第46話 私達の日常でございます

 ふう、今日も中々の収穫だったなぁ。

 まぁ、やっぱり一番はの収穫はハードネスレディバだけどね。

 なんてったってハードネスレディバは現存するレディバ属の中で一番強いんだよ、Bランクなだけにね…。

 私は攻撃は一切受けずに一方的になぐってただけだけど、Bランクの冒険者パーティをあそこまで追い詰めるのはやっぱりBランクの魔物だからできることだよね!


 宿に戻った私はいつも通り二人を起こさないようにそろーりそろーりと部屋に入る。

 ベットの上ではリンネちゃんがおへそを出して寝ていた。

 仕方がないから5分間凝視した後に布団をかけておいたよ。私、優しいね。


 

「おはよ、アイリスちゃん」

「おはよー」

【おはようございます、お二人とも】



 いつも通りの時間に二人は起きてきた。

 無論、掃除・洗濯・朝食準備はすべて済ましてある。

 二人はテーブルにつき、朝食をモグモグと食べ始めた。



「今日も美味しいよ、アイリスちゃん!」

「アイリスちゃん、いつも早く起きて作ってくれてるもんね、ありがとう」

【ふふ、どういたしまして】



 二人が朝食を食べ終われば、ギルドに行き、依頼を選ぶ。

 これもいつも通りの事。

 最近、私達は1日にそこそこ稼ぐ、やり手の新米冒険者だと周りに認識されてるっぽい。

 いわゆる期待の新人ってやつ?


 しかし、今朝の依頼が貼られる掲示板には、すでにFランクの依頼はなくなっていた。

 ありゃ、今日は依頼が少なかったのかな?


 一応、ギルドが用意している新米冒険者用依頼(薬草集めとか)があり、全てFランクだからいつでも受けられるんだけれど、いかんせん、報酬が安いんだ。



「あぁ……ないぃ……どうする? ロモン、Eランクの依頼…受けてみる?」

「そだね…アイリスちゃんはどう思う? 一つ上のランクだけど…受けるべきかな?」

【そうですね、今日だけと言わず、どんどんと上のランクの仕事を受けた方がいいのではないでしょうか】



 そうなのだ。

 今まで私達は適正なランクの仕事しか手を出していない。

 理由はわからない。

 謎な流れでいつもはFランクの仕事しか選んでなかったんだよ。

 簡単に終わっちゃうから、1日に2つ依頼を受けるときもあった。

 

 

「よし、じゃあEランク受けちゃおう」

「うん! どれがいいかなぁ」



 二人はEランクの掲示板へと目を移し、依頼を選び始めた。

 Fランクの依頼と違って、討伐系の依頼が多い気がする。

 例えばFランクの魔物を10匹討伐だとか、Eランクの魔物を1匹、他の冒険者と協力して討伐とかだね。


 

「これ、どうかな?」

「ん、これ? いいと思う」



 しばらくして、ロモンちゃんが選んだのは『ゴブリン10匹討伐』。

 畑を荒らすゴブリンを10匹程討伐してほしいという依頼で、報酬は65000ストン。

 ゴブリンの素材は冒険者の物…か。

 私もこれでいいと思う。


 その紙を受付に提出し、さっそく依頼現場へと向かった。

 馬車でおおよそ2時間移動した先にある村なんだ。



 到着次第、さっそくその依頼通りの内容をこなし、ゴブリンの死骸を回収。

 これにて依頼は完了!

 移動時間2時間、村に着いてから達成までの時間15分ってところかな。

 そしてまた、2時間かけて城下町へと戻る。

 ……すごく、この移動の時間が無駄な気がするのは何故?

 リンネちゃんも馬車の中で、『……今度、転移魔法陣買おうか』と言っていた。



 依頼をこなしたから、ゴブリンの耳を10個、受付に提出し、報酬を貰った。

 これで今日の稼ぎは85000ストン以上は確定だね!

 だいたい、Fランクの依頼2回〜3回分の稼ぎだ。


 報酬金を受け取ってすぐに、リンネちゃんがこんな提案をしてきた。



「……やっぱり、今日、転移魔法陣を買おう。ね、二人とも、どうかな?」

【私も買った方がいいと思います】

「二人がそうした方がいいって思うんだったらその方がいいんだよ! 転移魔法陣、買っちゃおう!」



 結局、ゴブリンの死骸を売った後に先ほどの報酬のお金で転移魔法陣一組を買った。

 二枚入ってるということで、ロモンちゃんとリンネちゃんが二人でその転移魔法陣を1枚ずつ持つということになった。

 まぁ、結局は二人とも城下町前に魔法陣を貼ったんだけどね。


 魔法陣を貼り終わった後はすでに午後1時は過ぎていたから、お昼ご飯にパンケーキを二人は食べていた。



 うーん、今日も暇だなぁ……。

 また、夜中まですることないや。

 というか、城下町に来てからほとんど毎日、このくらいの時間から晩御飯を作るまでやることがない。

 うーん、どうしよう、なにしよう。

 またお菓子つくる?

 ううん、お菓子つくるにも材料費があるし、そうそうしょっちゅうは作れない。


 お昼ご飯を食べてから出掛けちゃったロモンちゃんとリンネちゃんの跡をつけて、なにをしてるか見る?

