*・*・*

イラの手帳 Ⅰ

 ここでは、うさぎの骸 第一章・魔女の村までのあらすじと用語、登場人物などを記しておく。



【第一章のあらすじ】


 国の都市部から離れた「深緑の村」は、魔法が廃れた今でも驚異的な力や迷信を信じて疑わない古きを重んじる。

 村民は平和的で穏やかなのだが、それは村の北部に広がる森に身を潜める「魔女」を恐れてのことだった。

 魔女は「嘘」を見るとされ、罪人を裁く役目を担っている。

 そんな魔女の森で、ある日、首なしの死体が見つかった。どうやら、その死体は深緑の村を訪れていた旅人らしいのだが……。

 森には魔女の衛兵が彷徨いている。特に、「首切りウサギ」は凶暴で残忍だという。


 その森から追放されたうさぎと、十三歳の少年、イラが出会い、物語は始まる。


 ひょんなことから魔女に目をつけられることになったイラは、魔女の衛兵の一人である三毛猫に森へと連れ去られた。

 そこで彼は、己に秘められた能力を知る。

 それは魔女と同じ嘘を見る力で、真実しんじつひとみを持つというもの。

 かつて、深緑の村には真実の瞳を持つ者がいた。しかし、その異端な力を村民は恐れ、やがては村全体を巻き込む争いとなった。その生き残りがイラである。

 魔女はその力を欲した。しかし、うさぎによってイラを我が物にすることは不可能だった。


 さて、その頃の深緑の村は争いに勝利したことを称える「目玉焼き祭り」の準備に勤しんでいる。

 どうしても祭りに参加せざるを得ないイラは、森から帰って瞳の力を自覚するも、気持ちが不安定のまま祭りに参加した。

 そこで、魔女の息がかかった村長と学校長によってまたも捕らえられる。

 友人のリフや育ての親、ジンの協力もあって逃げ出すも村の自警団や魔女の衛兵に追われる身となる。

 イラとうさぎは深緑の村を飛び出した。






【用語と解説】


深緑しんりょくむら

王都から北西側へ位置する辺境の村。自然が豊富で平和的、穏やかな地域。行事が盛んで、新緑の季節には目玉焼き祭りが開催された。

村の北部に魔女が幽閉される森がある。魔法を恐れ、驚異的な力を嫌う。

旅人曰く、「馬鹿げた迷信を語るような発展に乏しい村」。このことから、他地域とは交流のない隔絶された場所と思われる。

十三年前までは、真実の瞳を持つ者が住んでいた。


*学校

イラの住む丘とは反対方向の、村の中心にある広場を抜けた小道の向こう側にある。時計塔の窓にステンドグラスがはめ込まれている。学校の外観は教会のようなもので、小さい木造の建物。構造は教室、教授室、校長室、時計塔、獣飼舎、養鶏場。

教室は一つで、6歳から13歳までの子ども達が通う。主に言葉、計算、国の成り立ちを教えている。また、卒業後は村の何らかの職業に就くことが村の常識とされる。


*村の裏側

広場の中心地が主に靴屋、パン屋、花屋、洋裁屋、新聞屋(印刷と記者)、役場、自警団。丘へと続く煉瓦通りには酒場がある。学校方面には養鶏場、精肉加工、厩舎、催事場がある。これらが全て、村の表側と言われ、反対に裏側は広場から外れた舗装のない通りであり、パブや輸入品を扱う雑貨屋がある。

裏側を真っ直ぐ抜けると魔女の森が広がっている。


*魔女の森

昔々に森へ幽閉された魔女が棲むと言われている、村の北部に位置する大きな森。上空から見れば、円形。

森の中は暗く、陽が差さない。その為、地面は常に泥濘んでいる。季節感がなく、年中気温が低い。

奥地には塔をいくつも繋げた魔女の城がある。



真実しんじつひとみ

嘘を見る力のこと。

嘘を発する人間の顔がさざなみのように歪むことで視認でき、また発した言葉と嘘が重なって聞こえる。

現段階では、魔女とイラのみが力を持つ。(※追記の必要あり)



