百六十話 魔宝地図レベル四※
俺たちが素材や魔石の回収作業をしていると
「先程は助けて頂きまして、ありがとうございました」
乱暴に助けた戦士の方だ。
しかし、俺の<導想魔手>のせいで、鎧と盾が歪に変形しちゃっている……。
少し気まずかった。
「……あ、はい。その、鎧とか、凹ませてすみません」
「え、あ、こんなのは、命に比べたら軽いもんですよ。わたしは仲間のために死を覚悟していたのですから」
この反応だと青年の戦士の方は、まだ自分の鎧の歪みに気付いていなかったらしい。
そこに、
「あああぁ、ルカがっ、生きてるっ」
「ルカが生きてるぞぉ――」
逃げていたパーティメンバーが戻ってきた。
「アーヴ・ルレクサンド、ミミ・シビシ、スレカン・ズキササグ、サスリ、トミリュオン、クオッソ、……無事に皆に会えるとはな」
青年の戦士は駆け寄って来る仲間の名を告げながら目を潤ませつつ語る。
そして、俺に視線を移し、
「これも、貴方のお陰です。あ、わたしの名前はルカ・ゼン・サーザリオン。パーティ【ルシズの遊び】を率いる者です。できれば、貴方のお名前をお聞かせください」
真剣な面持ちになりながら俺の名前を聞いてきた。
「名はシュウヤ。パーティは【イノセントアームズ】です」
「……シュウヤさん、ありがとう。お礼に、これを受け取ってください」
青年の戦士の掌には赤、黒、黄の三つの小さい宝石があった。
黄金のチェーンのネックレスと繋がったスリット状の螺旋に古風な彫刻が施されている。
魔察眼で確認――。
魔力がチェーン全体から渦巻いていた。
ただの黄金じゃないな。
こりゃ相当なマジックアイテムだ。
「いや、そういうのは……」
遠慮して断ると、
「……これでは駄目でしょうか。魔法防御アップ、物理防御アップ、身体能力を引き上げる効果もあるアイテムです。かの、五十年戦争から現在も活躍しているラドフォード帝国の特陸戦旅団を超える、戦鋼鬼騎師団たちが装備していたとされる戦鋼鬼師のネックレス。わたしの家に伝わる戦利品の家宝。どうか、これを、命を助けて頂いたお礼として受け取ってください」
そんなことを言われても。
金やアイテムが欲しくて助けた訳じゃない。
……どうもこういうのは苦手だ。
助けた、助けられた。感謝する、感謝される。
だけでいいじゃねぇか。
とは、言えないので。
「ルカさん、それは受け取れません。感謝の気持ちだけで十分です。俺たちは
「しかし……」
なんとかお礼をしたいという顔だ。
このイケメン青年はカッコイイな。
性格もいいと来たか。
「……はっきりと言えば、貴方の盾の戦士としての姿が、あまりにも格好よく眩しかった。だから、助けたまでのこと。さ、そこに生還を喜ぶ仲間たちも来ているんですから、行って下さい」
「……このご恩は忘れません。貴方のような紳士たる優れた方に出会えたことは幸運です」
「はは、大袈裟ですよ」
イケメンに口説かれてる気分だ……。
「そんなことはない!
