第130話 夕暮れ
街が燃えている様を、私は綺麗だと思った。それは幼い私が見た、何の変哲もない夕焼けだったのだけれど、私の心に強く焼き付いていて、それが実際に街が燃える光景でなくて、ただの自然現象だったことを母から教えられて、私は激しく落胆したのを覚えている。
燃えるという事は、浄化される事である、と私は思った。そうでなければ、あの夕焼けの綺麗さは、説明できないものだから。
私は、その夜、夢を見た。どこか遠く、遠くの街で、全てを焼き尽くすような炎が燃え盛るのを。それを私は、どこか遠くで眺めていて、それが燃えるような夕陽が沈んでゆく様だと思って目に焼き付けるのを。その街が、夕陽に焼かれねばならぬほど、罪にまみれた場所であるのを。すべてが焼き尽くされたどこか遠くの街の罪が燃やされて、灰になるまで浄化されるのを。そしてそれは、晴れた日の夕暮れ時には、何度でも、飽きることなく繰り返される。
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