■イビト

魔女曰く、能力を持つ者を称する言葉。(※追記の必要あり)



■目玉焼き祭り

深緑の村で毎年春に開催される祭り。その年一番大きな卵を獲り、目玉焼きを作った者が優勝。

しかし、その起源は13年前にイビトと村民の争いであり、村に隠れ住んでいた瞳を持つ人間たちを虐殺。目を焼き、処刑したとされる。

魔女の嘘の中に潜んでいた真実。



■魔女の衛兵

魔女が「作った」とされる者たちのこと。三毛猫、紅鴉がこれに当たる。

首切りウサギこと、うさぎも元は衛兵として森に住んでいた。



黒檀こくたん自警団じけいだん

深緑の村を自警する集団。

黒いマントに詰め襟、制帽という格好。全身が黒檀色なので、黒檀エボニーと呼ばれている。

普段は役場にいる。団員は15名。男女比は7:3。

※17話時点でうさぎに殲滅された。



太陽たいようおか

深緑の村と谷の向こう側にある。村と丘の境目(谷)に、駅があり、都市部行きの汽車が走っている。



花火弾はなびだま

村の「裏側」にある雑貨屋で購入したリフの持ち物。

手のひらに収まるほどの大きさだが、威力は凄まじい。火花と煙を撒き散らし、爆音を轟かせる。噴水を爆破させたこともある。



■痺れ弾

三毛猫が自作した拳銃弾。致死性はなく、その名の通り弾を打ち込んだ相手の動きを封じる。また、人間に打ち込めば洗脳することも可能。






【第一章の登場人物】


■イラ

13歳。優しく、真面目な少年。真実の瞳を持つイビトとされる。

両親のことは知らず、育ての親であるジンを信頼している。幼馴染のリフに振り回されている。

責任感はあるのだが、押しに弱い為、流されやすい。頑固なところはあるが、結局は折れてしまう。

運動は苦手。勉強と動物は得意。



■うさぎ(白兎しろうさぎ

白いフリルがあしらわれた服を纏う、肌、髪、全てが真っ白な少女。元は魔女の衛兵で「首切りウサギ」と呼ばれていた。

常に大鎌を持ち歩いており、警戒心が強い。基本的に無口で無表情。

怪我を負っていたところをイラに助けられた。その恩返しの為、イラを「主」と認識する。

言語能力が乏しく、言葉遣いも悪い。



■ジン

30歳。ミルク売り。

孤児だったが、イラの両親に育てられた。そんな中、13年前に起きたイビト虐殺によりイラを引き取る。真実の瞳について隠していた。

イラのことは弟のように思っており、行動が分かりやすい為、ちょっかいをかけたりからかったりしている。掃除や洗濯などの家事はからきしダメだが、料理は得意。リフの父、ジョータには頭が上がらない。



■リフ

13歳の少女。イラの幼馴染。

栗毛で長い三つ編みが特徴。明るく元気で、好奇心旺盛。感情の起伏が激しく、時には癇癪を起こすことも。

動物と子供に嫌われるような、きつい話し方をする。親友と呼べる友人はイラだけ。

父を尊敬しており、自分もいつか勇敢な記者になることを夢見ている。

イラが村を追われた時は真っ先に助けに行くなど、正義感は強い。

好物は野菜で作ったお菓子。極度の甘党。



■イオル(魔女)

