創君、腐男子化計画
おねえちゃま! おねえちゃま!
今日は、連休最後の月曜日だよ!
「6月のお庭」の日だよ!
僕、アクロスのソプラノちゃんのお洋服、作ったの!
見て見て! ホンモノみたい!
ほらね、くるっと回ると、ドレスがほら、ぴらーり、ぴらーり。
きゃっ、かわいっ!
すごいよね、うちの専属お針子さん。もう、完璧な仕上がりだよ!!
え? 「6月のお庭」は、コミケと違うって?
ええーーっ、コスプレ禁止!?
そ、そんな……。
おねえちゃま、一人で行くの? あ、メイドさんと行くんだね。
コスプレできなくてもいい、僕も行く!
なんでぇ~~、連れてってぇ~~。
おねえちゃんばっか、ズルい!
いいよ。古海に言いつけてやる!
おねえちゃまがメイドさんと、薄い本買いに行ったって、古海に言いつけてやる~~~っ!
なにそれ?
わわっ、
ブ、ブラジャー!
しかもずいぶんな底上げタイプ……女子って、ほんと、ズルいよね。
でも、うーん、滑らかな肌触り……絹?
絹のブラジャーだ!
するの?
僕が?
ええーーーっ、それは、ちょっとーー。
!
それしたら、連れてってくれるの?
ほんとに?
あ。これって……。
おねえちゃまったら、あったまいーー!
コスプレだよね、コレ!
ブラジャーなら、外から見えないしね!
白だから、学校ワイシャツの下に着てても、透けないし!
もう、完璧だね!
貸して!
さっそくつけてみるから……、
げ、古海。
なんでここに……、
見ないでよ。
着替え中だよ?
え、見てない? 嘘、ガン見してんじゃん。
は?
見たくないって? 本谷さん以外の男子の裸は?
ふうん。そう。
じゃ、あっち向いててよ。
……ほら、おねえちゃん。ブラ、早く隠してよ! 古海に見られたら、取り上げられちゃうよ?
……もう、いいよ。
ほらね、古海。
別に僕、何もしてないでしょ?
ね、おねえちゃま。
ヘンな所へ出かけようとしているわけでもないし、コスプレをしているわけでも……、
……証拠がある?
証拠って、何さ?
違うよ、おねえちゃま!
僕、古海には何も言ってないよ!
……せいきゅうしょが古海のところに?
そりゃ、お支払いは、家令の仕事だからね!
あ、ソプラノちゃんのお洋服の請求書が、古海のところに行ったんだね!
ちゃんと払っておいてあげてね!
彼女、優秀なお針子さんだから。もちろん、次も頼むつもり。
……じゃなくて。
違うってば!
……だぁ、かぁ、らぁ~~~。
僕、今回は、コスプレなんか、してな……、
あ、ちょ、ちょっと待って!
おねえちゃま!
やだ! 僕も行くんだ!
行くんだったら!
げげ、古海、何するの!
わっ、閉じ込められた!
僕だけお部屋にっ!
おねえちゃま! 古海に言ってよ! 僕も行くんだ、って!
あっ、おねえちゃま!
足音……?
逃げたっ!
ひどい!
ひどいよ、おねえちゃま……。
**
ああ、古海。
よく来てくれました。ほら、これが例の……。
創の部屋で見つけた……。
……ミニスカートのコスプレ衣装だけじゃないのよ? つか、このスカート、絶対、パンツが見えるわね。
まったく、最近の若い人たちは、冷えってものを知らないのかしらね。こんなん穿いてたら、年を取ったら、大変よ?
で。
こっちの箱には、口紅、アイシャドー、チーク。
それに、ほら、ブラジャーまで!! このブラジャー、シルクだわ。でも、
……ほんと、ひどい底上げブラね。典子さんらしいわ。
あら、ごめんなさい。独身の若い男性に、ブラはきつかったわね。古海、あなた、吐きそうな顔してるわよ。
全部、創の
ほんとにね。典子さんにも困ったものだわ。
このままじゃ、創は、私の大事な息子は、腐った道に一直線よ! そしたら、一乗寺財閥の将来はどうなるの? 日本の未来は!?
いえ、そんなの、どうでもいいのよ! 私が大事なのは、ただ、ただ、息子の創だけよ! あの子を、完全なマザコンに仕立てたいの!
私だけを愛してくれる、完璧な息子に、ね!
主人に相談?
だめよ、あの人は。
とにかく典子さんがかわいくてかわいくて、仕方がないから。彼女が創に及ぼす危険になんか、まるで気がついてないのよ!
そりゃね。私だって典子さんのこと、実の娘と同等に、いえ、それ以上に大切に思ってるわ。
ほんとよ?
でも、腐女子でヒモノじゃ、仕方ないじゃない。おまけに、
他でもない、私の大事な、息子を!
ええ、ええ、ぶっちゃけ、創の方が大事よ!
当り前じゃない。
腐った義理の娘と、純真な実の息子よ?
比べるまでもないわ。
だから典子さんには、アサフの本宅を出てシブタニの別邸に移ってもらったのに。
それが、かえって、やりたい放題じゃない。
いいえ、あなたを責めているわけじゃないわ、古海。そりゃ、あなたは典子さんのお目付け役だけど。
ねね、メイドの話だと、最近、なんだかとてもきれいな男性が、別邸に通っているそうね。その人と典子さん……あっ、古海、どうしたの? ふらついてるわよ。
……。
わかってるわよ、そんなにムキになって言わなくても。
典子さんは、男には見向きもしないものね、二人以上いないと。
二人以上いたとしても、物陰からにたにたしながら覗いているだけなんだわ。
ねえ、古海。
来月、パーティがあるのだけれど、このままいったら、典子さんはまた、あなたと踊るハメに……。
だって、誰も彼女に、ダンスなんか、申し込んでくれないでしょ? それどころか、存在に気が付きもしないじゃない。
一乗寺家令嬢が傍らにいるのに、紳士方には、全然、見えてないんだわ!
ほんと、あなた、どんなドレスの選び方をしているの? ちゃんと目立つようなの、作らせなきゃ、ダメじゃない。
もうね。
かわいらしいピンクのフリルなんか、選んでる場合じゃないのよ。
キンキラのラメは、どうかしら。いっそのこと、ドレス全体に、豆電球をつけるとか!
蛍光塗料をぶちまけてもいいわ。そしたら、ホールの明かりを落としてあげる。
そのくらい、やらなくちゃ。
前回のパーティに、とてもきれいなお嬢さんがいらしてたそうね。
残念なことに、私も主人も見てなくて。
そういう素敵なお友達がいたら、典子さんだって、少しはマシになるんじゃ……。
あらそう。外国のお姫様。
それじゃ、仕方ないわね。
ああ、あ。
どこかにお人よしの御曹司がいないものかしらねえ。
細かいことにこだわらなくて、鈍くて、そうそう、視力が悪い人。
ちょっとおつむが足りないくらいが、ちょうどいいわ!
良家のご子息にありがちな、おおような、お坊ちゃん。
そういう方なら、安心して、典子さんを託せるのにねえ。
だって、
このままいったら、困るのはあなたなのよ、古海。
典子さんの収容先が、他にあると思ってるの?
一乗寺家の、腐った令嬢の収容先が?
家令の他に。
一乗寺家・家令の掟は知っているわね。
・一乗寺家令嬢が独身である間は、常に、傍らに控え、彼女に恥ずかしい思いをさせぬよう、気を配らねばならない。
・万が一、令嬢にお相手が見つからなかった場合は、家令が責任をとらねばならない
従わなかった場合は、過酷な罰が待っていると聞くわ。
え? 罰なんか怖くない?
それはまあ、あなたなら、そうなんでしょうけど。
ええっ!? もう、決まった人がいる!?
初耳だわ! いったいどこのお嬢さん?
いえいえいえ、あなたは、典子さんの最終収容所でしょ?
だめよ、そんなの。
典子さんが売れ残ってたら、将来、創の結婚話に響くわ。
許しませんからねっ!
???
典子さんの暴走を、一緒に監視してくれる?
エスコートする役割も、共に担ってくれる?
……いったい、どういうお嬢さんよ?
きっと、背の高い方なのね。
かわいそうに、男装させる気じゃ……。
はあ?
すでに、主人の許可が出てる、ですって?
しっかり捕まえとけって?
……わけ、わかんないわ。あの人も。
それじゃ、典子さんはどうなるのよ?
かわいいかわいい言ってるくせに。
たった一人で、孤独な老後を送るハメになっちゃうじゃない!
それじゃ、彼女がかわいそうすぎるわ!
いくら腐女子でヒモノでも!
やっぱり、古海。あなただけが頼りだわ。
責任もって、お相手、探してやって頂戴。
だって、私には無理よ?
どこをどう探せば見つかるのか、見当もつかないわ!
あのね。
何度も言うけどね。
私は、典子さんに、きちんと片付いてほしいのよ。
それが、前の奥さんへの、せめてもの私の気持ち。
だって典子さん、絶対、私より、長生きするもの。
それでもって、創だけじゃなく、創の子どもたち……私の孫たち!……までも、きっと、腐らせようとするわ。
だから彼女をこのまま放置してたら、ダメなのよ!
きちんと片付いてもらって、
しっかり子どもを生んでもらって、
腐らせるのなら、ぜひ、自分の子どもを……、
古海。聞いてるの? なに、あくびなんかしてんのよ。
なんなら、あなた達の子どもでもいいのよ? 典子さんの生贄にするの。
え? 子どもは作らない?
ったく。
これだから、今の若い人たちはっ!
だったら、あなたのお相手は、典子さんでいいじゃない!
もうっ!
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