第3話 鈍感とか正確にはモテるという感覚を知らない
俺の誕生日から3日。
誕生日から一日最低でも3時間は部屋の外に出ることにし、林に不審者と間違えられたのはちょっと寂しかった。
外にいる間ヒールの靴で歩けるように練習をしたり、色々としている間に時間が過ぎ日曜日が訪れ、ネットで注文した服と靴を履き、街へ来ていた。
一番最初に訪れたのは美容室。
つっかえながらも世間話をすることはできた。
髪の長さはそんなに変わっていないが、だいぶスッキリとしたストレートヘアーになっていた。
髪の手入れとか褒められた。
その後は服を探しにいき、良くある過度な購入とか、コスプレ衣装とか、そう言うイベントの類はなく、これからの季節分だけ購入して終了。
その後病院へ行き、TS病に係る健康検査を受け、特に異常がないと言うことで、役場へ提出する書類を頂き、役場へ行ってそこそこの量の書類を書き、戸籍は“女”に変わった。
不登校児である僕は高校からは“女”として生活することになるのだが、法令で定められているように、精神的不安定な状況だったりすると男の制服で登校も可能らしい。
最近の学校は女子用のスラックスとか出てるからあまりそう言う事例がないのだとか。やはり、中学は登校する気が起きず、出席日数がほとんどなくても面接と学科試験が問題なければ入れると言う高等学校を目指すことを決めた。
私立瑞原学園高等部。
前身がキリスト関係のミッションスクールと言うことで、校内にそう言った施設が存在する中高一貫の高校であり、その学校の入試に今来ている。
TS病患者と言うことで、試験の際は制服の着用は義務づけられていないものの、完全に浮くことが分かっているので、林の妹さんの制服を借り、受験に挑んでいる。
それなりにデカい学校で、部活は強豪のものが多く、メインイベントとも言われる文化祭はこの学校一の目玉とも言われ、近くの町を巻き込んだ大きなものとなると言う。
「あっ」
学科試験が始まると言ったところで隣の席の少年がどうにも筆記用具を忘れてしまったらしい。
少年の容姿がヒョロッとした内気な感じで、前の自分とは正反対の容姿だけどどこか虐められ体質の同類意識を感じでしまい、念のため予備で持って来たシャーペンと消しゴムをそっと彼の机に置く。
「良かったら、使ってください」
「あ、ありがとう!」
「そこ!受験生内での物の貸し借りは禁止行為だぞ」
「いいえ、彼が机の下に筆記用具を落としていたのを見落としていたらしいので拾っただけです」
「…そう言うことにしておいてやろう」
動揺を出すわけにはいかないので、無表情で教師に回答をする。
せめても情けのような感じで教師はそれを認めた。
彼は無言でこっちに頭を下げ、机に再び向かった。
「終わった」
どういう意味かと聞かれれば面接で何もない所で転んでしまったのである。
ドアをノックし、入り、ドアを閉めて一礼。ここまでは良かった。
自分の右手が椅子の背に触れることができる位置に移動するまでにこけたのだ。
間抜けな声で「ひゃん」と無駄に可愛らしい声付きで、だ。
そこから頑張って感情を出さないように無表情を貫いたが、試験官の目がとても生暖かった。
思ったよりも痛くて涙目になっていた。
個人面接で心底ありがたかったと、そう思っている。
それでも、父の会社にいる強面の方々に時間があいている人を見つけは面接練習の相手になってもらったのが助かった。
総務課の人とか少しトラウマになりかけた。
「あのっ!」
「はい、なんでしょう」
背後から声をかけられたのですかさず無表情で声色に感情を出さないように気をつけて返事をする。
精一杯の虚勢である。
「これありがとうございました」
「問題ありません」
先ほどの試験で隣の席の男子が顔を真っ赤にしながらシャーペンと消しゴム、それと缶ジュースを手渡してきた。
「でも、本当にありがとうございました!」
そう言って彼は全力逃走で帰っていった。
…顔が赤かったが大丈夫だったのだろうか。
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