第45話 何も教えてない
「彼女すごいですよ。何も教えてないのにもうクラウドで処理はじめてますよ」
大和くんが、ヒカルちゃんについて説明してくれた。
ぼくは連れてきた後は大和くんに預けっぱなしだった。
すでにちゃんと作業できていることに感心した。
「今までは自分のPCでだけでやってたんでしょ?」
ぼくは聞く。
いままでの説明からすると、自分のPCにどんどんwebサービスのデータを集めて自分のPCで解析させているようだった。
「そうなんですよ。ドキュメントも英語のものをどんどん読んですでに必要なコマンドは覚えてますね」
大和くんが言う。自分のPCとクラウドサーバのPC基本的には同じように触ることができるのだが、サーバは自分のPCのようにグラフィックインターフェースでさわるわけではなく、エンジニアの黒い画面でおなじみのアレにコマンドを打ち込んで触っていくのだ。
「英語は翻訳ソフトで読んでるって行ってましたね」
高崎さんが以前話していたヒカルちゃんの言葉を思い出して補足した。
「確かにそれも使ってるんですけど、彼女ある程度は自力で読んでますね。ほんとに中学生なんですか?」
大和くんがヒカルちゃんの技術力に舌を巻いていた。
「ほんとに中学生なんだよね。うちとか佐々木のところのブログで勉強したんだって」
僕が説明する。ほうとうに中学生なのだ。
そして誰からも特別なに指導を受けていない。
世の中にある情報を探し組み立て自分でできるようになっていた。
「へー嬉しいですね」
大和くんがその話を聞いて喜ぶ。
「大和くんが書いたものが結構あるもんね」
僕が言う。そう、うちのブログは僕も書くけれど院生のみんなも書いている。そして大和くんのブログは優れたエンジニアには人気だ。
「そうですね。理解できる人が何人いるんだろうと思ってたんですけど、ここにいたんですね」
大和くんはそういった。論文もそうだけれども、基本的に最先端の研究をしていると、自分より出来る人はいないということが前提になってくる。
となりの研究員の内容だって理解するのはむずかしい。
「そんなこと思ってたのか」
僕が笑う。
思っていたもしっかり書いていた大和くんもえらいなと思った。
とりあえずやってみるところが彼のえらいところだ。
「そうですね。少なくとも調べる前の自分がわかればいいかな、と」
大和くんは言う。
そう、自分よりも詳しい人はいないという前提に立つと、少し前の自分がいまの自分に近づけるように手助けするという発想になる。
新しいものを調べる時はどうしても関係ないものも調べてしまう。その時間を最小限にできるというのは大きい。
「それ大事だね」
僕が頷く。
「彼女をみてるとウカウカしてられないですね。もっとスキル上げないと」
大和くんはそう言っていた。これは本当に良い傾向だ。
「うん、そういう効果があるかと思って、来てもらったんだ」
僕はヒカルちゃんを連れてきて大和くんとコミュニケーションとってもらっている理由を話した。
「良い仕事ですね」
大和くんがそう言う。
「ありがとう」
僕は微笑んだ。
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