第123話 ダンジョンクリアした後でございます!

 眩い光に包まれて…。

 


「……ここはどこかな?」

「…普通に外みたいだね」



 私達はどこかに放出された。

 正直、いまは夜中だし、ここは森っぽいから周囲がどうなってるかサッパリ検討がつかないの。



「ちかくに目印になるものないですかね?」

「んー、よくわかんないなぁ」



 私達3人でキョロキョロと辺りを見渡して見ても特になしもない。木だけ。

 本当ならここら辺にダンジョンを進んでる最中だった他の人が転がってたりするんだけどなぁ。



「どうやら、いまの時間、私達以外に誰もダンジョンに潜ってなかったか…他の場所に飛ばされたみたいですね。探知でも他人が見つかりません」



 誰か他の人が居たら、ここがダンジョンがあった場所だってわかるんだけど。ごく稀にランダムに別の場所まで飛ばされることもあるらしいからね。



「そっか、なら仕方ないよね」

「転移魔法陣で帰ろうね」



 リンネちゃんが私に向かっててを伸ばしてくるから、その手を握る。瞬間、私達の身体は転移して城下町門前に。

 本当に転移魔法陣って便利。

 これのおかげで運搬業が盛んになったり、避難しやすくなったり、遭難なんてほぼしなくなったりと、素晴らしいことしかないわ。


 門兵さん達に身分証明書を提示し、門を開けてもらって街の中に入った私達は、これからどうするかを、とりあえず宿に向けて歩きながら話し合うの。



「今日はもうお風呂はいって寝ちゃう? あ、もちろんお夕飯食べてからね!」

「お昼は全力で食べたから、お夕飯は少しでいいかな」



 この娘達は本当に食べるのが好きね。

 でも先にやることがあると私は思うの。



「…いえ、まずはギルドに行ってダンジョンをクリアしてきたことをギルドマスターに話しましょう。私達が何かしてる間にあのダンジョンの跡地に行く者が居たら、その人が可哀想ですから。もうあのダンジョンは無いのだということを伝えてもらうためにも」

「確かにその方がいいかも!」



 そういうわけで私達は宿から進路方向を変更し、ギルドへ向かった。割とすぐ近くまで来てたみたいでそんなに歩かずに済んだかな。いつものように気軽に入る感覚で私はドアを押し開けた。