ルカさんは伯爵家らしい。
召し抱えるか。気持ちは嬉しい。
だが、気まぐれで風来坊的な俺が、配下はないだろう。
ないな。
「……その、お気持ちだけで十分です」
と、断った。
「……そ、そうですか。君のような逸材こそ、帝国との戦争に最も必要とされるのだが……」
戦争か。今のところは興味がない。
「戦争と言われましても、野暮な冒険者ですから」
「分かりました。ですが、冒険者シュウヤの名は屋敷の者、全員に知らせておきましょう。いつでも、我が屋敷に来てください」
行かないと思うが、社交辞令で、
「はい」
ルカか。彼はイケメンスマイルを繰り出して、仲間たちの下に戻った。
女にもてるだろうな。
集まった【ルシズの遊び】のメンバーたち。
ルカの帰還に、皆、泣いて喜んでいる。
「ルカッ、よかった! 君の父上に悲しい報告をしないで済んだ」
「はは、トレン・クオッソ。君こそ、無事でよかった。帝国との戦争で死ぬ前にこんなところで死んでたまるか! と、一番早くに撤収していたのは忘れないぞ?」
「う、だって、君が、『わたしが盾になる! 皆、逃げるのだ!』と、必死に叫んでいたじゃないか……」
それを聞いたルカは、
「そうだな、ふっ、ははは、冗談だ」
そうだったのか。
ルカを置いて、皆、素早く逃げていたから、見捨てて逃げたと勘違いしたよ。
きっと、今の仲間たちは、断腸の思いで逃げていたに違いない。
俺は謝るつもりを込めて、複雑な思いで眺めていると、
「報酬を受け取らないなんて、シュウヤ、偉いわ。見直しちゃった」
褒めてくれたのはレベッカ。
金の睫毛が数回、瞬く。
「……あぁ、当然だろう?」
「ふふ、うん!」
レベッカの蒼い目が引き立つ若々しい眼輪筋の動き。
ハキハキとしたエネルギッシュな蒼い目だ。
レベッカは素直だな。
真面目に称賛してくれたから、嬉しくなった。
笑みを意識しつつ蒼い双眸を見る。
だが、
「あ~、調子に乗っている顔だ」
レベッカはすぐに俺の顔を指摘してくる。
「ん、確かに、シュウヤ、平たい顔で整ってる」
うぐ、エヴァ。
優しい顔を浮かべながら余計な一言を。
「にゃあ」
肩で休んでいる
「ロロちゃんも、きっと同じことを思っているのよっ」
「わたしはご主人様の笑顔、その顔は大好きです」
おぉ、ヴィーネは偉い。
「えぇっ、さりげない告白っ」
レベッカは少し目を細めてヴィーネを睨む。
ヴィーネはそんなレベッカの視線には動じずに、勝ち誇るように俺を見ていた。
「閣下は至高たる存在であり偉大なる血族であります……」
続けて、俺の傍で片膝を地面につけて頭を下げている常闇の水精霊ヘルメも、そう発言していた。
「ん、わたしもシュウヤの平たい顔が、大好き」
エヴァもさりげなく流れに乗っている。
「えぇぇぇ、精霊様に、エヴァもなのっ、それじゃ……」
なんか、どうぞどうぞ、の流れだぞ。
レベッカは顔を真っ赤に染めて、もごもごと……。
「わたしも……」
と、小声で言っていた。
そんな可愛い反応を示すレベッカに少し意地悪をする。
「えっと、レベッカさん。もう一度、大きな声で言ってみようか?」
「……っ、もうっ、知らない!」
俺が耳に手を当てながら、笑っているので、ふざけている。と分かったのか、レベッカは怒って背を向けた。
「はは、レベッカ。そう怒るな。ごめんな、その可愛い顔をこっちに向けてくれないか?」
そうフォローすると、背中をピクッと反応させて、笑顔で振り返るレベッカ。
分かりやすい。
「んふっ、分かっているじゃない?」
「ん、レベッカも調子に乗っている」
「うっ、悪かったわね。エヴァだって……紫の瞳が、綺麗よね……」
車椅子に乗りながら、優しく微笑むエヴァを怒れないレベッカだった。
「ん、ありがと」
そんな光景を黙って見ている俺の奴隷たち。
何をしているんだか……的な顔だ。
