ビッグデータ探偵

第48話 本物

「僕は全然天才じゃないですけど、彼女は本物って感じですね」

大和くんがヒカルちゃんを見ながらそう言った。

彼も一般的には十分天才と言われる部類だと思うけど彼は謙遜しながらそういった。

「おー、大和くんにそこまで言わせるとはすごいな」

ぼくが大和くんに言う。

彼はなかなか厳しめの評価をする印象があったので驚いた。

ふだんの彼の言動からするとベタ褒めに近い。

「うちの研究室来て欲しいですけどね。飛び級して海外行っちゃうでしょうね」

大和くんが淡々と希望を口にして、そのあとヒカルちゃんの進退について予測した。

そう、優秀な人を世界は放っておかない。

そしてより良い環境に自分を置くことはかなり大事でエンジニアとしての成果に大きく差が出る。

「うちでいくつか論文書いたらそうなるだろうね」

ぼくが頷く。

うちの論文は英語で全世界に向けて書くので、自然とそうなると思われる。

彼女がスカウトされる可能性も高いが逆にこれを見て海外の天才たちがうちに来る可能性もある。

才能がある人たちにとって、選べない選択肢をなくすというのは大事なことだ。

「え！そんなにすごいんですか？」

高崎くんが驚く。

彼女も日本で一番のうちの大学を出ているので能力はもちろん高いが、飛び級とかはなかなかお目にかかる機会がないかもしれない。

日本ではあまり選択する人も少なくできる学校もすくないはず。

「彼女と同じことが出来る子がマスターでも何人いるかな」

ぼくがつぶやく。ヒカルちゃんのように順番を正しく設定してプロジェクトをすすめていく能力があるかということだ。

マスターは修士のことだ。一般的には大学を卒業して2年間がマスター。そのあと4-6年ぐらいが院生、ドクターだ。

「ほぼいないですね」

大和くんが断言する。

マスターにはほぼいない。ドクターならめちゃくちゃ優秀なひとなら、とのことだった。

「えー！」

高崎くんが驚く。

高崎くんから見たらヒカルちゃんはただの美少女中学生だからだ。

「僕らにできることは若い才能の邪魔をしないってことだ」

ぼくは思っていることを口にした。

できる人は邪魔をしなければ自動でできるようになる。

「わ！佐鳥先生が先生っぽいこと言ってますね！」

高崎くんがまた驚く。驚き過ぎのような気もするけれども・・・

「ここでは先生だからね」

ぼくは答えた。

「さて、僕らも今日は帰ろう。特にできることがない。データ解析は待つのも仕事だ！」

ぼくがみんなに言う。

「ッタッターン！完成っていう感じにはいかないんですね！」

高崎くんがキーボードを叩くモーションをしながら言った。

「そう。人工知能開発はかなり泥臭い仕事なんだよね」

ぼくは頷く。

「イメージと全然違いますね」

高崎くんが言う。

「うん。普段はデータを綺麗にする仕事ばかりだしね」

ぼくが答える。そう派手な部分はたまにしかない。

「なるほど！」

高崎くんがうなずく。

「さ！続きは後日だ！」

ぼくはいった。何日かはコンピュータが頑張る番だ。