第072話 思い出

美しい、夢のような時間だった。私たちは、みな、同じ志を持つ仲間だった。ともに笑い、ともに泣き、ともに喜び、ともに悲しんだ。たとえ離れていたとしても、心は通じ合っていただろう。


私たちは、ともに戦った。ある時は勇敢に。ある時は苦しみながら。仲間たちは、誰も死ぬことは無かったけれど、それでも去ってゆくものは居た。ひとり去り、ふたり去り、そうして、気づくと、あれほど多かった仲間たちは残らず消えてしまい、廃墟のような場所に、老いぼれた、小汚い老人、つまり私だけが残っていた。


彼らは、幽霊だったのだろうか。だが、確かにそこにいたのだ。そして、きっと触れることも出来たはずだ・・・。


何もない。何も残っていない。彼らの思い出すら、消えてなくなってしまうかと思うと、恐ろしかった。それはあの時から、ほんの数瞬だったというのに。あの、美しい、夢のような時間から。

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