彼女たちの手の上には
回収作業を完全に終えていたらしい。
俺が奴隷たちに視線を向けると、彼女たちは空気を読んだのか近付いてくる。
「ご主人様、回収した品です」
奴隷たちを代表して、慇懃めいた態度の
「分かった」
アイテムボックスへ入れておく。
「それじゃ、皆、一旦、休憩してから魔宝地図へ挑戦しようか」
「了解」
「ん、賛成」
「はい」
「畏まりました」
キャンプを設営。
石と岩を積む。
エヴァが薪に火を点し、焚火を起こす。
皆で、大きい平幕を三張りほど作った。
寝台の数も足らないし、奴隷も含めると狭いからだ。
その代わり、アイテムボックスから食材を豊富に出した。
エヴァの底の深い鍋を利用しての、くつくつコトコトと、クッキング~。
といった感じで、簡単な鍋料理を振舞ったら、皆に喜ばれた。
「この汁物料理美味しかったぁ。この間も言っていたけど、シュウヤは調理もできるのね」
「おう。素材が新鮮なお陰だな。エヴァの底の深い鍋があったからこそ。エヴァのお陰だ」
「ん、シュウヤ、そんなことない。調理の腕は中々。きっとディーもそういうはず」
エヴァの店で働いている料理人か。
あの料理は美味しかったなぁ。
「ありがと、専門の人からは厳しい意見がくると思うが。それじゃ、そろそろ休もう。ヘルメと沸騎士を外へ出して警戒させておく。皆はゆっくり休むといい」
「あ、その沸騎士は見てない」
レベッカが俺の指輪型魔道具の
「そうだな。見るか?」
微笑を浮かべながら指輪を翳す。
「勿論。ねー、エヴァッ」
「ん、興味ある」
レベッカはエヴァへ話を振る。
エヴァも頷いて、同意すると、俺の顔を見つめてきた。
一対の綺麗な紫の瞳が輝いて見える。
「それじゃ……」
美人な仲間たちの期待に応えるため、腕をそれらしく伸ばす。
指先でポーズを決めた。
カッコつけながら
指輪からはいつもと同じく二つの糸が宙へ伸び弧を描くように地面へ付着。
地面を沸騰させて煙と共に二体の沸騎士が現れた。
「閣下。黒沸騎士ゼメタスであります」
「閣下。赤沸騎士アドモス、今、ここに。何なりとご命令を」
二体の沸騎士は片膝を地面につけた状態で頭を下げている。
沸騎士の登場に、奴隷たちがいち早くリアクションを取っていた。
「おぉぉ、召喚なされたぞっ」
「凄い、なんという……ご主人様なのっ。武術、魔法、戦術眼、全てがわたしたちの想像を超えている」
「こ、これは面妖な」
蛇顔の驚く顔のが面妖だ。
「<召喚術>、上等戦士とは……魔術師をも超えられた偉大なる魔槍使いなのですね……」
美人エルフのフーも呟きながら瞳を散大させる。
彼女は驚くというより、恐怖を感じているかのような表情を浮かべていた。
続いて、
「にゃ」
と、軽く一鳴きする
鍋料理を食い終えた
沸騎士たちへゆったりとした歩調で、近寄り、骨の足へ尻尾を絡ませたり肉球を押し当てたり謎の行動を取っていた。
「これが、沸騎士たち……」
レベッカは眉尻をピクピクと動かしながら、沸騎士たちと遊ぶ
あまり驚いてはいないようだ。
「そうだよ」
レベッカに気軽に同意してから、沸騎士たちへ顔を向ける。
「お前たちはこのキャンプの外回りを警戒。モンスターが湧いたら知らせろ。戦ってもいいが知らせることの方が重要だ」
「はいっ、黒沸の見回りの技をご披露しますっ」
「赤沸にお任せをっ」
見回りの技、そんなもんないだろう、とは突っ込まなかった。
沸騎士たちはキャンプの外へ巡回を始めていく。
「ん、シュウヤ、その魔道具の指輪から召喚?」
エヴァが質問してきた。
「そそ、前に少し説明した、指輪型魔道具の
「……
エヴァは心配気に聞いてくる。
紫の瞳が揺らめていた。
「大丈夫だ……あいつらとは不思議と精神的な繋がりがあるんだ。――大事な不死なる部下だ」
