第10話 撮影者

「いえ、美少女枠です!キリッ!」

と高崎くんは答えた。最大級の笑顔で。


「なるほど、やっぱり、おもしろ枠だ」

と佐々木が言って僕も頷いた。


===

「って、それはいいとして、なにしに来たんだっけ?君たち」

と、佐々木が聞いた。

そりゃそうだ。

いまのところ雑談しかしてない・・・。


「良い質問ですね」

と、僕がわざと敬語で答えた。

仕事モードに移行する。


「高崎くん、お願いします」

「はい、わかりました」

と、僕に振られた、高崎くんは頷いて説明をはじめた。

警察っぽい説明の仕事は彼女の担当だ。


「お、いきなり真面目モード?」

と、佐々木が笑いながら話を聞いている。


「我々は、警察の研究機関『特別犯罪研究室』です。佐鳥をリーダーとして、最新技術を使って行われたと考えられる犯罪の研究をする機関です。相田きらりさんがご相談された件がそれに該当すると考えられましたので、お邪魔しました」

と、さらりと言う。さすがに有能だった。

よどみなく丁寧に説明した。

切り替えも速い。


「おお、お仕事モードだ」と佐々木が笑う。


そして、きらりちゃんからの相談という単語を聞いて、理解する佐々木。

「ああ、きらりちゃん、芸能人だからね。なにかあった?」

と、佐々木はきらりちゃんの方を見て聞いた。

そして、恥ずかしそうに説明を始めるきらりちゃん。


「はい。カフェお茶飲んでたら、知らない人に、『この嘘つき!』って言われて手を掴まれたんです」

「ああ、それは怖いね・・・芸能人は大変だ」

と佐々木が頷く。


「佐々木もあんまり変わんないだろ、テレビによく出てるじゃないか」

と僕が言う。


そう、佐々木は、テレビによく出るタイプの教授だ。

顔がいいのと受け答えがおもしろいのとで、真面目な番組も軽い番組もわりと出ている。


「まぁ、僕は芸能人というわけではないからな、マネージャーもいないし。彼女はちゃんと、マネージャもいるしライブにお客さんも来るしな。僕と比べるもんじゃない」

「ありがとうございます・・・私もそんなに売れてるわけではないので、恐縮ですが・・・」

と、きらりちゃんが言った。


「で、佐鳥の研究が役に立った?」

と僕に聞いた。

「まぁ、ぴったりそのまま役に立ったわけじゃないけど、この写真の目に映る・・・」

と、写真を見せながら言いかけたところで話を遮って言った。


「あ、これ僕が取った写真じゃん」

と佐々木が言う。


「「え?」」

と僕と高崎さんが同時に言った。


「ね?これ僕が撮ったやつだよね?」

ときらりちゃんに聞く。

「はい・・・」

と、きらりちゃんが答える。

きらりちゃんは、そのこととブログの内容が乖離していることにもちろん気がついているからだ。

わかっていてブログにウソを書いていたから、バツが悪いのだろう。


「この撮影者、お前かよ・・・」

と僕はうなだれた。


そう、写っていた中年の男性は佐々木だった。

すべての原因はお前か・・・。

と僕は思った。

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