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イラの手帳 Ⅱ

 ここでは、うさぎの骸 第二章・虚実の旅路までのあらすじと用語、登場人物などを記しておく。



【第二章のあらすじ】


 魔女・イオルと村の学校長であるロノマは七十年前、とある同盟を結んでいた。しかし、ロノマが目論んだイビト狩りが仇となり、イラは村の外へと逃げる。かつての首切りウサギことうさぎを連れ、白壁の谷から汽車へと乗り込み、光の都市を目指した。

 一方、イラを仕留め損ねたイオルはロノマが差し出すという「罪人」を贄として城の牢へと閉じ込めておく。罪人の命は残り僅か。その処刑を担うための三毛猫と紅鴉を村の外へと出し、イラを探すよう命じた。

「その間、魔女を護衛する者がいなくなる」

 この三毛猫の言葉に、イオルは妙案を閃いた。



 イラは夜汽車の中で、失意の中を彷徨っていた。そんな時、汽車内で揉め事が起きる。若い女と男の揉め合いに、イラは女の嘘を見破った。間一髪で男を救うことに。

 男はシモンと言う。彼との出会いで少しは元気を取り戻したものの、どうても嘘の見える目が煩わしくて仕方がない。

 光の都市へたどり着けば彼を待ち受けるのは、暴力と嘘がはびこる光の町だった。あらゆる嘘により疲弊したイラを見兼ねたのは、光の都市・下層街ルンゴ駅で出くわした灰色の男、レガ。彼もまたうさぎ同様に、イオルからつくられ捨てられた衛兵の一人である。

 レガとシモン、うさぎの助けによってイラは下層街の安全地帯である「喫飲店カルマ」へと足を踏み入れた。

 店主のシンクからこの国のつくりと歴史を学ぶ。

 魔法使いと叡智えいち学会の対立、イビトの誕生、そしてイビト狩り。そんな真と虚の世界でることを知り、最終的に行き着いたのは「黒薔薇ノワの園」。

 これが真実の瞳というイビトの原点であるという。

 三毛猫、紅鴉の脅威が迫る中、イラとうさぎ、レガは黒薔薇の園にて彼らを迎え撃つことを決める。




【用語と解説】


ひかり都市とし

王都に一番近い巨大都市。

古代より、魔法使いが多く住んでいた土地だった。魔法が未だに生きており、壁や道があべこべな造りになっている。道や建物は反魔法派組織・叡智学会によって整備されている。ただし、まだ生きている壁もあるので視察が定期的に行われている。

大きいゆえに貧富の差が激しく、また身分制度が一番はっきりしている土地でもある。湿地で日中も暗いために人工光が使われている。

治安が悪く、民度が低い。下層の街をルンゴ、上層の街をコルトという。

辛い料理が好まれ、甘いものは出回らない。


下層街ルンゴ

光の都市最大の街にして、貧困と嘘のはびこる地。

屈強な泥棒や悪徳商人が多く住んでいる。

人工光が埋め込まれた大樹がある。欅の壁に隔てられ、上層街へはイコル5がないと入れない。

叡智学会の視察対象区域。※ルンゴ最上階は視察対象ではない。


上層街コルト

光の都市の上層、及び王都に近い土地。主に富裕層が住まう街。叡智学会による街整備が全て行き届いた、絶対的な法によって約束された安全地帯。

イコル5支払えば街への滞在を許される。


喫飲店きついんてんカルマ

老爺、シンクの店。下層街でも上階にあり、叡智学会の視察対象にならない。レガ曰く「安全地帯」。

店の中は人が一人しか通れないほど狭い。


黒薔薇ノワの園

始まりの少女、ノワが住んでいたとされる屋敷がある地。

光の都市内部のどこかにある……?



■真実の瞳

嘘を見る力のこと。嘘を発する人間の顔がさざなみのように歪むことで視認でき、また発した言葉と嘘が重なって聞こえる。

瞳を持つと言われる「ノワ」が起源であるとされる。



■イビト

能力を持つ者を称する言葉。


・真実の瞳…嘘を見る目。

・探求の耳…声や音を聞き分ける耳。

・延命の手…あらゆる生物を癒やす手。


この三種を持つ者が生きていた時代があった。イビト狩りによってその消息は今はないとされる。



叡智えいち学会

国の文明を発展させるために作られた公的組織。歴史は浅いが、人智を超えた力があるなら創れるはずだというそれまでの魔法一門を厳しく批判。

道具を生み出し、優彩の力を発見した。魔法がなくとも、誰もが扱える力を広めるべく魔法一門を追い出そうと企む。魔法を邪なるものとし「無色の力」と呼んでいる。今は魔法派と冷戦状態にある。


