解こうとするが解けず。
そんな光景を側で笑いながら運んでいる吸血鬼たちは「ここで待っとけ」「うるさい鳥が」と貶しながら、捕まえた彼らを牢屋の中へ運び入れていた。
鋼木巨人とモガ族は吸血鬼の扱う能力<血糸車>に捕まり身動きが取れない。
捕まっている彼らはベテランの域に達する冒険者ではあるのだが、吸血鬼相手には相性が悪かった。
牢屋内の汚い地べたを転がる鋼木巨人と鳥に似た種族。
鋼木巨人はネームスと叫び。
鳥に似た種族はギュンター・モガ様だぞ! と叫ぶ。
そんな光景に吸血鬼の声ではない場違いなアッリとタークの明るい笑声が牢屋に谺した。
「あはは、ボクよりちっこい?」
「頭の形が鳥? おもしろーい」
「こっちの木はでけぇぇ」
「見て! ここ木じゃなくて、目がひかってる!」
「――だっぁ、なんだあ、触るな小僧と女子! モガ族の剣士であり冒険者なんだぞ」
「わたしはネームス!」
「ねー、ターク、こっちの大きいネームスさんは、肩にマークがある?」
「あ、本当だ、そのマークのどばーっとした特別な力で、ここから出られないかな?」
「……わたしはネームス」
左肩に「楓」と漢字が刻まれた鋼木巨人は同じ言葉を繰り返していた。
だが、瞳のクリスタルは今までと、微妙に違う動きを示す。
「ぴかぴかひかる? でも、だめそう」
「このからまっている、ちの糸も、いくら引っ張ってもきれないし、ぼくたちの力だけではむり」
「わたしたちがさわっても変化ないのに、からだをしばるなんてふしぎな糸」
「うん、せめて刃物があれば……」
タークが大きい瞳を揺らして考えていく。
「鳥さんの羽根は使えない?」
「無理、柔らかい」
タークは鳥に似た生物に興味を持ったのか、子供らしく粘度で遊ぶように、さっきから鳥の身体を揉んでいた。
「ぐおぉぉ、何回も触って揉むなぁぁ、俺様は玩具じゃねぇ! 剣士だぞぉぉ」
「あはは」
「わたしもやる!」
と、アッリとタークに遊ばれるモガ族の剣士。
しかし、そんな些細な遊びから数時間も経つと、現実を見たアッリとタークは……
「……キッシュお姉ちゃんとチェリお姉ちゃんなら、見つけてくれる……」
「……うん、ボクたちが、もし生きて外に出られたら謝らなきゃ、勝手に動いてごめんなさいって」
「タークは、あの強いキッシュお姉ちゃんでも、ここには来られないと思っているの?」
「……アッリ、周りを見ろ。ボクたちだけじゃない。この鳥種族と樹木巨人も捕まる相手なんだ。キッシュお姉ちゃんが強くても……」
「タークらしくない! さっきはわたしを励ましていたのに」
心の支えを否定された少女アッリは泣きそうになってしまう。
それに、幼なじみのタークから、大好きなタークからの弱音は聞きたくなったとアッリは心を痛めていた。
「笑い遊びの次は、泣いているのか? まぁ、ネームスがこの糸を破いてくれれば」
ギュンター・モガはネームスの鋼木としての種族の底力に期待の目を向けた。
「わたしは、ネームス」
鋼木巨人はゆっくりとクリスタルの目を閉じて、開く。
「そうか、期待はしとく」
アイコンタクトで会話が本当に成立しているのか疑問なコンビだが、気持ちは通じ合っていると、周りからは思わせる不思議な血糸に絡まった二人組の会話だった。
そうして、一人、また一人と、日が経つごとに牢屋の中の人々が吸血されていく。
犠牲者が増えていく中、アッリとタークを含めた死を待つ人々は『脱出は……無理、血を吸われて死ぬんだ』といった思いに支配され絶望的な状況に表情を暗くしていた。
ところが、牢屋近くの廊下から爆発音が轟く。
◇◆◇◆
「二人で盛り上がっているところ悪いのだけど、ハンターとして吸血鬼が持っていたアイテムを回収したいのだけど……いい?」
ノーラはユオが身に着けていたアイテム類を見ながら語る。
エーグバイン家に持ち帰る予定の品でもあるのか?
