第22話 オータムさんの憂鬱⑥


 チャと彼の母親が去り、次の人を呼んだ。すると、負のオーラに満ちた女性が入ってきた。えっと、サシャ=コーラン。アナン公国有数の名門サウダズン学院卒か。まあ、少し覇気がないと言うか暗いと言うか……でも、とにかく親同伴じゃないだけいいか。


「初めまして……私、サシャと申します」


 彼女は礼儀正しく挨拶をした。

 ――うん、好印象。


「特技は?」


 ジーク先生が質問したら、サシャは唇を歪ませながら微笑んだ。


「黒魔術です……特に呪いの呪文では負けたことがありません……彼を取られた時なんかは彼と恋敵を2週間入院させましたから……フフフフ」


 ――うん、印象最悪。


「2週間呪い続けられるなんて根性あるんだね……」


 ジーク先生がひきつった笑顔で何とか取り繕っていた。


「ジーク先生、ジャンルが違いませんか? どっちかというと戦う方だと……いやそれすら違うような――」


 そうジーク先生に耳打ちしたが、何やら悩んでいる。

 おい、悩む余地、ある? 間違いなく不合格でしょ。


「いや……こういうのが伸びるんだよ!」


 ジーク先生……あなたどういう眼力してるんですか!


「いやいやいや……負のオーラに満ちてますよ。その前に私生活の危ない一面を堂々と話すなんて人としてどうかと思いますけど!」


「採用!」


 ジーク先生はまたしても書類に合格印を押した。

 いや、あなたがいいならいいんですけどこの子、絶対に危ないですよ。


「ありがとうございます。あぁよかった……あなたを呪わずにすみました……フフフフ」


 怖すぎる言葉を残し、サシャは部屋を出た。

 まともな医療魔術師はもう世の中にはいないのだろうか。今のところ、外れしかいない。


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