深緑の村北部にある森に住んでいる。真っ黒なフードを被り、長い亜麻色の髪を持つ。その見た目によって、村の大人たちは「魔女」と呼んでいる。

光を嫌い、闇を好む。

とある大罪を犯したことで、王都から辺境である深緑の村、その森に幽閉されているという。

真実の瞳を持ち、村の罪人を裁く役割だったが、現在は瞳の力が衰えたらしい。その為、イラを見つけ、後継者にしようと企んでいる。

狂気的で残忍。力が衰えたせいか、情緒不安定である。



紅鴉べにがらす

赤髪の青年。魔女の衛兵の一人。弓使い。

森へ足を踏み入れたイラとリフに最初の攻撃を仕掛けた。腕前は確かなのだが、イオルへの反発心が強く、命令に背く行動が見られる。

高い場所が好きで、よく木の天辺にいる。そこから見渡す景色が好き。

うさぎを大事に思っており、三毛猫を嫌っている。

また、うさぎ同様に言語能力が乏しく、言葉遣いが荒い。声が大きい。



三毛猫みけねこ

糸目の青年。魔女の衛兵の一人。拳銃使い。

陽気で独特な喋り方をする。

基本、森の中で寝ているが、耳が早い為に神出鬼没で侮れない。

思考が読めないからか、うさぎと紅鴉に嫌われている。

手先が器用で、武器はほとんどが自作。イオルの前では従順に振る舞っているので、紅鴉曰く「イオルのお気に入り」。

また、うさぎとは違った容赦のなさが窺える。



■ロイ

12歳。イラやリフの一学年下の少年。

イラと同じ獣飼番で、子豚のマーリーをいつも腕に抱いている。そばかすが目立ち、また小柄だからか同年代の子どもにいじめられる。無愛想だが、根は優しい。



■シャロンとメイ

村一番、悪戯好きな双子の兄と、妹のコンビ。リフの花火弾を盗んだり、ロイを閉じ込めたり、告げ口や嘘をつくなど悪いことしかしない。



■ジョータ

新聞屋。リフの父。厳しい性格で、ジンやイラに対しては威圧的。

だが、娘には甘く、お転婆に成長した今はとても手を焼いている。実は、イラを信頼しているからこそ、彼の間違いを厳しく指摘している。

村一番の負けず嫌い。



■リオ

新聞屋。ジョータの妻で、リフの母。優しく、品のある女性。



■ミルおばさん

気のいい老婆。花屋。リフが起こした「噴水花火事件」の被害者。



■イザベラ教授

学校の教授で、尖った顎と尖った頭をした女性。ジンの二つ下らしく、現在28歳。

生徒には厳しく冷たいが、包み隠さず、はっきりと主張するので一部の生徒には信頼される。(イラも彼女が苦手だが信頼を寄せている)

リフやシャロン、メイなどの問題児に振り回されている。



■サイア

養鶏場の主人。目玉焼き祭りの主催役を担当している。

ジンと同い年で、現在30歳。陽気で穏やかな風貌。イラを気に入っており、養鶏場で働いてほしいと願っている。

ジョータに殴られた経験があるらしい。



■ハノン

13歳。学校ではリーダー的存在。ミルおばさんの姪で、リフが起こした「噴水花火事件」を恨んでいる。感情的になりやすく、思い込みも激しい。イラとは仲が良い。



■ベン

12歳。自警団団長の息子。利発そうな顔立ちをしており、気取った口調で話す。



■ダル

最年少の6歳。パン屋の息子。くせ毛を気にしている。褒められると嬉しい。

教授や大人たちの話をよく聞いているらしい。



■リーナ

菓子屋を営む若い女性。子供たちに人気がある面白いお姉さん。



■ロノマ学校長

学校の長。穏やかで気品のある老女。足が悪い。

実は、冷酷な一面を持ち、魔女を恐れない唯一の人間で、また魔女とも繋がりがある。

イラを魔女に引き渡す為に罠を仕掛けるが、イビトへの並々ならぬ恨みがあるらしく、本当は殺したい。村長よりも発言力が強い。



■レトウ・マルコ村長

深緑の村を治める家系の長。マルコとは村長を意味する家系の呼び名。

普段は酒場によく出没する。愛想が良く、気のいい老人ではあるが、本当は村外の人間を嫌っており、魔女や真実の瞳を恐れている。

ロノマ学校長とは昔馴染みで、彼女に頭が上がらないらしい。





【次章予告】


第二章・虚実の旅路

 祭りの最中に、魔女が現れた。村民は混乱し、逃げ惑う。そして、麓付近では首なしのエボニーたちの死体が見つかった。

 深緑の村に暗雲が立ち込める。


 一方、イラとうさぎは汽車に揺られて「光の都市」という大都市を目指していた。その道中、いざこざに巻き込まれてしまう。彼は嘘を映す目で何を見るのか。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます