24
誰にでも居ると思うのだけど。
嫌ってるとか、嫌われているとか…とは別の次元で。自分とは全然ペースの合わないタイプ……の人が。
「
「……!」
呼ばれた
「今……ご到着ですか、ダイクさん。」
「いったい、こっちの暑さは何なの……?」
「事務所の中は快適ですよ、
筆頭パートナーであるマリエル・ダイク弁護士。この方、開拓時代の肝っ玉母さんがダークスーツでガッチリと武装してる様で、なんだか落ち着かない気持ちになるのだ。
なので、いつでも挨拶できるように。でも、目立たないように。ひっそりとBBLさんの影に隠れていた……が。
きちっとセットしたショートカットに収まった、年齢を感じさせない笑顔が。あっさりとBBLさんの横をすり抜けてきて、ロックオンされてしまった。
「おや? マットロウさんも、
「……は、はいぃ!」
幸い、BBLさんは助手席で座ったままだったので。僕にそれ以上のことは起こらなかったのだが。代わりに標的となった(?)ビルの……額に浮かぶ汗が、暑さとは何か別の原因によるものに変わっていくところを、僕は見てしまった。
(ああ、ビルが犠牲に。アーメン……ダイクさんのとこ、夫婦そろって『ハグ魔』なんだから。)
最初にお会いしたのが、ここの開設直後でバタバタしてた頃だったか……珍しく東海岸のほうに行っていたときで。
旦那さんのほうも、別のロー・ファームのパートナー弁護士だそうで。どういう場だったか思い出せないけど、代わる代わるハグされてもう大変だった。
『彼女には気をつけなさいね。』
――と、囁かれたのは、そのときだったと思うのだが。そのころには、ロージーも、ジェンも……そして三年前に退職したサラも。
「さあビル、ダイクさんを中へ。ここは陽射しが強すぎる。」
「少し太ったんじゃない、ビル?」
「あはは……おっと。そちらのバッグも、お持ちしますよ。」
「ありがとう。じゃあBBL、また後で。」
そのやりとりを、ちょっと胸をなで下ろしながら見ていた僕の目に。何か、妙なものが飛び込んできた。バーガンディ・レッドの中に
『
すぐに、只の模様に戻った……と思ったら、それも消えて、古いSUVのお尻が映し出された。
それでようやく、運転手側のサイド・ミラーを見ていると気づいて。BBL氏がドアを閉じていく途中で、隣に停まったSUV――ジェンの「リワンゴD」の内装が写ったのだろう、と。
そう、ジェンは何時も。パーキングに停めたSUVで、車内にカーテンのような布を下げて「目隠し」にしていたのだ。
その生地は、模様があると気づかない
何故かといえば、彼女の身につけるものには、大抵その『
(鏡に反射して、文字に見えるようになったのだろうか?)
BBLさんの肩越しに見ても、リワンゴの車内に下げられた布を覆い尽くしているのは……よくある
まあ。そのように読めたというのも一瞬だし、気のせいかもしれない。
そうそう。マリエル・ダイク所長は?――といえば、既に事務所の内に入っていて。この暑さで小脇に抱えてたショールを、たぶんビルの勧めで(?)「販促くん」の「首」に掛けてあげているところだった。
それだけで猛烈に暑苦しくなった「販促くん」の様子と、携帯電話を「徴収」しようとしてハグに捕まったファーレル主任の表情に。笑いを堪えているうちに、『
そんな状況を挟んだこともあって。
BBLさんから投げかけられた質問は、かなり唐突なものと感じた。
「きみの業界で、『コーディング規約』は普通なのか?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。