「いいよ、元々はノーラが追いかけていた相手だ」
「……そんな物に興味はないから自由にしろ」
ハイグリアは散乱しているユオのアイテムを睨みながら話していた。
「ありがと、それじゃ頂くわね」
ノーラは地面に散乱しているアイテムを拾い集めていく。
正直、彼女が袋に入れているユオが持っていた類の中でも、蛇のような腰ベルト型アイテムボックスと、足に装着していたと思う血色の銅環が、どんなアイテムか少しだけ気になったが……。
そこで狼女ことハイグリアに視線を向けた。
彼女が、とばついたように「古代狼族の屋敷に来い! そして決闘を受けてもらうぞ」と、語っていた言葉を考えながら、視線を向ける。
「……ハイグリア、さっきの決闘だが、そんな殴り合いに興味はない。俺には俺の大事な用がある」
と、素直な心情を告白。
すると「え?」と小声を漏らしてから俺を一瞬、睨む。
だが、憂い、好き、といった感情の色を青い瞳に現すと、その青瞳を震わせていく。
そのまま狼女ことハイグリアは黙りを続けて、
「……そんな視線を向けられてもな」
「……だめなのか? 名前を聞いたくせに……」
今度は俯いてしまった。
しかし、その俯いた彼女の視線さんは、破壊力を伴うほど、かわいい……。
反則だ。んだが、何ごとも優先事項がある。
そこでノーラを見る。
ちょうど、アイテム類の回収を終えたところだった。
銀バックルが目立つ職人系柄革ベルトと繋がる袋の中に全部収まっている。
あの四角い魔力が備わった赤茶革袋はアイテムボックスらしい。
ノーラは肩に掛かった綺麗なウェーブ髪をたくし上げてから見つめてきた。
耳の白いピアスがチャーミングだ。
「……シュウヤ、名残惜しいけど、わたしにも
ノーラは寂しげな表情を隠さず話をしていた。
一方、ハイグリアは黙って俺を睨んでいる。
「……その依頼、手伝いたいがすまんな」
「ううん、気にしないで」
胸甲に備わる親指ほどのサイズの金具から伸びている紐と繋がる腰ベルトをノーラはきゅっと綺麗な指に引っ掛けて引っ張り締めると、魅力的なお臍ちゃんを魅せながら、
「――それじゃまたね。いつか、ペルネーテのシュウヤの屋敷か。ヘカトレイルで会えるといいけど」
ノーラ。正直、もう一度抱きたい女性だ。
だが、彼女にも彼女の人生があり行動理由がある。
尊敬の意識を持って、
「……おう、アンジェと会う時は同席するかもしれない」
「うん、あ、忙しかったら別にいいから。妹との話し合いは
にわかに引き締まったノーラは歴史ある家のことを思い出したらしい。
ヴァンパイアと化した妹と、ハンターとしての仕事。
今後、どう折り合いをつけていくのか……彼女の人生は波瀾万丈だな。
時々、俺に寄越す視線が、後ろ髪を引かれる思いを感じさせる。
「……おう。ま、がんばれ。前にも少し話をしたが、俺にできることがあったら家のメイド長イザベルたち【月の残骸】の連中に話せば、すぐ俺と連絡は取れるからな? 遠慮せず頼ってくれていい」
「……ふふ、相変わらず。やさしいエロ紳士なんだから……」
ノーラは俺の言葉に頷いてから、微笑む。
その瞬間、スキルを発動したらしい。
ハイグリアとユオが衝突していたのを覗いていた時と同じか?
発動していた隠蔽系スキル。
ノーラの足下が微かに澱んでいる。
魔力の明滅が珍しい部類かも……。
分析していると彼女は林の中へと吸い込まれるように姿を消失させた。
微かに残っていた背中の輪郭が儚く感じさせる消え方だ。
そこに、ハイグリアが俺の視界に登場。
胸は鎧なので揺れてないが、揺れそうな両手を腰に当てたポーズを取り、
「おい――エロ紳士という言葉が気になる! が、シュウヤの大事な用なら、わたしもついていくからな!」
「え?」
口端の片牙が、かわいいハイグリアちゃん。
唐突に指を差して、宣言していた。
その銀爪が、ほんの少しだけ伸びている。
「にゃ~」
馬獅子型に変身していたロロディーヌがハイグリアの言葉に反応し、指を差しているハイグリアへ向けて触手を伸ばしていた。
「――きゃっ」
身体に絡ませると、そのままロロディーヌはハイグリアを自身の背中の上に運んで乗せて上げていた。
狼女の匂いが気に入ったのか?
