第12話 歌を歌おう
「なるほどな! やっぱり趣味があると生活の幅が広がるよな」
「……どうでもいいから仕事してくださいよ」
オータムが大きくため息をつく。
趣味……運動系って苦手なんだよな。戦いなんてオータムとで十分だし。魔法系も嫌だ。そもそも魔法なんて仕事以外で唱えたくもないし。
「釣りなんかどうかな?」
「まだ趣味の話ですか? 釣りなんかする時間どこにあるんですか!」
まあ、そうか。
「……じゃあ料理なんかどうかな?」
「料理する時間なんかどこにあるんですか!」
料理って時間かかるか? まあ、いいや。
「……読書なんかどうかな?」
本を読むのなんて5分あればできる。時間なんてそんなに無くったって。
「読書なんかする――」
――ふざけんなテメェこの野郎。
「だぁ! そんなこと言ったらなんもできねえじゃねえか!」
「だから仕事してって言ってるでしょ!」
「休みくれ休みくれ休みくれ休みくれ……」
「うるさいうるさーい! 仕事しろ仕事しろ仕事しろ仕事しろ」
そうオータムと言い合ってると、助手のサリーが喧嘩を止めに入ってきた。
「まあまあまあ。オータムさん……今日は割合暇な方だし、治療さえ止めなければという条件で先生の趣味探しに付き合ってあげましょうよ」
サリーの言葉に感謝しつつも、『治療さえ止めなければ』というスパルタな言葉は若干引っかかるものがあった。
「じゃあ、時間を掛けずに診察室でできる趣味ってなんか探してくれよ!」
「うーん……」
助手たちは暇な患者と共に考え出した。もちろん治療の手を止めることは許されていないので、手だけは変わらずに動いている……なんて、怖い子たちっ。
「診察室でできて……時間要らなくて……治療も止めずにできて……」
「だぁ! そんなもんあるか!」
投げやりに叫びだした時、アリエの表情がパッと明るくなった。
「歌! そうよ歌があるじゃない! 診察中に歌えばいいんじゃないですか?」
「歌か! うた……うたかぁ」
「どうかしたんですか? 何か問題あります?」
「ちょっと……オータムのあの姿を見るとなぁ」
「ジーク先生……殴りますよ」
そう言ってオータムが手を挙げたので深々と謝った。殴られたくないから。でも、殴られた。
「っててて……でも、そうだな。歌にするかぁ」
趣味は歌に決定した。
・・・
「オーレーはフルーツ、オーレーはフルーツ♪」
ある診察中、気持ちよく歌っていると、オータムに殴られた。
「先生! 時と場合考えてくださいよ! 早く呪文唱えないと死にますよ!」
やべっ、治療治療。
ちょっと上手いじゃない……悔しい。オータムはそう言う顔をしていた。まあ、あくまで俺の感想だが。
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