「こんばんわ!」

「おお、アイリスちゃん、今日も来たんだね! …ん、今日は双子ちゃん達も一緒なのかい!?」



 親しくしてくれている知り合いの冒険者がそう声をかけてくれる。それを聞いていた他の人達が、私にそれぞれ挨拶を返して来た。

 まあ、これは私にとってのいつものことなんだけれど。

 ただいつもと違うのはこんな遅い時間帯にロモンちゃんとリンネちゃんが居ることね。



「(…夜中に出入りしてのは察してたけど、こんな風になってたなんて)」

「(アイリスちゃん人気者だね。私の仲魔なのに…なんか嫉妬しちゃう)」



 ロモンちゃんとリンネちゃんは、珍しいからと頻繁に私の知り合い達から声をかけられる中、耳打ちをしてきた。

 ロモンちゃんに嫉妬されるのなんだか嬉しいです。



「おおっ、本当に珍しいな。アイリスがその二人連れてこんな時間にやってくるなんて」



 やはりいつも通りに酒の臭いを漂わせながらギルドマスターがやってきた。



「こんばんわ。いやちょっと用事がありまして」

「へぇ…その3人でどこかクエストに?」

「いえ、違うんですよ。ぼく達ダンジョン探索に行ってたんです!」



 『ほお』とつぶやきながらお酒を呷るギルドマスター。

 会話中にお酒を飲むのはいつものことよね。



「ここら近辺のダンジョンっつったら…『光結晶のダンジョン』か『天の道のダンジョン』か」



 『光結晶のダンジョン』の方は国が管理していて、お金を払って入場するタイプのダンジョン。

 知り合い達から聞いた話じゃ、光魔法を使うゴブリンとかが出現するのだとか。 

 まあ、今は行く気ないし、私たちには関係ない。



「『天の道のダンジョン』の方ですねっ」

「はあ、『天の道のダンジョン』か。気をつけろよ? あそこからハードネスレディバが出るって話だ。相当手強いぞ? まあアイリスがいればどうとでもできるがな!」



 グビリ、といい音を立ててまた酒を飲むギルドマスター。そんなギルドマスターに対して、リンネちゃんはニヤニヤしながら答えるの。



「ええ、本当にハードネスレディバは大変でしたよ。アイリスちゃんが居なくて、ぼくとロモンだけだったら無理でした!」

「お、遭遇したか。大変だったろう」

「はい! おかげでクリアできちゃいました!」



 その一言に、ギルドマスターは目をギョッとさせる。

 リンネちゃんとロモンちゃんがギルドマスターと話してる間に、私に絡んできていた酔っ払ってる女冒険者もそれを聞いたようで、ピタリと固まった。



「クリア……したのか!?」

「はい!」

「3人だけで…?」

「はい!」



 目を見開いたまま、ギルドマスターは私たちの顔をそれぞれ見る。そしてしみじみと口を開いた。



「いや、さすがはあの二人の娘だなぁ……」

「「えへへへへ」」



 照れるタイミングが全く一緒なのが可愛い。

 そして今の話を聞きつけた冒険者達が、私たちの元にこぞってやってきた。やっぱりみんなお宝とか大好きなのね。



「ボスは! ボスの魔物はどんなのだった!」

「できるなら破片でもいいから見せて!」



 やっぱりボスの魔物はどんなのが出たか気になるよね。

 普段普通の人は、ボスがいる場所までたどり着くのも大変なわけだし。



「ボスはプロミネンスレディバという魔物の亜種…あるいはダンジョン変形体でした。形ほぼそのまま残ってますが、体が最初から燃えてるタイプの魔物のため、ここに出すと建物が燃えます」

「はぁ…流石にそれは困るな」



 いつの間にか羊皮紙を用意してメモをし始めたギルドマスターがそう呟く。しみじみと。



「お宝は! 宝はどうだった!」

「アーティファクトはあったの!?」

「ぬおおお! 見せてくれぇい!」



 これがどうやらみんな一番気になるみたい。

 さっきの質問と熱の入り方が違う。

 手に入れたアーティファクトは、基本的にみんな自慢するの。

 これで自分がより強くなったことを証明したり、ただ単に自慢したかったりするだけの場合が多いけどね。

 本来の目的としては一般的にどんなアーティファクトか周囲に知らしめて、盗まれないようにするためなんだけど。

 ほら、そのアーティファクトを他の人が持ってたら怪しいじゃない。



「ロモンちゃん」

「うん!」



 ロモンちゃんは自分のスペーカウの袋から、例の盾を取り出した。



「ォォオオオオォォォ!!」

「こんな間近でアーティファクト見たの初めてだ!」

「これがモノホンのアーティファクトっ!」

「すげぇ…有り難や…有り難や…」



 基本的にアーティファクトを自力で手に入れた冒険者は将来的に大成功を収める例が多いから、こうして崇める人も多い。なんだか私もあの小さな盾が神々しく見えてきたかも。

 ……まあ、アーティファクトを手に入れらる時点で相当な実力者だし、そんな人が強力なアーティファクトを手に入れたらさらに成功を収めるようになるのは当たり前のことかもしれないけどね。



「んじゃあ、今はその帰りなのか」

「はい、そうです! 明日あたりにでも、どこかで効果とかを鑑定してもらおうかなーって思ってます」



 ちやほやされて少し照れてるリンネちゃんが、ギルドマスターに答えた。



「へぇ、俺もちったぁできるけどよ、あんまり得意じゃねぇから、隣の店で見てもらえよな」

「はい、そうします!」



 私たちの間の話では、明日、見てもらおうということになっている。今から効果が楽しみで仕方ない。ふふふ。

 ……っと、いけない。

 そろそろもう遅い時間か。

 私はもう成長しちゃってるから構わないけれど、ロモンちゃんとリンネちゃんは成長途中。

 早めに寝てもらわなきゃね。

 胸が大きくならない。……お母さんがああだから心配ないとは思うけど。



「すいません、そろそろお暇しますね」



 ロモンちゃんとリンネちゃんも、お腹が空いてきたようで、それに賛成してくれた。

 ギルドでご飯食べても良かったんだけど、いかんせん人が多いし。

 ギルドマスターに、盾の効果がわかったら報告すると約束してから、私達は夜の街で、どこか(健全な)飲食店を探してそこで遅い夕飯をとったの。

 


######


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