第13話 そこで佐鳥の出番
「ところで、瞳の中を拡大したところで、顔ならまだしもストラップまで見えるのかな?」
佐々木は現状のスマホの解像度から計算してたどり着いたであろう疑問を口にした。
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「さすが、佐々木いい質問だね」
僕は、佐々木の質問に関心した。
「え、どういうことですか??拡大しても、そこまでは見えないんですか??私はそもそも、瞳の中を見ることもできると思わなかったんですが!」
美少女警官の高崎くんは、そう言いながら、スマホを取り出して、問題の写真を表示しようとしているようだ。
「うん、いいね、実物を確認するのは工学の基本だ。高崎くん実は向いてるかもしれないね」
僕は、高崎くんの行動を見てそういった。彼女は空手の日本一でもあるので、物理現象を細かく確認することの大事をよく知っているのかもしれない。
誰かが言ったことをそのまま記憶しない。試して確認する。これは工学でも格闘技でもきっとだいじなことなのだろう。
「あ、ほんとですね!大学の校舎はなんとかわかりますけど、顔も難しいですね。ストラップなんて認識するのも難しそうです!」
高崎くんは見ながらそう言った。
「やっぱりそうだよねぇ」
佐々木もそう言いながら確認していた。彼は多分計算して、さらに実物も確認していた。さすが、最年少教授と言えるだろう。メディアアートは実装技術も必要なので、現代の技術でどこまでのことができるかということの把握も常に必要だ。
「これもっと、拡大する方法はないんですか?」
高崎くんは二本指で拡大させつつもう拡大しない画面を見ながら、自然に思いついたことを聞いた。
「「いい質問だね」」
僕と佐々木は同時にそう答えた。
これは、大学院生や四年生を指導する立場にある大学教授のクセとも言えるだろう。
「本当に向いてるかもしれないね!」
佐々木は笑って僕に言った。
「そうだろう?」
僕も笑って答えた。優秀な人間を見ると嬉しくなってしまう。
「え、普通の質問じゃないんですか?」
高崎くんは、大学教員二人が何を喜んでいるのかわからないようだった。
「素人のように問題を探し出し、プロとして解決する。これが研究に必要なことなんだよ」
僕は答える。
「そう、少しエンジニアリングをかじってしまうと、解像度を落とすのは簡単にできるけど、解像度を上げるのは無理だということがわかってしまう」
佐々木はそう答えた。
「え、無理なんですか?」
高崎くんは、僕らに質問した。であればなんで良い質問だと言ったのだろうか、という顔をしている。
「そう、同じアルゴリズムでは無理なんだ。解像度を下げるのは簡単なんだ、すでにある情報を減らせば良いだけだから、でも増やすのは難しい、どう増やせば良いかわからないからね」
僕はそう言った。
「じゃぁ、できないんですか?」
高崎くんが質問する。
「普通はできないね。そこで佐鳥の出番なんだな」
佐々木が僕の方を向いて言った。そう、ビッグデータが専門である僕の出番だった。
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