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ところで、僕に「
誰でも、
だから。前もって(他の方から)聞き出しておいた、その方のお好みの飲み物などお出しすると。
「ここの
――という反応が、かなりの頻度で返ってくるものだから。ボスやジェン等、
ところが。いつのまにか、僕を
例の
Q『次のスライドは、「第三階層:
――えっ。「番犬」?
A『はい。まず、皆さん。ご自分のコンピュータがクラッシュしたことありますよね?画面が固まって動かなくなることですが。そのとき、皆さんがどうされるかというと……』
Q『電源を入れ直したり……ですか?』
A『そうでしょう。先ほど申し上げた、ビットフリップなどが原因のクラッシュでは。再起動すれば跡形もなく……元通りコンピュータは動き始めます。でも、再起動できる人が誰も傍にいなかったらどうでしょう?実際、そういう状態にあるコンピュータもあるのです。例えば、よい例としてNUSAの火星探査船があります。』
そして、その無人探査船が。世界で初めてコンピュータに
被告ノヴァル側で多重保護の「第三階層」として挙げているウォッチドッグ機能のことを、敵側の専門家証人がこのようにとりあげるというのは。その後の展開も予想がつくというものだろう。
案の定。バイエル証人が解析した、2005年式ノヴァル・キャブラのエンジン制御システムでは。重要なプログラム・タスクであっても、
しかし。
A『ノヴァルの
Q『過負荷……というのは?』
A『
Q『自動車にとって、危険なのでしょうか?』
A『危険です。最大1.5秒もの間、ECMで行われるべき処理が殆ど進まないのですから。』
え、そんなに?……と、僕は驚いた。
ビルの受け売りだけど、ガソリン・エンジンというものは、アクセルを踏んでいないときでも、毎分1000回転以上まわしているのだ。毎秒に直して20回転ぐらいはいく計算だ。
1秒以上もECMがサボっていて、四基ある燃焼気筒…各シリンダーのそれぞれでこなすべき(1)吸気(2)圧縮(3)燃料噴射・点火・爆発・膨張、そして(4)排気という、合計四行程からなる燃焼サイクルには支障がないのだろうか?
ビルの説明を思いだすに、四行程のうち(1)と(2)と(4)は。シリンダーへの出入りが必要なピストンと、その反対側の燃焼室で開閉すべき吸気弁と排気弁が、エンジンの回転により
でも、この1.5秒の間は。アクセルの操作もスロットル開度へきちんと反映されないだろうし、過負荷から復帰してきて、あるときから突然反映されるようになるというのは。ECMのプロセッサからしてみれば、アクセルの踏み込み量が「ワープ」しているようなものだろうから、相当すごい状態のように思えた。
残念なことに。こうした話は、直接尋問を行った原告側のバッカニア代理人も、反対尋問を行った被告側の
話が逸れたけど、キャブラのECMがこういった設計になってしまった事情を、バイエル氏は次のように推測していた。
A『これは私の考えですが、プロセッサがしばしば過負荷に陥ることで、ノヴァルとしても許容せざるを得なくなって、ウォッチドッグを弱めていったのだと読みとれます。』
Q『過負荷を解消しようとする、のではなく……ですか?』
A『要はですね、ECMにやらせたい
ふーん、なるほど。
そうね。そうかも。
あーあ……あーあ。
……
…………
………………まあ、とにかく。
バイエル氏が、最初の解析報告書を裁判所に提出したのは……今から二年ほど前のことで。
僕が
そうして放置されてきた
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