「神獣様……わたしが乗ってもいいのだろうか……」
ハイグリアは行動と言葉が伴っていない。
黒毛の背中に両手を回して抱きついているんですが。
黒毛のふさふさの魅力に嵌まったな? と、にやけている俺にもロロディーヌの触手が向かってきた。
その触手が、俺の身体に絡む前に、
「――いいんだよ」
と、話しながら、目の前に迫った触手を掴み握る。
ロロディーヌは瞬間的に、俺と握手でもするようにグローブ状に触手を変化させて手に絡ませてくると、根元から伸ばしていた触手を震わせるように勢いよく収斂。
右手と握手しているような形の触手を引っ張り上げて、背中側へと誘導してくれた。
そのロロディーヌの引っ張る触手の力と合わせるように、俺も足に魔力を溜めて、勢いよく黒毛がふさふさしている背中の上へ向けて跳躍――。
黒毛背中の上に左の手の内を当て、体操選手のように倒立した。
右手に絡んでいたロロディーヌの触手が離れ小さく分裂。
その分裂した触手は鴉の羽根が無数に舞い散るように見える。
既に跨がって乗っているハイグリアは、俺の行動に少し驚いた表情を浮かべているかもしれない。
倒立状態から左肘を曲げた。
そして、ロロディーヌの背中を押すように片手だけの力で真上へと跳ねる。
宙へ跳ねながらハイグリアにぶつからないように彼女の位置を意識しながら身を捻りロロディーヌの上に跨がった。
「……華麗だ。神獣様と繋がっているのだな」
ハイグリアは一連の動作から神馬一体と化している俺とロロディーヌの絆を読み取ったらしい。
彼女は古代狼族と神狼ハーレイアに関係しているからこそ、そんな言葉を呟いたのかもしれない。
「相棒だからな。さて、血鎖が示す方向に出発するとして、ロロが気に入ったからついてきても構わないが……俺の目的の邪魔はしてくれるなよ?」
「……わかっている。子供たちが行方不明と話は聞いていたからな。助太刀してやるということだ。ありがたいと思え」
その偉そうな口ぶりと違い、今度は俺に背中に顔を埋める勢いで抱きついてくるハイグリア。
「なら、いい――」
前方を向いた俺の気持ちをくみ取った馬獅子型のロロディーヌは速度を上げ、樹海を進み出した。
ハイグリアはさりげなく抱きしめてくる両腕の力を強くする。
彼女の偉大そうなおっぱいさんの感触は、その背中の密着具合から鎧越しといえど、
◇◆◇◆
やや変態思考のシュウヤとロロディーヌに跨がるハイグリアたちが血鎖の痕跡を追い樹海の中へと消えた直後――。
宙に漂っていた、ただの蝶々だったのはずだったの無数な蝶たちが、突如、各自意識が宿るように蠢き出す。
そして、その意識ある蝶々が蠢く空間の内部から大きい白と赤紫の羽根が繭でも作るように生まれ出た。
その繭の内側から、白蛾と赤紫蝶の身体を持つ死蝶人が風を吹き出しながら現れる。
彼女たちは口角を歪めて奇妙な嗤いを浮かべていた。
「――ジョディ、外は至るところで争いがあって面白いわ」
「うん、渦を巻いているようね」
「ねね、さっきの槍使いの側に居た、かわいい触手を首から生やした黒豹ちゃんだけど、わたしたちを視認していたのかしら? 姿を隠していたのに見つめてきたから、驚いたのだけど」
「確かに。フムクリの妖天秤の<魔絶>は感知が難しいはずなんだけど不思議ね」
「ジョディの自慢のアイテムちゃんも、忌まわしい神狼を超えた、特別なかわいさを持つ黒豹ちゃんには勝てなかったようね」
「……ふん」
機嫌を悪くしたジョディは白蛾の蝶を漂わせながら宙で跳ねるように移動していく。
「ふふ、待ってよ~」
「べーだ!」
ジョディとシェイルは蝶を纏わせながら愉しげに宙を飛んでいく。
それは神獣ロロディーヌと同じぐらいの速度が出ていた。
見た目が華やかに綺麗な蝶が飛ぶ姿は異様な光景だ。
すると、その死蝶人たちが蝶々をまき散らしながら、急に動きを止めた。
「――ねぇ、見て、あそこの岩の塊と村のようなところ」
美しい女性顔を持つシェイルが大鎌を右手に出現させながら、くるりとその大鎌を回し刃の先端を下方へ向けて突き差していた。
「辺鄙なところね? あ、血の操作を扱う者たちが居る。吸血鬼たちか」
「うん、爪の形を下側に<従者長>とか<筆頭従者>たちも棲み付いていそうな岩窟もあるわ」
「吸血鬼といえば、かなり昔に戦った記憶があるけど……」
「光の十字森の裏側、濃い闇の中で戦った吸血神ルグナドの眷属……彼は正直強かった」
「……今も樹海近辺で暴れている貴公子とダブっちゃう。うふん」
「あはは、シェイル、蝶々の形が卑猥よ? あ、想像しているノ? 似ているとはいえ、あの黒髪の貴公子は別人よ?」
「あ、え、もうやだ……それよりも! あの村よ、地下に無数にある人族たちの魔素も気になるわ」
「力のない者たちの魔素が多いけど、強い吸血鬼が居そうな感じ♪」
「内部に面白いアイテムが隠されているかも!」
「でも相手は高祖吸血鬼かぁ、相性が悪いけど、クンナリーで血ごと吸っちゃう?」
「うん♪」
「よーし、じゃ、入り口から派手にぶっ放すのは、なし。内部の探険して中から――」
ジョディは右手、左手と大鎌エンドの持ち手を変えながらひらりひらりと舞う。
スキーパーからクロスハンド、そしてスクーバーのダンスを披露しながら宙を舞い上がり大鎌と一緒に踊る。
そして、シェイルもジョディの動きと同じ、まるで鏡の現し身のようなお揃いの動作で踊ると、大鎌サージュを動かして、ジョディの湾曲している巨刃と自身の巨刃を衝突させていた。
大鎌が重なった場所から閃光が迸る。
「――壊すのね!」
「――そう♪」
彼女たち独自の鎌技だ。
気まぐれな死蝶人ジョディとシェイル。
双眸に怪しい険しさを現しながらも、愉悦と奸猾を持ち合わせた表情を浮かべ、片手に持っていた大鎌を斜めへ伸ばす。
宙に×印を作るように大鎌の刃をクロスさせ、その重なった大鎌の刃を基点に回転を始めていく。
さらに、彼女たちは鎌を持っていない手を反対の方へ千切れるように伸ばした。
襟首や、その伸ばした腕先から弾け飛ぶ無数な白蛾と赤紫蝶たちも回転――。
蝶々たちは、斑模様に変化をしながら渦でも作るような回転を始めていく。
ジョディとシェイルは縦や横へ重力を感じさせない動きを繰り返し、螺旋回転をしながらヴァルマスク家の血の実験場へと突入していった。
◇◆◇◆
シュウヤたちがノーラと別れる数刻前。
村の中心にある岩窟を利用した血の実験場の内部では、ユオを除くホフマンの<従者長>たちが集結していた。
ホフマンは豪華な木椅子に深々と座り片手に持ったワイングラスを傾け口に含む。
彼は満足そうに血を飲み愉しげな表情を浮かべる。
そのままビアノが行う実験を見学していた。
その実験とは、ビアノだけが開眼した特殊な血魔力スキルと術神アブクルの金暗鍋を使った実験だ。
吸血鬼の血を元に、蒐集し厳選した血、オーククイーンの卵、三首竜のモンスターを掛け合わせて新しい傀儡モンスターを作り上げるというもの。
このスキルを持つビアノは<従者長>として誇れる部分でもあった。
魁偉な容貌のビアノは、その体格に見合わない所作で、眺めている親と同然のホフマンへ頭を下げていた。
ビアノの礼儀正しい行動に満足したのか、ホフマンは鷹揚な態度で頷く。
そのホフマンの横では<従者長>トイズの姿がある。
彼女が片手に持つ羊皮紙の書類には血と素材に関する資料があった。
その中に生きた人族の子供たちの名前がずらりと並んでいる。
トイズの女性らしい鈴のような声で「今日の実験項目と素材に血に関する考察です」と、羊皮紙を手渡されたホフマン。
彼はその羊皮紙を手に取り、書類に書かれた文字を眺めながら……。
にこやかに頷いていたところ、にわかに表情を凍らせる。
「……な、消失だと?」
「どうさなれました、ホフマン様」
「……たった今、ユオとの繋がりが途絶えたことがわかった」
「<従者長>の消失……」
「え? まさか、また?」
実験用の血を新しい卵に注いでいたビアノは、昔、施設に襲撃を受けたことを思い出していた。
そこに、血の実験場の岩窟が揺れる。
「この震動は内部か? 外の<従者>たちはどうしたのだ」
「とにかく、牢屋の方だと思いますので、見てきます」
ホフマンは首筋に長年掻いたことのない冷や汗が流れ、嫌な予感が全身を支配。
トイズはビアノと同じに、また錬金術師の襲撃かと考えていた。
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