そう話しながらも、魔導車椅子に座るエヴァに近付いて、手を伸ばす。
暗に触って心を読めと、メッセージをこめた。
「んっ」
エヴァは気持ちを察したのか、俺の手を握る。
彼女の手の見た目は一見、お嬢様の白い手だがその内実はかなり硬い。
掌にはタコがいくつもある。
あの
エヴァは偉いな。美人で、天使の笑顔が好きだ。
おっぱいも実は大きいし。モミモミしたら幸せだろうな。
エヴァに手が触れられてる間、そんなことを考えていると、エヴァの視線が泳いで、白い頬が徐々に紅く染まるという反応を示していた。
「……ん、シュウヤ、えっち」
恥ずかしそうに、手を放すエヴァ。
「あぁーー、シュウヤ、なにエヴァの手を握って変なことをしているのよっ」
レベッカがそう言ってエヴァを守るように俺の前に立ちふさがった。
「何だよ。ただ手を握り、これからの作戦についてだな、色々と……」
「ふーん、何も喋ってなかったくせに……」
「違うんだなぁ。エヴァとは目、アイコンタクト戦術という深い連携術を高め合おうとしていたのだが、レベッカ君にはまだ分からないかなぁ」
「……何か、その調子に乗った顔がぁ、むかついてきたぁぁぁっ」
レベッカは俺の胸鎧を小突くように小さい白魚のような手で叩いてくる。
「あっ」
「――閣下を殴るとはいい度胸です」
俺を守るように精霊ヘルメがレベッカの手を軽く叩く。
「ご主人様」
ヴィーネも俺の前に立った。
「あぅ、精霊様……ごめんなさい」
「閣下を殴るのはよくありません。今後は気を付けるように」
「は、はい、精霊様……」
レベッカは俺に向けていた手を引っ込めて、頭を下げていた。
「ヘルメ、大丈夫だから、目に戻っておけ」
「はっ――」
ヘルメは指示を受けると、コンマ数秒ですぐに液体化、そのままスパイラル状になり俺の左目に収まった。
「……速い。本当に左目の中に精霊様が住んでおられるのね。不思議。最初は信じられなかったけど、本当に生きた精霊、しかも意識がある精霊様を使役している……どんな呪文か想像もできない。習ってきたことの理解を超えているわ……」
レベッカは俺の目に入った精霊ヘルメに驚き唖然としている。
「手は大丈夫か?」
「あ、うん」
レベッカは右手を見せる。
指の痕が少し赤くなっていたので、俺はレベッカの細い手を掴み、胸元へ引き寄せた。
「あっ」
「どれ――」
上級の《
光を帯びた透き通った水塊が指向性を帯びてレベッカの手に当たる。
指の痕は一瞬で通常の皮膚の色へ戻っていった。
「ありがと、でもわざわざ魔法を使うなんて」
「かまわんだろ、無料だしな」
レベッカの手を握りながら、にこっと笑う。
「そ、そうね……」
顔を真っ赤に染めているレベッカは、俺の紫の鎧に顔を寄せてきた。
彼女から微かなシトラス系の良い匂いが漂ってくる。
すぅっと鼻腔を通る、いい匂いだ。素晴らしい。
その瞬間、
『閣下……お手を煩わせて、すみません』
視界に現れたヘルメが謝ってきた。
『お前の気持ちは十分に理解している。手加減もちゃんとしていたしな?』
『はい、閣下は至高なるお方なので、つい興奮してしまいました』
『おう。その気持ちに応えよう』
魔力を与えると視界から消えるヘルメ。
『んっ、あっん、ありがと、ご、ざいます』
魔力をたっぷりと注いでやった。
『んじゃ、これから頼むぞ』
『はい』
「ご主人様……何をしているのですか?」
ヴィーネがジト目で、レベッカとのイチャイチャを止めてきた。
「その、流れでな」
「な、なんでもないの――」
レベッカは恥ずかしいのか、離れていく。
「そうですか、なら、いいんです――」
ヴィーネは少し嫉妬しているのか。
俺の右腕に大きいおっぱいを寄せてくるように抱きついてくる。
まったく、可愛い奴だ。
「あぁーーーー、わたしが離れたらすぐにそういうことするんだっ」
「ん、ヴィーネ、大胆」
