第31話 来ちゃダメ
「よし、犯人を倒しましょう!」
高崎君が言う。
めちゃくちゃ好戦的なのであった。
僕には倒すという発想は全くなかった。戦っても僕では倒せないだろうし。
「いや、倒しちゃダメなんだって!」
僕が高崎くんに言う。
彼女は本当に倒せてしまうだろうけど、そもそも警察って相手倒しちゃダメだろうし・・・
僕も高崎くんも上司に怒られる。
「待ってください!」
僕らの元にきらりちゃんがやってきた。
そう、この事件の原因となった、地下アイドルのきらりちゃん。血相を変えて走り出した僕たちのあとを追ってきたらしい。
「あ、来ちゃダメだよ!」
佐々木が言う。
なんだかんだで冷静な佐々木だ。
これが何を引き起こすか冷静に判断ができている。
「確かにそれはまずい」
そして僕も呟く。
その刹那あたりを見回す。
次に起こる危険性があることに頭を働かせる。
これは一番起きて欲しくない状況だ。
「え?なに??」
きらりちゃんが不思議そうな声をあげる。
僕はパッとそちらを見る。
彼女の行こうとしていたベクトルとは逆の方向に力が働いたようだ。
つまり、引っ張られた!
「きらりちゃん」
佐々木もその状況を確認して呟く。
彼女の元に走り出そうとした瞬間。
それよりもずっと早く何かが動いた。
そこには、パッと動く人影があった!
高崎くんだ。
「失礼します」
すっと、冷静かつ丁寧に言いながら、きらりちゃんの腕を引っ張った存在の腕の力を利用し、腕を決めて取り押さえた。
誰よりも早く動いて行動した。さすがの警察官だった。
「え?」
きらりちゃんはの一部始終を見ていた。
一瞬の出来事だったのだろう。
驚きを隠せずにいた。
素早い展開が一瞬で起きた。
きらりちゃんの腕が引っ張られ
その引っ張った相手を高崎くんが取り押さえた。
「いったーい」
そして・・・可愛らしい声が聞こえた。
可愛らしい・・声・・・?
「え?」
僕が呟く。この状況で可愛らしい声・・・?
ストーカーに追われていたと言う話だったので、誰もが男のファンから追いかけられていると思っていた。
「え?」
高崎くんも驚いている。
彼女は反射的に動いて抑えたのだろう。
その声の主と密着した状態で犯人の顔を確認した。
「え?」
そして一番驚いているのは佐々木だ。
その少女に見覚えがあったらしい。
「ヒカル・・・?」
佐々木が言う。
彼はその少女と面識があったのだ。
「え?」
高崎君が驚く・・・。
今までは全く関係ないストーカーだと思っていたその人物が知り合いだったのだ。
「ヒカルちゃん??」
僕がその名前で驚く。
そう、僕もその名前には聞き覚えがあったのだ。
「・・・パパ」
そのヒカルちゃんと言われた少女は呟いた。
「パパ??」
高崎くんは不思議そうな声をあげた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます