3C
その後も、
『ここ、一方通行なのか分らんな……ショートカットっぽいんだが。』
『いいよ、いいよ。この奥は舗装が剥げてて、実質砂利道だからさ。跳ねてボディーに当たったりしたらことだよ。』
『じゃあ、ここでいいか。じゅうぶん気を付けてな。』
そうして。ハイスクールの頃と同じように、あっさり別れたのを思い出していた。次に会うのが何年後になるかも分からないが。バレンデルの支社?があんな近くにあるのだから、ひょっこり出くわすこともあるだろう。とはいえ――
『……じゅうぶんって?』
『ん、まあ。いろいろだから……』
『何がだよ?』
『解散したといっても、
『調査遺族会に、か?』
…………
『……ん。では、また。』
月のない夜空のもと。点在する街灯が頼りなのに、明るいとは言えず。一人ぼっちで歩くうちに、ニックの言い残したことが気になってきた。
(時々、僕を付け回してるのは。昔から思っていたように、連邦警察かもしれず……そうではなく、
なんだか、耳のほうが異常に敏感になってきていた。僕以外の、砂利を踏みしめる音が。どこからか聞こえてきやしないかと……。
かたん。 (ヒッ?)
5センチほど。垂直方向に僕を飛び上がらせた音は、あきらかに前方の十字路……の、右のほうから。その一度だけだったが。そこの角地には古タイヤが積み上がっていて、実際に足を踏み出してみないと。いったい何が音を立てたのか、そもそも何が居るのかすら分からないのだ。
一瞬、遠回りをしようかとも思ったが。出張所はすぐそこなのに、目の前の四辻を迂回して、別の道から街道に出ようとすると。後戻りする必要もあり、10分も余計にかかる計算だった。九割九分「気のせい」だろうから、間違いなく割に合わない。
(……ええい、かまうものか)
と、意を決して足を進める。
幸いにして。古タイヤの塔は乱雑に積まれてるだけに見えても、軽く持たれ掛かる程度で揺らいだりしないようだったから。それを利用して、そろりそろりとタイヤに隠れ乍ら様子を窺ったが。やはり、というか……そこまでと同じように殺風景な裏道には。怪しい人影など、ありはしなかった。
(なんだよ……おや?)
たしかに人影はなかったが、路上に止めてある白い車……に、見おぼえがあった。
『こういう中途半端な2ドア車は……「
出張所のパーキングで、偶に。いつの間にか停めてあって、ビルがよく持ち主を探している車だ。あれは……僕ですら、パーキングに入って来たことに気付かない位だから。出張所への来訪者が入れ代わり立ち代わりだった頃の話で、つまり。今日久しぶりに見たことになる。
(うちの関係者じゃないのかな……だとすると、無断で間借りされてたのか? えー……だとしたら、けしからんな)
でも。僕に「けしからんなァ!」と言われても、誰一人ビビらないのは確実であった。それに、目の前のこの車……左右のミラーはきちんと畳まれ、尾灯類も車内灯も点いておらず、歩き去ろうとするドライバーも見当たらないのでは。駐車禁止でもないこの道で、警官を呼ぶわけにもいかないから。せめて写真でも撮っておくかな?と、デイパックからカメラ付きの
(ま、いいか。――……って、ええ~?)
その四辻を後にして、街道へと出た僕は。出張所のパーキングに、
「どうして? ビルは……いったん、戻ってくるんじゃなかったかな。」
思い返すと、このときに。
「白い秘書車」の、運転席側の頭置き……ヘッド・レストレイントが、
しかし僕は。
こんな遅くまで居座っている、マンファリの様子のほうが気になっていた。エンジンが掛かっていて、何か音楽も鳴らしているようだが。
(ええー……酒盛りしてるよ?)
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