レベッカとエヴァはそう話しながらも近寄ってくると、ヴィーネの反対側から俺に抱きついてきた。
エヴァは車椅子なので、位置的に股間が近い……。
こりゃ、ハーレム過ぎてヤヴァイ。
『閣下の御業を見た彼女たちも分かってきたのでしょう。閣下の偉大さを、ふふふふっ』
ヘルメは怒らずに喜んでいる。
皆、激闘後のせいか、脳内からアドレナリンがどぱどぱ出た後遺症か、興奮が収まっていないようだ。
休憩後に魔宝地図の本番があるというのに。
ここは気を引き締めて、一応、彼女たちに友情ハグを返してから、厳しい顔を作る。
ほのぼのもここまでだ。
「……皆、疲れているだろ? そろそろ休もう。これから魔宝地図に挑戦するんだからな」
言葉での抱擁を意識して話す。
「うん、そうね」
「ん」
「はい」
レベッカ、エヴァ、ヴィーネの美人な方々は冒険者としての顔色を取り戻し、頷いてから離れていく。
俺も平幕テントの一つに腰を下ろし、休憩。
そういや、
辺りを見回すと、いた。
一緒になってパトロールを行っていた。
ま、放っておこう。
ついに、魔宝地図か。
宝箱と共に出現する守護者級とは、どんな奴なのだろうか。
地図を解読してもらったハンニバルは
ランダムとも話をしていたが……。
ま、今は少し横になってステータスを確認だ。
新しい戦闘職業とスキルをチェック。
ステータス。
名前:シュウヤ・カガリ
年齢:22
称号:水神ノ超仗者
種族:光魔ルシヴァル
戦闘職業:魔槍血鎖師
筋力22.3→22.9敏捷23.0→23.5体力20.7→21.2魔力26.3→26.9器用20.3→21.0精神28.3→29.2運11.2→11.3
状態:平穏
それなりに上がっている。
早速、進化した<魔槍血鎖師>をタッチ。
※魔槍血鎖師※
超難関の複雑なる条件を達成後、初めて到達できる唯一無二の無双なる槍使い。
鎖、武、血、魔力、精神、身体能力の全てが、最高水準とされる。
これだけだった。
唯一無二、他にだれも就いたことのない職らしい。
この惑星にどれくらいの人口があるのかわからないが、ものすごくレアなのは確かだろう。
もう、どこの説明をタッチしても、ウィンドウには表示されない。
次はスキルの確認だ。
スキルステータス。
取得スキル:<投擲>:<脳脊魔速>:<隠身>:<夜目>:<分泌吸の匂手>:<血鎖の饗宴>:<刺突>:<瞑想>:<生活魔法>:<導魔術>:<魔闘術>:<導想魔手>:<仙魔術>:<召喚術>:<古代魔法>:<紋章魔法>:<闇穿>:<闇穿・魔壊槍>:<言語魔法>:<光条の鎖槍>:<豪閃>:<血液加速>new:<始まりの夕闇>new:<夕闇の杭>new:<血鎖探訪>:new:<闇の次元血鎖>new
恒久スキル:<真祖の力>:<天賦の魔才>:<光闇の奔流>:<吸魂>:<不死能力>:<暗者適合>:<血魔力>:<眷族の宗主>:<超脳魔軽・感覚>:<魔闘術の心得>:<導魔術の心得>:<槍組手>:<鎖の念導>:<紋章魔造>:<水の即仗>:<精霊使役>:<神獣止水・翔>:<血道第一・開門>:<血道第二・開門>:<血道第三・開門>new:<因子彫増>new
エクストラスキル:<翻訳即是>:<光の授印>:<鎖の因子>:<脳魔脊髄革命>
かなりの数になったなぁ。
まずは新しく覚えた恒久スキルをチェック。
まずは<因子彫増>。
※因子彫増※
<鎖の因子>がもう一つ増える。
自分自身の身体ならば好きな場所に因子を増殖させることが可能。
ただし、<因子彫増>は一回のみでもう増えることはない。
派生元と思われるエクストラスキル<鎖の因子>をタッチ。
※鎖の因子※
→特殊派生破甲<血鎖の饗宴>
→<鎖の念導>
→特殊派生破突<光条の鎖槍>
→<因子彫増>
→特殊派生血探<血鎖探訪>
→特殊派生血闇<闇の次元血鎖>
→????
