第233話 崇高なケル君のステータスでございます!

「えーっと、種は予定通り超越種だね!」

【ゾー、贅沢を言えばアイリスと一緒が良かったんだゾ】

「ふむ、アイリスが珍しすぎたせいで凄みは少ないかもしれぬが、超越種だって本来ならば普通の魔物使いがその人生の間に一匹仲間にできれば上出来なんじゃぞ?」



 私は例外中の例外だから仕方ない。もしケル君も極至種だったとしたらそれこそ歴史的大事件でしょう。そもそも極至種を仲魔にしている時点でそれに該当するらしいけどね。



「えへへ。あ、あとランクはBの中だね。これはアイリスちゃんより一段階高いね」

「グランヘルドッグならCの上じゃからな。マグニフィセントというのがグランより格上なんじゃろうて」



 Bランクの中で超越種となると、Aランクの下の普通種と同等の強さってことになる。私と同じね。

 これからは私だけでなく、ケル君もAランクと1対1で戦って勝てる見込みがあるということ。これは大きい。



「そしてステータスはMPと攻撃と魔力と素早さが高いみたい! 器用もそこそこ。でもHPと防御は普通かなぁ」

「つまりアイリスちゃんとはまた違ったタイプってわけだ! アイリスちゃんはガッチガチの防御型だもんね」

「うん! 多分、素早さだけなら魔物の姿の今のアイリスちゃんより上なんじゃないかな。攻撃回避するの上手だし、身軽さを生かすのがいいと思う!」

【やっぱりそんな感じなんだゾ? でも逆にオイラがアイリスより防御高くてガチガチだったら魔物的におかしいゾ】

「ふふ、だねっ!」



 つまりケル君は魔法を重視したリンネちゃんみたいなタイプってことか。私の壁としての役割と盾の出番が増えそうね。あと回復魔法も。



「それで肝心の特性と特技はなんなのさ」

「結構たくさんあるからね、一つ一つ見てくよ」



 まず特技はケル君の狙い通り、ほとんどの技が進化したことにより一段階上のものになっていたみたい。全属性の上級魔法が最上級魔法になっているのはもちろん、進化前にひたすら練習していた体技系も一通り一つ上のものに。

 それどころか……。



「あれ、もしかしたらアイリスちゃんより特技多いかも」

「ほんとですか?」

「うん。そうだよ、よく見たら回復魔法と補助魔法以外の魔法は全部アイリスちゃんと同じだし、アイリスちゃんの拳を使った技でケルに当てはまるものは爪や牙の二通りに分かれてるし、それに……」

「それに?」

「どうやらケルってば、魔流の気の技もアイリスちゃんとは同等になっているどころか……身体中に魔法をまとう特技の進化版があるから……」



 本当にケル君に技の数で抜かされてしまったようだ。ロモンちゃん曰く、私がリンネちゃんと一緒に練習した剣術特技を合わせてもケル君の方が3つか4つ多いらしい。鼻に関する特技も増えてるようだし。

 あれ、なんだかとっても複雑な気分。負けて悔しいのかしら? 

 それよりステータス画面がごちゃごちゃしてて見にくいな……なんて考えてたけど、ケル君はそれ以上にステータスがすごいことになってるわけね。さすが大天才のケル君。



【ゾ! これではアイリスに勝ったのかゾ? なんだか嬉しいんだゾ! この魔流創気っていうのも使い勝手良さそうだし】

「それは本当に使い勝手がいいですよ、ケル君ならきっと使いこなせるはずです」

「ぼく達もはやく覚えたいんだけどなー」

「魔物の方が覚えやすいとかってあるのかな?」

「アイリスちゃんが独自で開発した特技じゃからな、ワシも分からん」



 でもこれで、ケル君はまだBランクだけど擬似的に頭を3つ作ってケルベロスの真似事とかできるんじゃないかしら。頭の回転の速さなら人間だったとしても天才レベルのケル君だから相当使いこなしてくれるはず。



「むむぅ、まあ、その話は今度でいいか。ロモン、最後にケルの特性を見てよ!」

「うん! えーっとね……」



 ケル君の特性も前回よりかなり増えたらしい。


 まずは『超越した光の法』という特性で、これはいつも通り該当する属性の魔法や体技の効果を高め、自身の光属性に対する耐性をあげるというもの。

 そして『超越した知能』。これはおそらく私の『極みに至る知能』の超越種互換版でしょうケル君にはぴったりのものね。

 次に『超越した瞬足』。これはステータス上の素早さよりも移動に関してははやくすることができ、またどれだけ走っても疲れなくなるというものだった。

 

 ここまでが超越種として手に入れた特性。

 次に種族(魔物としての存在)として手に入れた特性は一つ。

『天界の番犬』というもので、なんでも火・雷・光属性の特技の威力を上げ、さらにそれら3つの属性によるダメージは自身の最高威力の技を超えるもの以外は受け付けないのだとか。

 どうやらケル君の新しい光る体毛から発生する特性みたいね。


 最後にケル君個人の特性として、3つ。

 『睡眠の凌駕』という特性は寝ている間に自身の体を自然治癒させ、さらに普通よりMPの回復速度などを5倍にする上に、寝た時間だけ起きた後、魔法攻撃力が高くすることができるのだとか(発動は任意)。よく眠ってるケル君らしい特性。

『五感の凌駕』は自身の五感を好きな時に決められた限度だけ鋭くさせることができるらしい。視力、聴覚、嗅覚の増強が望める。

 最後の一つが『天の才』というもので、内容的には『超越した知能』と同じだったけど、効果が重複するらしい。

 さすがケル君、やはり天才。



「ふむ、超越種とだけあって効果がすごいものが多いの」

「だね! アイリスちゃんにも引けをとらないようなものばっかり!」

【ゾー、照れるんだゾ。でもこれで今日からいつでもぐっすり眠ることを正当化できるんだゾ! とても嬉しいんだゾ】

「寝坊助さんだったからそんな特性手に入れたんだと思うよー」

【ゾー……!】



 リンネちゃんのいう通りね。

 それからしっかりとした測定はすべて終わり、ケル君の進化を見送るという一大イベントが終了した。

 おじいさんは台所から大皿に入った大量の干し肉を持ってくる。



「その図体だとちと足りなかったかな?」

【大丈夫だゾ】



 ケル君はすぐさま幼体化すると、大皿に向かって顔をつっこんだ。よかった、幼体化はやっぱり可愛いケル君のままだ。嬉しそうに尻尾をふって干し肉を頬張っている。



「もー、進化したのにケルは何も変わらないなぁ」

【そんなに簡単に性格とかかわったら怖いんだゾ。進化していきなり大人になるわけないんだゾ!】

「そりゃそうだけど……」



 それにしてもケル君の身体は幼体化してもしっかりと日に当たればキラキラとなびく。なんだか暖かそう。

 全く同じことを考えていたのか、ロモンちゃんが夢中になって干し肉を食べてるケル君を後ろから抱きしめた。



【ンゾッ!?】

「わぁ……すごい、本当にあったかい……!」

【やめるんだゾ、ロモン! 食べづらいんだゾ!】

「干したばっかりの洗濯物みたいな匂いする……」

【ゾー! はなして!はなして!】



 結局ケル君はそのあとリンネちゃんにも抱きしめられ、私も便乗したお陰で干し肉を再び食べ始められたのは10分後だった。 

 にしても本当にあそこまで暖かいとは。冬になったら服に忍ばせて歩くのもいいかも……。

 



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