優彩ゆうさいの力と無色なしいろの力

優彩の力は主に、叡智学会が見つけた力のことで、学を修めずとも道具や薬の開発によって魔法を凌駕する力を得ようとするもの。

「無色」は魔法を蔑む言葉として使われる。



■魔法一門

王都に仕える魔法使いの集団。古代遺跡を守るために叡智学会と争いを続けている。勢力は弱い。



■魔導学

神秘を重んじ、天と地全ての力を以って統制を図る。己を磨くことで、誰しも学を得ることが出来るものとされる。


*神経学問…良いものと悪いものを選りすぐる視神経、音の質で状態を知る聴神経、創造、構造の設計を促す触神経を磨く学問。


*力学問…星や天候を司る天を知る為の星候学、地形と地界を知る為の地道学、地上界に蔓延る力を知る為の動力学を磨く学問。


*魔術学問…天空の動きを見て悟る占星術、人体の感覚を駆使し思考を読み取る読心術、術法や呪術を用いて物を生みだす錬金術、人の生き死にを操作する蘇生術を磨く学問。



■カルマの冒険譚

古代に生きた地の民(魔法使い)と翼の民からなる神話性の高い架空書物。だが、実際に起きたことを綴ったものである。

伝説の冒険者・カルマによって描かれた世界は数々の少年少女たちの心を掴んだという。

国の史書的存在でもあり、叡智学会によって今は回収対象となる禁書である。



■目玉焼き祭り

深緑の村で毎年春に開催される祭り。その年一番大きな卵を獲り、目玉焼きを作った者が優勝。

しかし、その起源は13年前にイビトと村民の争いであり、村に隠れ住んでいた瞳を持つ人間たちを虐殺。目を焼き、処刑したとされる。

イラの両親も巻き込まれた。



■魔女の衛兵(従者)

魔女が罪人やイビトの死体でつくった者たち。

現在、魔女の元には三毛猫、紅鴉のみ残っている。

追放された衛兵はうさぎとレガ。



■太陽の丘

深緑の村と白壁の谷の向こうにある。王都や光の都市よりも小さいが栄えている。



白壁しろかべの谷

深緑の村と谷の向こう側にある。深緑の村と太陽の丘の境目にある。

駅があり、都市部行きの汽車が走っている。



煤煙すすけむりの港

光の都市の隣に位置する炭鉱の港町。煙突だらけで煤が舞う。シモンの故郷。



翡翠ひすいの島

王都から南側へ位置する円形の小さな島。水が綺麗で資源も豊富。



■テルモの悲劇

七十年前、深緑の村が大火事に見舞われた際、主犯として上がったのが農夫であり、ロノマの父、テルモだった。彼は無実だったが、真実の瞳を持つ村の審判者、ガレンの判断で死刑となった。しかし、ガレンはその数カ月後にイビト狩りで虐殺される。





【第一章〜第二章までの登場人物】


♢光の都市♢


■イラ

13歳。優しく、真面目な少年。真実の瞳を持つイビトとされる。

現在、魔女に追われて光の都市へ逃亡している。

嘘を見続けるあまり、人間不信に陥っているが性根は変わらず甘い面がある。

段々と争い事に耐性がついてきた。

辛いものが苦手。



■うさぎ

白いフリルがあしらわれた服を纏う、肌、髪、全てが真っ白な少女。元は魔女の衛兵で「首切りウサギ」と呼ばれていた。

常に大鎌を持ち歩いており、警戒心が強い。基本的に無口で無表情。

怪我を負っていたところをイラに助けられた。その恩返しの為、イラを「主」と認識する。

言語能力が乏しく、言葉遣いも悪い。暴食。



■レガ

光の都市に住む泥棒で無精髭のある目つきの悪い男。ふんぞり返った態度が目立つ。小さな細煙管パイプを愛用し、考え事をする時は煙に隠れてしまう。

何かとイラを気にかけている。

魔女や深緑の村に詳しい。元はイオルにつくられた者で、森にいたという。体は継ぎ接ぎだらけ。傷が目立つ。

叡智学会から目をつけられ、賞金首となっている。



■シモン

28歳。夜汽車で出会った自称書き物家。穏やかで底のない笑みを浮かべた若紳士。夜汽車では盗みの容疑を立てられるもイラのおかげで疑いは晴れる。

架空物語の著者、カルマを慕っている。

気障ったらしい物言いと振る舞いをする。



■シンク

喫飲店カルマの店主であり、本名はカルマ。

カルマの冒険譚を書いた伝説の書き物家である。若々しく見えるが、実年齢は100歳を超えている。

黒薔薇の園などあらゆる場所を旅し、架空物語を完成させた。




♢深緑の村♢


■イオル(魔女)

深緑の村北部にある森に住んでいる。真っ黒なフードを被り、長い亜麻色の髪を持つ。その見た目によって、村の大人たちは「魔女」と呼んでいる。光を嫌い、闇を好む。

元は叡智学会にいたが、とある大罪を犯したことで王都から辺境である深緑の村、その森に幽閉されている。

真実の瞳を持ち、村の罪人を裁く役割だったが、現在は瞳の力が衰えたらしい。その為、イラを見つけ、後継者にしようと企んでいるが……?

狂気的で残忍。力が衰えたせいか、情緒不安定である。

うさぎ、三毛猫、紅鴉、レガをつくった人物。



■三毛猫

糸目の青年。魔女の衛兵の一人。拳銃使い。

陽気で独特な喋り方をする。基本、森の中で寝ているが、耳が早い為に神出鬼没で侮れない。思考が読めないからか、うさぎと紅鴉に嫌われている。

手先が器用で、武器はほとんどが自作。また、うさぎとは違った容赦のなさが窺える。

イオルに疑心を抱いている様子。



■紅鴉

赤髪の青年。魔女の衛兵の一人。弓使い。

森へ足を踏み入れたイラとリフに最初の攻撃を仕掛けた。腕前は確かなのだが、イオルへの反発心が強く、命令に背く行動が見られる。

高い場所が好きで、よく木の天辺にいる。そこから見渡す景色が好き。うさぎを大事に思っており、三毛猫を嫌っている。

また、うさぎ同様に言語能力が乏しく、言葉遣いが荒い。声が大きい。

三毛猫とイオルの間に不穏を感じている。



■ロノマ学校長

学校の長。穏やかで気品のある老女。足が悪い。

実は、冷酷な一面を持ち、魔女を恐れない唯一の人間で、また魔女とも繋がりがある。村長よりも発言力が強い。

七十年前の悲劇によって父を亡くした。そのためにイビトへの恨みがある。



■レトウ・マルコ村長

深緑の村を治める家系の長。マルコとは村長を意味する家系の呼び名。

普段は酒場によく出没する。愛想が良く、気のいい老人ではあるが、本当は村外の人間を嫌っており、魔女や真実の瞳を恐れている。

ロノマ学校長とは昔馴染みで、彼女に頭が上がらない。七十年前の悲劇を知る人物。



■ジン

30歳。ミルク売り。

孤児だったが、イラの両親に育てられた。そんな中、13年前に起きたイビト虐殺によりイラを引き取る。真実の瞳について隠していた。

現在、消息不明。



■リフ

13歳の少女。イラの幼馴染。

栗毛で長い三つ編みが特徴。明るく元気で、好奇心旺盛。感情の起伏が激しく、時には癇癪を起こしたり、きつい話し方をする。親友と呼べる友人はイラだけ。

父を尊敬しており、自分もいつか勇敢な記者になることを夢見ている。

イラが村を追われた時は真っ先に助けに行くなど、正義感は強い。

ジンやイラを心配している。



■ジョータ

新聞屋。リフの父。厳しい性格で、ジンやイラに対しては威圧的。



■リオ

新聞屋。ジョータの妻で、リフの母。優しく、品のある女性。



■ロイ

12歳。イラやリフの一学年下の少年。

イラと同じ獣飼番で、子豚のマーリーをいつも腕に抱いている。そばかすが目立ち、また小柄だからか同年代の子どもにいじめられる。無愛想だが、根は優しい。




【次章予告】


第三章・黒薔薇の園

 イラは己を知るべく、カルマの冒険譚を手に「黒薔薇ノワの園」へ行くことを決意した。同時に、レガは黒薔薇の園で魔女の従者をおびき寄せようと企む。

 そのことを知らない三毛猫と紅鴉は、うさぎに打ち込んだ痺れ弾のニオイを辿って、光の都市へと到着した。

 そんな中、深緑の村でまた一人、魔女の目についた者が――


「真実の瞳」に隠された過去、イビトたちはどこへ消えたのか、その謎は全て黒薔薇嬢が知っている。

 始まりの少女の記憶を辿り、イラが知るものは世界に葬られた歴史だった。

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うさぎの骸 小谷杏子 @kyoko

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