第46話 臨勤・パーク①
他の職種は知らないが、陸上自衛隊の曹・士には訓練の他に【臨時勤務】というものがある。メジャーなのが
駐屯地等の消火活動に従事する【駐屯地消防隊】、
駐屯地の食堂で調理する【糧食班】、
隊員浴場の清掃とボイラーの監視に努める【
・・である。
他にも新隊員教育隊では助教や班付等も臨時勤務にあたり、部隊内の自動車教習所に出向する事もあれば、プレミアなのが連隊の中から一人だけ優秀な隊員が選ばれる【連隊長伝令】もある。
*因みに、先の話で登場した当直や警衛隊は【特別勤務】であって臨時勤務ではない。臨時勤務とは、原隊から一時的に離れて別の所属の指揮下で勤務する事を言う。
とまあ、これだけ書けばいかに普通科隊員といえどただ銃持って野原を駆けずり回ってるだけではないとお分かり頂けただろうか。
てなわけで今回は臨時勤務、略して【
戦闘訓練で演習場から帰って来た武村は、パジェロを中隊パーク(駐車場)に停めて車両キーを事務室に戻す所で中隊先任の
『はて、何がバレたんだろう?』
戦闘帽を脱ぎ、手を後ろに組んで(休め)の姿勢で先任の前に立ち、次の言葉を待つ。
「おぉ、武村な。悪いんだけど、来月から消防隊に行ってくれ」
「消防隊・・ですか?」
駐屯地内に消防隊がある事は知っていたが、あれは業務隊かどこかの部隊が専門でやっているのかと思っていた武村は、頭にクエスチョンマークが浮かんでいた。
「武村、まさかお前、消防隊の事知らんのか?」
「いえ、警衛所と同じ建物にあるのは知ってましたが、そこに勤務するとは思ってなかったので」
「おいおい、新教隊の座学で臨時勤務の事は習ったろ?」
車両陸曹の石神2曹がニヤニヤしながら横槍を入れるので、武村は「そうでしたっけ?」とトボけた。・・・習ったかなぁ、と思いだそうとするが無駄だった。
「消防隊の勤務は各中隊の持ち回りでな、3カ月毎に交代でやってるんだが今回はウチから一人差し出さなきゃならなくなってな」
「陸曹でも陸士でもいいんだが、ほら、陸曹は人手が少ないし陸士でもドライバーで消防車操縦できそうな奴っていうと少なくて」
最後の『少なくて』が武村の自尊心をくすぐった。
「臨勤先で車両事故やらかされても困るから、安牌のお前に白羽の矢をたてたんだが、どうだ?やってくれるか?」
なんでここまで持ち上げる?と武村は照れずにはいられなかった。
『かしこま☆』とは口に出さなかったが、脱帽時の敬礼(15度の敬礼)をして
「消防隊勤務、了解しました」
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