第2話 理系のコミュニケーション能力
「ほら、簡単だっただろう?じゃ、現場に向かおうか」
僕たちは瞳が写した場所に向かう。
===
駐車場に向うため部屋を出た。
そして、エレベータを待つ。
「さて?この事件は何なんだっけ?」
と僕が聞く。
「やっぱりなんにも聞いてなかったじゃないですか!!これだから学者は!!って言われるんですよ!」
とプンプン怒りながら言う彼女。
彼女の名前は高崎菜々。
『特別犯罪研究室』に警察側から派遣されてきた。
事実上僕のアシスタントということになる。
警察と僕らの潤滑油的な存在だ。
警察側の情報は基本的に高崎くんからもらう。
ある種の翻訳機でもある。
「やっぱりそんなこと言われてるの?」
と僕が笑う。
今時そんなこと言われるのか、大学の先生って。
21世紀も始まって10年以上たってるのに。
「わりと僕ら世代はそういうの言われないんだけどね。」
と僕は言う。
僕らよりずっと年上の教授たちじゃないのだろうか。
そういうことを言われる人たちは。
「先生、お幾つでしたっけ?」
高崎くんが聞いてきた。
「今年35歳になったよ」
と僕は答える。
「私より10歳上ですね。10歳くらいなら問題ないですね!」
とニッコリ笑う。
「十分問題あるだろう・・・」
と僕は言ったが、何が問題ないのかは深く考えないことにした。
「なんの話だっけ?ああ、僕ら世代の研究者は、そんなコミュニケーション取れない代表みたいな感じじゃないよ、という話だった」
と、元の話に戻す。
「まぁ、たしかに『ザ・石頭』って感じではないですよね。佐鳥先生は」
と高崎くんも考えなおしてくれたようだった。それにしても、『ザ・石頭』って面白い表現だ。
「だろう?とくに『ヒューマンコンピュータインタラクション』の分野は若い人が多いしなぁ」
と僕は言う。
「あ、そうなんですか?」
と、高崎くんが聞く。
「そうだね。僕らの研究はだいたい動画作ったりするし、プレゼンが下手な人とかほとんどいない」
この分野はかなり若い分野なので、若者が活躍しやすい。
「それ、理系の中では、コミュ力があるって話ですよね?」
と高崎くんは気がついた。
「私達の体育会系に来たら、大変なことになりそう!」
と高崎くんは笑う。
「確かに!それは盲点だった。やっぱり君はなかなか頭いいね」
と、僕は素直に感心した。
「そうですよ!日本で一番良い大学を出て!空手で日本一!そして美少女です!神が3物も与えてくれたんです!!」
と屈託のない笑顔で高崎くんが笑った。
ちゃっかりと調子に乗る高崎くんだ。
「それ、自分で言わなきゃいいのに・・・」
と、僕は言った。
「謙虚って単語知ってる?」
と僕が聞いた。
満面の笑みで
「ヒューミリティですね」
意味ではなく、英単語を答えてきた。
これは彼女なりのジョークだろう。
「さすが日本で一番いい大学を出てるだけはあるなぁ」
と僕は笑った。
そして、僕らは、車に乗った。現場に向う。
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