進化はしているし、まだ覚えられるようだ。
さて、<鎖の因子>はどこにつけるか。
決して、ふざけて、額、腹、尻、などにはつけない。
尻、額から<鎖>が飛び出すところを想像したら……。
かなり笑えるが、あくまで想像だけに留めておいた。
やはり、右手首が第一候補。
というか、そこしかないだろう。
アイテムボックスがある右手首には少し隙間があるから大丈夫だ。
<因子彫増>を発動させる。
目の前に不思議な水音が鳴り、左手と全く同じマークが浮かぶ。
……蛇のような鎖の螺旋だ。
右手首、掌の一部へ移るようにイメージした、瞬間。
右手の掌と手首の間に<鎖の因子>が刻まれた。
試しに、新しい因子マークの右手首から<鎖>を少し伸ばす。
おぉ、伸びた。成功だ。
従来の左手首にあるマークからも<鎖>を出現させる。
<鎖>が二つ宙に漂い、小さい知恵の輪を作り、メビウスの帯に変えては、軽く遊んだ。
ちゃんと腕のマークへ収斂しては伸びるし、使える。
<鎖>の先端、鋭いティアドロップ型同士を突き合わせて、ツンツクツン。
思えば、暗い地下を放浪していた時、この<鎖>によって俺は精神的にも肉体的にも助けられたんだよなぁ……ありがとうな、<鎖>。
<鎖>を操作して頷かせる。(おうよ)
と、そんな調子でテントの中で童心に返り、<鎖>遊びを続けていた。
さて、遊びはここまで。
次の新しいスキルをチェックだ。
※
光魔ルシヴァル血魔力系<血道第三・開門>により覚えた独自スキル。
血を使い、身体速度を加速させる。
まぁ名前通りでシンプル。だが、一番重要なスキルだと分かる。
血液を使った速度アップ。
これは魔脚に加えて、更なる引き出しが増えたのと同じ。
微妙なタイミング差を生み出せる。
近接戦におけるコンマ何秒かの駆け引き、アドバンテージを得るのは非常に大きい。戦いにおける全てだからな。
必殺技よりも重要かもしれない。
フハ、フハハハハッ、俺の槍技に組み込んでいける。
……さて、次をタッチ。
※
光魔ルシヴァル血魔力時空属性系<血道第三・開門>により覚えた特殊独自スキル。
闇の心象異次元世界を周囲に発生させる。その心象世界エリアに居る相手ならば自由に指定して精神侵食を開始し悪夢を植え付ける。更に、精神の抵抗値が低い場合、精神汚染された相手は瞬時に気が狂い死にいたる。
こりゃ、まさにヴァンパイア、しかも、普通じゃない技。
次をタッチ。
※
闇の次元世界を任意的に簡易出現させ、瞬時に闇杭を発生させる。
指定範囲は視界の範囲のみ。
また、<
なるほど、そのまんまだ。
次。
※
光魔ルシヴァル血魔力系、エクストラスキル<鎖の因子>、特殊派生血探。
血鎖に血を垂らすか血が付いた物体を鎖の先端で貫けば、その血に関するモノへ血鎖の先端が方向を示すだろう。
水を発見とか、鉱石発見ではない、探索系スキルか。
行方不明者を探すのにはぴったりだ。
私立探偵カガリの異世界探偵事務所を立ち上げるか?
助手はヴィーネ。
犯人はこの中にいるっ! 爺ちゃんの、これは違うか。
犯人はヤ○。とか、これも違うな。
さて、妄想は終わり、次もチェック。
※
光魔ルシヴァル血魔力時空属性系、及び、エクストラスキル<鎖の因子>、特殊派生血闇。
暗黒の次元世界を発生させた状態から、血鎖により心象次元ごと狙った標的を完全に引き裂く。
説明はこれだけでタッチしても詳細はでない。
でも分かりやすい。
時空属性が絡んだ<
限定されるが、<血鎖の饗宴>のパワーアップ版と考える。
早速、次の戦いで試してみたい。
へへ、楽しみだ。
そこでステータスを消して、両手を枕にしながら目を瞑っていく。
寝られないと思うが、少しだけ、<瞑想>しながら休憩だ。
◇◇◇◇
数時間後、皆、目を覚まし、メンバー全員が塔の入り口に集合していた。
前衛と後衛に分けて、配置済み。
因みに、俺は数分で<瞑想>を止めて目を覚まし、
「よし、この魔宝地図を使うぞ、皆、覚悟しろっ――後衛の準備もいいな」
大声で話す。
「「――ははっ」」
「はい」
「承知」
「頑張りますっ」
「――いいわぁー」
向かいの遠くに魔法使い系のメンバーは集まってもらっていた。
最初は距離を保つ作戦だ。
俺は頷くと、魔宝地図をアイテムボックスから出す。
Ⅳの文字と五層の文字がくっきりと浮かぶ。
二つの塔と墓場の絵が強調表示されX印がはっきりと目の前の位置と重なる。
あそこに地図を置けば、宝箱が出現するらしい。
魔宝地図を地面に置いた瞬間、その地面、空間から魔素が噴出。
――大きい金箱が出現した。
遅れて骨馬三頭を連れた車輪に尖った骨付きの古代戦車に乗った大型骸骨騎士が金箱の背後に出現。
不思議な音楽も響く。
音楽というか風か魔力の嵐的な奇妙な嘶きだ。
更に
重なるように金の宝箱の周りに出現。
重なりすぎて、モンスター同士でぶつかって倒れている。
瞬時に右手に魔槍杖を召喚。
一歩、二歩、風槍流の歩法から、湧いた瞬間の
魔槍杖の紅矛の<刺突>を喰らわせる。
紅矛が
貫かれた肋骨染みた太い魔骨が散る。
――魔槍杖を引き抜きながら一旦距離を取る。
神獣ロロディーヌは、六本の触手と尻尾を同時展開。
敵集団を遠くへ吹き飛ばしていた。
沸騎士たちも動く。
黒沸騎士が
盾と黒々しい蒸気を纏う鎧ごと、骨馬と衝突しつつ、
続いて、転倒した骨騎士の首を、赤沸騎士が刎ねた。
淀みのない無駄のない、凄い連携だ。
素晴らしいコンビネーション。
そこに
その絶妙のタイミングで――。
後方の後衛から放たれた氷礫魔法、光線矢、土礫魔法、円月輪、火球魔法が
突撃体勢だった
骨馬ごと
フォローに動く
俺は古代戦車に乗った大型骸骨騎士へ向けて左手から<鎖>を放った。
ところが、速い<鎖>の初撃を大型骨騎士はしゃがんで躱してきやがった。
何度も宙をくねらせ、弧を描くように<鎖>の先端を大型骨騎士へ当てようと操作するが、連続で避けてくる。
一撃でも<鎖>が直撃すれば、こっちのもんだと思ったが、甘かった。
大型のくせに、反応速度が異常に速い。
まぁいい。狙いを戦車に切り替えた。
<鎖>を骨の古代戦車へ当て貫き、一瞬で骨車輪へ何重も絡ませる。
宝箱周辺から右へ誘導させるように、骨の古代戦車に乗っている大型骨騎士ごと<鎖>を引っ張りあげて、俺も右へ移動していく。
骨の古代戦車に繋がれた骨馬たちが地面に衝突しながら転倒し、乗っていた大型骨騎士も地面に投げ出されていた。
よし、あの骨の古代戦車はもう使えないだろ。
あの戦車で突撃されていたら、皆、かなり混乱していたはずだ。
戦車から投げ飛ばされた大型骨騎士は立ち上がる気だ。
あまりダメージを受けていない様子。
四本の腕を使いつつ起き上がる。
頭蓋骨に罅が増えたように見えたが気のせいか。
漆黒の眼窩には炎炎としたオレンジ色が灯る。
俺は、その魔眼か不明なオレンジの双眸を睨む。
あの大型骨騎士をさっさと片付けて皆のところに合流しようか。
新スキルを試してなっ――。
前傾姿勢で走り出す。
「いくぞぉおおおおぉ」
吶喊。<
ヴァンパイア系の新スキル――。
<
――血魔力<血道第三・開門>。
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