 ……………そうしよう。


 私はローブを羽織り、隠密を発動させ、探知で二人を探した。

 まだ出掛けて7分しか経ってなかったから、全速力で走れば追いつくだろうね。



◆◆◆



 家を出てって3分。

 二人に追いつき、今、物陰に隠れながら尾行してる。

 おお、街中にいてもやっぱりあの二人は目立つくらい可愛いなぁ……。

 ほら、通行人も一回は振り返って二人を見てる。

 どうだ、うちの双子姉妹は可愛いだろ?

 でもナンパしちゃダメよ。


 おっと、二人はアクセサリーショップに入っていったぞぉ……。

 もちろん、二人の跡を追ってそのお店へと入る。

 何かを話しているみたいだから、よぉく耳を澄まして会話を盗み聞きしてみた。



「これかわいいー!」

「ねー、ほんと。あ、こっちもかわいい」

「ほんとだー」



 ゆるい…なんとゆるくて年相応な会話なんだ。

 かわいい!


 と、そんなかわいい二人に感激していたら店をいつの間にやら出ちゃったみたい。

 また、気配を消してついていく。


 次に入ったのは武器屋だね。

 リンネちゃんはやっぱり、剣を中心に、武器を眺めているみたい。

 どんなのが好みかな、リンネちゃん。

 ここでバッチリ観察して、リンネちゃんが欲しがりそうな武器を把握しておかないと。


 およそ70分、リンネちゃんを観察してわかったことは、リンネちゃんの武器の趣味は装飾などが華美の女の子らしかったりするやつより、性能重視のやつが好みだってことだね。

 うむ、記憶したぞ!


 ちなみにロモンちゃんはずっと杖をみてた。

 ロモンちゃんのためにも武器を買わないといけないなー。

 持ってるだけでも様になるもんね。


 二人は特になにも買わずにその店を出て、次に入ったのはペットショップ……。

 え、私がいるじゃん。二人とも、私じゃだめなの?

 くそっ、二人が帰ってきたらすこしだけ拗ねてやる。

 

 あ、あ、ロモンちゃんとリンネちゃんの二人ともがハムスターみたいな小動物を手でもって満面の笑みを浮かべながら『かわいい』なんて言ってるぅぅ!?

 おのれぇ…おのれぇぇぇっ!!

 私もやってもらいたい……餌を口まで運んでもらったり、指で優しくナデナデとかしてもらいたい……!

 そいえばここのところ撫でてもらってない!

 くそう!


 おっと、また別の店へ行くみたいだ。

 今度は喫茶店に入っていったね。

 二人ともがここら辺で若い子にはやりのニードミルクを頼んでる。

 あぁ、そういえば今日、ギルドで女性冒険者がわりかし大きな声で『美味しかった』って話してたし、それで飲みたくなったのかな。


 あ、二人とも一口飲んで顔をしかめた。

 噂って、あてにならない時あるもんね、しょーがないね。

 でもちゃんと頼んだものは全部飲むのは良いことだぞ!


 喫茶店を出た後に入ってったのは服屋さんか。

 どうやら帽子を重点的に見てるみたいだね。

 

 それにしても、なんかブカブカの大きな帽子ばかり選んでるような気がする。

 なんでだろ……?

 ちょっとまた、盗み聞きしてみようかな。



「これ、アイリスちゃんに似合うかな?」

「んん、アイリスちゃん、そういうのよりこっちが似合う気がする」

「発想を変えて、これとか?」

「いやっ……違うのが良いと思う。もっと女の子らしいのに……」



 ふぇ……嬉しいよぅ!

 別に買うわけじゃないみたいだけど、私のためにも何かを選んでくれるってとが嬉しい!

 うん、うん。拗ねるのはやめだ、やめ。

 さっさと帰って夕飯の準備をしようっと。


 今日は二人の好きなチーズたっぷりのグラタンにしよーっと!



【特技『良聴』を習得した】

【特技『隠密』が『大隠密』に進化した】



 うは、マジか。



◆◆◆



「「ただいまー」

【おかえりなさいませ。今、晩御飯を作ってますからね】

「夕飯はなぁに?」

【グラタンです】

「ほんと!? やったー!」



 二人はとても喜んでいるみたいだ。

 チーズ好きだもんね、本当。


 夕飯ができた。

 ロモンちゃんが一口チーズと一緒に具を口にフーフーしながら放り込むのも、見てて楽しい。

 リンネちゃんは一気に口に入れちゃって扱ったのか、慌てて飲み物を口に流し込んでいる。


 夕飯を食べたあとはいつも通りのお風呂タイム。眼福、眼福。

 最近、二人の胸が前より大きくなった気がするんだ。

 触って確かめたいぞ!……そんなセクハラはしないし、したことないけどね。

 ……ほんとだよ?


 んん、あぁ、そうだ。

 あのナデナデされてたハムスターみたいに私もこのお風呂場で撫でて貰うようにおねだりしてみよう。

 やっぱり、私も撫でて欲しい。

 その細くて綺麗な手で、さぁ!



【お二人とも、私、急に頭を撫でて欲しくなりました】

「本当に急だね、いいよ、いつでも撫でてあげるよ! よしよし」

「ぼくもー。よしよし。いつもありがとね」



 ふははははは、撫でてもらうのはなんて心地いいんだろう!

 ずっとこうされてたい。


 お風呂から上がった後は、いつも通り、二人に挟まれて眠る。


 うん、今日は売りに行くのは11時でいいかな。そうしよう。

 

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